第375話 秘密2

「殺人事件?」

「そうなんですよ。ひどかったのは高校の時ですね」

「それまでは……?」

「あっ、それがですね。運のいい事に調理実習の時に料理ができる子が必ずいましてね。仕切ってくれていたので。私は簡単なお皿の準備や見守るってことでしたから」

「で、高校では何があったのか……」

「いやー、初めて包丁持つことになったんですが……まず手を切りました」

「はい」


うん。なんとなくその現場を想像できた。


「びっくりした私。っていやあんな綺麗に切れるとか思ってなくてですね。そして、ちょっと慌てちゃって隣に居た人に危うく包丁刺すところでした。隣の人が奇跡的に避けてくれてセーフでしたが。あと数センチで事件でしたね」

「……怖い」


うん。その現場は……想像できなくはないが……あまり想像したくないな。うん。


「それから調理実習の時は誰も私に包丁持たせようとしなくなりましたね」

「まあ……うん。そんなに慌てたのね」

「結構慌てましたね。包丁持ったまま手を動かしちゃダメですね」

「ですね。危険だから」

「あと、包丁がダメになった後の調理実習は……まあ炒めたりの担当になったんですよ」

「うん。それで焦がした?炭でも作った?」

「先輩すごいですね。なんでわかったんですか?」

「いや……何となく」


うん。勘と言えば勘なんだが……なんとなくね。そんな予感がしまして行ってみた俺だった。まあ当たったらしいな。っかホントで心配になって来た俺だった。この方1人暮らしというか。料理をさせて大丈夫なのだろうか……と。


「いや、だってしんなりするまで炒めるとかわからないじゃないですか。で、とにかく強火で炒めたら何とかなるかなー。で――火柱が立ちました」

「それは……火事だね」

「ホントですよ。先生が大慌てで飛んできましたよ。なんで火が付くの!って」

「何炒めてたの?」

「確か……野菜だったんですがね。燃えました」

「アパートではしないように」

「気をつけます。ってマジで先輩安全にできる料理ってないですか?火はなるべく使いたくないですね」

「うーん。あとはレンチン」

「あー、レンジはお兄ちゃんが一度何か温めて爆発させてましたね」

「七菜のところ…。ワイルド過ぎない?」

「どうでしょう?お母さんにその時はお兄ちゃん怒られてましたね」

「……とりあえず、スーパーまわろうか?このままここで話していると…。だから。歩いていたら何か見つかるかもしれないし。簡単なものが」

「はい」


ということでやっと俺たちは移動を開始した。ホントやっとだな。結構話していた気がする。っか。今の話を聞くと……マジで火事だけはしないでね。とか思っている俺だった。


それからは俺達2人はとりあえずくるりとスーパーの中を周り……それぞれが商品をかごの中へと入れていった。


「とりあえず冷食を買っておけば何とかなるかと」

「ですね。さすがにレンジで爆発は無いと思いますから」

「温める時間さえ間違えなければね」

「気をつけます」


1周した俺たちはレジを通り現在は商品を詰めていた。とりあえず七菜も一応食料を得たのだった。多分何とかなるだろう。と見ていた俺は思っている。まあ冷食がほとんどだったからな。うん。大丈夫なはずである。


すると俺の買ったものを見ていた七菜がふと――。


「ってか。なんか野菜やお肉とかいろいろ買っていた先輩の方が金額安かったですね」


そう言いながら七菜が俺のカゴの方を見てきた。


俺はいつも通り野菜や……ちょっと肉とか。あとはいろいろと……一方七菜は先ほども言ったが。簡単にできる物。基本冷食。あとは炊き込みご飯は数種類買っていた。


「まあ……七菜とは買ったものが違うというか」

「やっぱり楽するとその分高くなりますかね?」

「いやー、どうだろう。でもまあ1人暮らしならそんなに毎回ちゃんと料理しても……だからね。1人分だけ作るのは…、だからね」

「食費って意外と高くつくかもですね。これは本当に考えないと……」

「まあとりあえず今は今だよ。無駄にならないようにというか」

「ですね。無理して野菜とかお肉買って燃やしたら……ですからね」

「ホント火事はやめて」

「気をつけまーす」


そんなことを七菜と話しつつ。俺達は商品を詰めて……スーパーを後にした。


それからまた少し七菜の伝説を聞いた。

いや調理実習でやらかした伝説だな。特に高校の時のはその他にもいろいろあった。まあ多かったのは炭にしたというものだったが。空焚きや……調味料の測りかたを間違ったのか。信じられないくらいしょっぱい物が出来たり……パスタが……うどん?などなどいろいろ聞いた。

そんなに調理実習の時間は多くなかったらしいが……うん。七菜が居た班は何かしら問題を起こしたと。

まあでもいきなり完璧に何でもできるということは無いと思うのでね。俺はそんなことを思いつつ――。


「まあ恐れずにやるのがいいかと」

「火事起こしそうです」

「さっきも言ったけどそれだけは怖いな……うん」

「燃えたら先輩呼んでいいですか?」

「呼ぶ前に消してほしいね」

「消す自信がないです」

「—―怖い」


とか話していたらアパートへと俺たちは到着した。


「じゃ先輩。わざわざ付き添いありがとうございました。また何かあったら連絡します」

「ああ。ってか買い物はちょうど行きたかったし問題ないよ」

「でわでわです」


七菜が自分の部屋に入ろうとしたとき。


――ガチャ。


「あー、楓君居たー。もう楓君メッセージ無視して七菜ちゃんとデート?」


いきなり海織の声が聞こえてきたのだった。

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