第504話 兄2

現在は俺は七菜の部屋へと入り――。


「あの2人――後輩のところに」


ちょっと呆れていた。うん。何してんだよ。ってか――うん。呆れていた。


「取りに来るのかと思っていたんですが。昨日も来ませんでしたから。先輩を召還的なです」

「なんかすみません。ご迷惑おかけして」

「いえいえ、まあ入れるところが空いていれば問題なかったんですが――ちょっと今いっぱいいっぱいで。はい」

「とりあえず――すぐに撤収させます。こちらには――海織ゾーンがあるので、そこにまとめておけば――変に取りに来いと言っても――なんか起こりそうだから」

「さすがよくわかっている先輩というか――斎宮先輩の事も把握済みのすごさですね」


簡単に現状を説明すると俺は海織、斎宮さんのお荷物だろうというものを見つつ七菜に2人の変わりに謝っているところである。


「本当は宮町先輩は先輩のところに居るかと思ったのですが――どうもお静かだったので――」

「あれ?もしかして――こっちの音ってここに聞こえてる?」


まさかの筒抜けだった?と思いつつ俺が七菜に聞いてみると――。


「いえいえ、筒抜けとかではないんですが。まあベランダ側に行ったらわかると言いますか。この時期は窓を開けているとお2人の声が聞こえてくることもあるので」

「あー、まあ換気でこっちも開けているからね」

「ってことです。でも夜に宮町先輩たちが来て以来静かだったので――そういえば翌日斎宮先輩と一緒に出て行ったので――ご自分の家に今は居るのかと」

「まあ多分だけど。あの日以来は俺は平和な生活をしているかと」

「私も特に何もなければいいんですが……お兄ちゃんがいきなり来るとかさっき言って来まして、さすがにこれをどうしようかと。あってもいいような気はするんですが――なんかお2人のをお兄ちゃんに見せていいのかと」

「……なるほど。まあ置いていった2人もだが――ってホント何をしているのか。住み着く気か?」

「それはちょっと――ですね」

「だよな」


俺はそう言いつつとっとと2人のお荷物を回収する事にした。

あっ、そうそう何を回収するかって?海織と斎宮さんの着替えですね。はい。あと――なんか紙袋や。小物もまとめて七菜の部屋の隅に置いてあったので――回収します。というところである。


何で後輩の家に置きっぱなしか。マジでここに住み着く予定なのだろうか?と俺は思いつつとりあえず紙袋。小物から運ぶことにした。って――なんで1日泊っただけでそこそこの物を置いていくかだよ。と俺が思いつつ荷物を持つと。


「着替え持ちますね」

「ありがとう」


七菜が着替えを持ってくれたので、1回ですみそうだった。


「片付けとかなんか大ごとそうな言いましたけど。まあこれだけなんですけどね」

「いやまあ――これはどけないとというか。まあ邪魔だったよね」

「そこまでは邪魔とかではなかったんですがね」

「住み着かれないように」

「……それはですね。ホント。楽しかったですけど……大変でしたから」

「ははは……」

「ホントですよ。翌日眠かったですもん」

「それはホントすみません。ってか。難波先輩いつ来るの?」

「あー、朝一で東京からとか言ってましたから――」

「はい?」


うん?ここ――三重県。東京とは――うん、東京都の事だよな。うん。遠い遠いところだよな。と俺が思っていると。七菜が再度――。


「東京です」

「—―何で?」


うん。俺の情報に難波先輩が東京に居るっていう情報が無かったのでちょっと混乱中である。


「いえ、私も急に連絡が来た時に聞いたんですが。何かちょっと知り合いに会いに行ったら。遅くなって泊まることになったみたいで――そのままこっちへ来ると」

「……忙しいね」

「体力オバケだからその心配はいらないと思いますけどね」

「—―七菜もだよね」

「何か言いました?」

「いえいえ」


七菜とそんなことを話しつつ外に出て――お隣へ。


そして俺が自分の部屋の鍵をポケットから取り出して、ドアを開けようとした時だった。


「あっ、楓君に七菜ちゃん発見!」


いつもの声が聞こえてきた。こちらも元気そうだ。


「……ご登場ですか」

「なかなかのタイミングですね」


俺と七菜がそんなことを言いつつ、声の方を見ると――海織がちょうどこちらへと歩いてきていた。


「楓君。七菜ちゃん朝から何してるの?」

「どこかの誰かさんたちの荷物をこちらへと運んでいるんです」

「うん?あー、そっか。七菜ちゃんのところに着替え置きっぱなしだった」


海織は本当に忘れていたのか「あっ」という表情をしていた。


「—―ガチで忘れていたか」

「ごめんごめん。あの後ね。高校の時の友達から連絡があってちょっと留守にしていたから」

「……なるほど。だから海織が静かだったと」

「あれれー?楓君何も言わずに留守になったから寂しかったのかな?」

「全くです。平和でしたから。でも――先ほど壊れましたね」

「ニヤニヤ」


海織が隣までやって来た。


「ニヤニヤしない。ってか海織。自分の荷物を持つ。七菜が持ってるから」

「あっ。だね。ごめんね七菜ちゃん」

「いえいえ、その本当は置いていても良かったんですか。この後お兄ちゃんが来ると言ってまして――」

「あっ、難波先輩来るんだ」

「です。来なくていいのに……」

「七菜ちゃんお兄ちゃん子だからねー」

「ちょ、ちょ、何か変な情報が流れてませんか?この前加茂先輩も似たようなこと――」

「「仲良さそうだもん」」

「ハモった!?じゃなくて、違いますからー。もう……ってはい、宮町先輩荷物です。斎宮先輩のも一緒に入ってます」

「大丈夫大丈夫。楓君ところに置いておくって沙夜ちゃんには言っておくから」

「—―加茂先輩って男の子ですよね?」


七菜は今更――というか。うん。不思議そうにそんなことを聞いてきた。


「もちろん男ですよ」

「の割には――女性陣からの信頼厚いですよねー。いろいろもの置いてありますし。出入りも普通にしてますし」

「ははは――だよ」

「実は女の子?」

「楓君はちゃんと男の子だよねー。ニヤニヤ」

「海織。とっとと中へと荷物を運んでください」


うん。外で話していてもなのでね。俺達は俺の部屋へと入って行ったのだった。

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