第472話 5人でランチ3

海織が――ちょっと嘘を言って七菜もお昼ご飯の時に誘っていることが発覚してから少し。


11時55分。俺と海織の乗っていた普通電車は終点の湯の山温泉駅に到着した。


これならこの後いつものベンチへと向かえば……ちょうどお昼ごはんには良い時間という感じだ――って、うん、駅に着いたから先ほどの会話を忘れた。ということはない。うん。


……ホント平和に最近過ごせないというか――海織も余計なことを。と俺が電車から降りて……思っていると――。


「あれれー。楓君がなんかー。何で揉めそうな事を起こそうとしてるのかなー。このお方は?みたいな感じで私の事見てる?」

「……なんか当たってるから怖い」

「にひひー」


本当に怖いです。なんで俺の考えていることはこんなに漏れているのでしょうか……実は――顔に全部出てる?えっ出てるの?そんなに俺わかりやすい?うん。わかる方いたら教えてくださいですね。はい。

って海織が鋭いだけのような気もするのだが……このお方。なんか勘がいいと言いますか。いろいろ思いつくというか――うん。すごいお方なのでね。と、俺が思っていると――。


「だって七菜ちゃんと白塚君がやりあってるの面白いじゃん。楽しいしね」

「……そのうち七菜に怒られるよ?」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと七菜ちゃんには限界が来たら。楓君連れて何処か行ってきたらいいよ。って言ってあるから」

「……えっ?」


うん。今なんか――海織は……言ったかな?言ったよね?また俺の知らないところで何かが行われていますよ。うん。このパターンも多すぎですね。はい。俺巻き込まれ体質とかでは――はい。無いはずなんですが――いやこれは俺が巻き込まれ体質。ってのではなく――なんて言うんだろう。強制巻き込まれ体質……あれ?結局俺が巻き込まれ体質?ってこと?うん。言葉は難しい――なんかいろいろ勝手に進んでいるのに、自分で新たな言葉――みたいなことを考えるとさらに訳が分からなくなりそうなので……そのうちゆっくり考えましょうか。ってそんなこと考えなくていいか。などと俺が余計なことを1人で思っていると……。


「あっほらほら楓君駅でのんびりしてると沙夜ちゃんたちが講義終わって先に行っちゃうよ」


そう言いながら海織が俺の背中を押してきた。

まあ確かにこのまま駅で話していてもなのでね。

俺たちは駅から大学へと歩き出した。


「—―って海織さん。なんか今話を変えようとしたみたいですが。何をまた勝手に言ってるのかな?」


歩き出してすぐ。俺は海織に言った。


「ちゃんと今楓君に言ったよ?」

「いやいやおかしいから。おかしいよ?うん。おかしいからね?」

「楓君がおかしい。を連呼してるー。でも楓君的にはかわいい後輩ちゃん。妹ちゃんとデートできるよ?」

「このお方は何をさせたいのか――」

「そりゃー、楓君と七菜ちゃんを仲良くさせてー。私が七菜ちゃんをいつでもゲットできるように――」

「ゲットって言うのがなんか引っかかるというか……やっぱりおかしい気がするが」

「まあまあ、あんなかわいい子がお隣さんに居るんだから、いつでも来てくれるって環境作らないと」

「待って……お隣さんなのは俺なんですが……」

「—―えっ?」

「いやいや、そこで私も居るよ?みたいな表情されてもですね」

「にひひー。まあでも、後輩ちゃんには優しくだよ。楓君。あっ、ちなみに沙夜ちゃんは既にそのうち楓君拉致する。って言ってたよ」

「……えっ?」


うん。俺――どうなっちゃうのかな?って拉致?と俺が思っていると――。


「楓君はモテますからねー」

「いや――勝手に何かをしているお方が居るのかと……うん」

「ちなみに沙夜ちゃんが楓君拉致結構日には、私は豪華ランチを白塚君に奢ってもらうんだー」

「……もう訳わかりませんね。ってそういえば――そんな話は前に聞いたような……」

「だって私。白塚君の卒論のスーパーヘルプしたんだからね」

「……そういえば――そんなこともありましたね」


うん。柊が少し前だったか。

卒論のデータ消えたー。というやつだ。

奇跡的にというか。みんなの資料を残していた海織に柊は助けられた形になっているのだが――うん。そのお礼はそういえばまだというか。そんなことを言っていたな。と俺が思い出していると――。


「私はいつでも楓君を使えるからね。たまにはみんなにも貸し出すんだよ」


……何か海織さんが言いましたが――うん。おかしい事言ってるよね?ということで――。


「勝手に人を貸し出さないように」

「えー。楓君にはいろいろな経験をしてもらわないと」

「俺――どうなっちゃうの?」

「にひひー。まあまあ」

「いやいや、まあまあじゃなくてー」

「大丈夫だよー。ちゃんとちゃんと楓君の隣に私は居るから楓君が私を使いたい時はいつでもOKだよ?」

「—―何を言っているのか……」


うん。大学への道を歩きながら俺たちは何を本当に話しているのでしょうか。

って、なんで俺は拉致というか――いろいろなところに貸し出しされることが多いのでしょうか……もしかして海織。俺を貸し出すことにより――何か恩恵が?いや……ただ楽しんでいるだけ――うん。このお方は謎である。


……まあこうやって歩いているだけでも、なんかいろいろぶち込んできてくれるので――移動とか。ちょっとした時間があっという間に過ぎていくので――それはそれで……なのだが。


と。俺が思っていると。いつの間にか俺と海織は大学内を抜けて――いつものベンチ近くまで来ていたのだった。

うん。話ながら歩いているとあっという間ですね。内容は……ですが。

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