第428話 貸し出し中9
「シャワーありがとうございました」
七菜が風呂から戻って来たのは海織のメッセージがあってから数十分後だった。
いつも海織が着ているパジャマ。部屋着を七菜が着ていたのだが。ちょっとサイズが大きいらしく。でもうん。問題無さそうだった。寝るだけだしね。とか俺は思いつつ。
「大丈夫だった?」
「はい。作りとかは私の部屋と同じですし」
「まあそりゃ同じ建物だからね」
「あっ。ドライヤー貸してもらっていいですか?」
「どうぞ。じゃ俺もシャワー浴びてくる」
「あっ。はい」
七菜と交代で風呂場へと俺は移動する。
ってかさ。
こういう時ってなんかドキドキするようなものだと思うのだが……うん。後輩の女の子が使った後とかね。でもね。俺はというと、普通に海織が使った後をよくよく使っているので……特に何もないというか。うん。
それに多分七菜は海織のシャンプーやらを使ったと思うので、風呂場はいつもの海織の後と同じ感じ。いつも通りだな。ということで。特に何もなく。俺もいつも通りシャワーを浴びて……。
今日なんか無駄にいろいろあった……と思いつつ。あっ時間割考えないとな……とか言うことを考えつつ風呂を出たのだった。
俺が風呂から出ると……。
「おかえりなさいです」
「うん」
「……」
「……」
うん。なんか変な感じがあったが……まあ俺が飲み物などを七菜に渡したりして話していると。やっと七菜もいつもの感じになって来たのか。
「ってか先輩」
「うん?」
「私床で寝たらいいですか?」
「いやいやベッドでいいよ?俺寝袋あるし」
「寝袋?」
「うん。まあ非常用ってやつだね。1年の頃から活躍してるよ」
「あれ?でも宮町先輩。いつも先輩を抱き枕にして寝ているって……」
「……何を余計な事言っているのか」
「否定が無いという事は。事実」
「ははは……あれは海織がね。うん」
「まあお2人を見ていればわかります。はい。ってか私寝袋でもいいですよ?」
「いやいや、いいよ。あとで海織になんか言われそうだし」
「そうですか?じゃ、お借りします」
「どうぞ」
ということで。さすがにいつもの海織と寝るようには……なので俺はよくよく活躍する寝袋を出してきて……準備。まあ真冬じゃないからちょうどいいかな。という感じだった。
それから七菜はベッドの2階部分へ。まあもう日付も変わっているし。歩き疲れたというのもあるんでね。俺と七菜はその後すぐに横になった。
まあ横になったら俺からも七菜からもお互いは見えることはないので……まあちょっとはのんびり出来ているだろう。と俺が思っていると……。
「先輩。起きてます?」
「どうした?」
七菜の声が聞こえてきた。
「あの。話は変わるんですけど」
「うん」
「お兄ちゃんから連絡あったりしますか?」
「全くない」
突然だな。と俺は思いつつ返事をした。うん。ちなみに七菜に隠している。とか口止めで難波先輩から言わないように言われている。とかそんなことはないんでね。
本当に俺も知らないである。
「ですよねー。今日のお昼に親からお兄ちゃんと会ったか?的な事を聞かれたんですよ」
「ははは……ってか難波先輩。どこ行ったんだろうか……」
「留年?」
「いや……でもそれなら今日のオリエンテーションで見かける……。いやでも難波先輩。イベントごと以外であまり大学で見ないんだよな。もしかして。学科が違うのかな?聞いたことないからわからないんだけど」
「お兄ちゃんなんだったかな?私もあまりちゃんと聞いた事ないんで……って先輩。そのうちさらっとお兄ちゃんに連絡してくださいよ」
「えー。めっちゃ聞きにくいというか。七菜が普通に聞いたらいいんじゃないの?」
「いや、なんか聞きにくいと言いますか。そもそもあまり連絡するというのは……だったので。お兄ちゃん勝手に私に変な印象というか。うん。設定付けてますから」
「設定?」
「いろいろあるんです」
うん。難波家もなんかいろいろあるんだな……と俺は思いつつ。
「ほう。ってかまあ……機会があれば……ってか柊の方が聞きやすいんじゃないかな?もしかしたら知り合いから何か聞いているかもしれないし」
「……」
「……柊の話になったら黙ったよ」
うん。どんだけ柊嫌われているというか。名前が出ただけでかよ……と俺が思っていると。
「いや。だって白塚先輩を頼ると。お礼に何かしないといけないようになりそうですし」
「ホント七菜。柊の事避けてるよね?」
「チビと言ってくる人は敵です。私は成長中なんです」
「ははは……」
とまあ寝ながらしばらくそんな話をしていた俺と七菜。
するとどちらともなく静かになっていき……。
次俺の記憶があるのは。明るくなってきた時だった。
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