第489話 ビリヤード3

ボールを再度俺が設置し直すと――七菜が棒を持って――。


「じゃあ先輩。私が勝ったらどこかでケーキ。スイーツ奢ってください」

「……了解。って俺――特に……何もないんだが……」


うん。何もこれと言って思いつかなかった俺だった。


「えー。何でもいいですよ?あっ。訂正します。宮町先輩とバトルとか無理です。そういう系?は、やめていただけるとです」

「……そんなお願いはしません。って何を言いだすのか」

「まあ加茂先輩ですからね。その心配はしてませんがー。ってホントなんでもいいですよ?」

「いや――急に言われてもなー」

「じゃあ私が決めます」

「……何で!?」

「先輩が決めないからです。私に決められたくないならどうぞ――」

「えっ――えー」


何だろう後輩に振り回されている――と俺が思いつつも考えようとしていたら――短かった。うん。すぐ時間切れとなった。


「はい。時間切れです。じゃあ――先輩が勝ったら。私がお菓子作ってあげます」

「……えっ?あー、ありがとう?」


何か――俺何も言わずに物事が決まっていく……ってお菓子?七菜が?と俺が思っていると。


「はい。ちょっと先輩に毒見してほしいものがあるんですよ」

「……いやいやおかしくないかな?毒見?普通のお菓子だと嬉しんだけど――」

「ってか先輩。私にいきなりそんなレベルアップは無理ですからね?知ってますよね?」

「いやいや、七菜はじめの頃はやばいとか言っていたけど――かなりすぐに良くなったと思うよ?うん」

「そ、そうですかね?ま、まあそれは先輩2人にも助けてもらいましたからら」

「ははは――まあ役に立てたなら……ってマジで毒見?」

「はい。いや、一人暮らしで今日みたいに休みの日に、誘ってもらえば予定が入りますけど。何もない日ってこれからの休みの日は、出てくると思うんですよ。毎日遊ぶ――は無理ですから。だから何もない時にちょっとお菓子を作ってみたいなー。と、でも1人だと爆発か。先輩を刺しちゃうかもしれないんで、見ていて欲しいです。そして毒見してください」

「……なんかいろいろおかしいことをまた聞いた気がするけど――まあとりあえず……お菓子を作りたいから手伝ってほしい。見ていて欲しいとと」

「まあそういうことで」

「でも俺――レシピ見ながらなら簡単なのは――なくらいだけど?お菓子なら海織かと」

「先輩。だから私に難しいのは無理ですから簡単なのしかしませんよ。宮町先輩をいきなり召喚しちゃったら。私がワタワタになりますよ」

「なるほど」

「ってことで、ビリヤード。やりましょう!」

「……うん?結局七菜は甘いものが食べたいという事か。勝っても負けても」

「先輩。始めますよ?」

「あっ。はい」


うん。後輩と楽しくビリヤードです。今回はスイーツを賭けて……。


はい、始まりました。今回もまた七菜からスタートした。


――トン―—カン。


七菜がボールを打つと――並べてあったボールに当たり。綺麗にボールが弾ける。ってか、七菜上手いな。だった。


そこから俺と七菜は――なかなかいい勝負をした。


「—―あー。落ちない――か」


ポケットまであとちょっと――というところで、ボールが止まることが多い俺だった。


「先輩、もらいますね」

「—―このパターン多いな」

「先輩が私に勝ちをくれようとしているみたいですね」

「いやいや、結構真面目に勝ちにいってるんだけど――強すぎると持ち球?がポケットに入りそうで」

「あー、わかります。打ったボールが狙ったボールに当たった時にピタッと止まってくれるといいんですけどね。止まりませんからね」

「素人2人だからね」

「ですねー」


はじめは七菜がリズムよくという感じが多かったが――途中から俺もそこそこいい感じにボールが行くようになった。


七菜がはじめ1番2番と入れて、俺がその後3番—―七菜が4番を入れて――外したため。次は俺が5番6番7番と連続で取ったが――ここでちょっと2人とも苦戦し狙ったボールに当たりはするが――なかなかポケットにボールを落とせないということが続いてからの――。


「……」


――トン――――カン。


「……」


――ポトッ。


「……やった!」


うん。結局最後は七菜がそこそこ距離のあった9番ボールを上手に落として――この勝負決着したのだった。


「あー、負けたか。さっきの外したのが痛かったか」

「勝ちました。って、これ楽しいですね」

「うん、なかなか楽しかったね」


片付けながら俺と七菜は話す。


はい、2ゲーム目。スイーツを賭けて?というか。まあどっちにしろスイーツを食べるのは変わらないであろうが――とりあえず勝負は七菜が勝ったため――どこかで俺がスイーツを奢ることになるらしい。どこでだろうか――。


でも、何だろう。負けたのだが――やっている時がめっちゃ楽しかった。うん。

あとちょっとで入らない――ってのは悔しかったが。最後の七菜みたいにちょっと距離のあるのが綺麗に入ると……うん。めっちゃ気持ちいいし。楽しかった。それは七菜も同じだったらしく――。


「いやー、先輩。これまたやりに来ましょうよ。これルール知らなくてもめっっっちゃ、楽しかったです」


片付けをしながら終始七菜が笑顔だった。


「だね。近くにあると良いんだけど」

「探しますよ。はい。いやー、楽しかったです」


そんなことを話しながら七菜と片付けをして――俺と七菜がボウリング場の方へと戻ると――。


「「居たー」」


そんな声が前から聞こえてきたのだった。

うん。ボウリングを楽しんでいたであろう方々に見つかったみたいです。

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