第278話 餅つき大会5 ~偶然の再会?~

「難波先輩。お疲れ様です。お餅はどうですか?」

「今はな。地区の人がしてるよ。白塚はそのまま餅をひっくり返してるな」


餅つきが行われている方を見ると……うん。柊はまだしゃがみつつ頑張っていた。


「ほらほら。加茂1回休憩してこい」

「えっ?いや、ここはそんなに忙しくは――」

「いいからいいから。裏にベンチ準備してよ。休憩できるようにしてあるからよ。あっ。建物の裏な」

「あ、はい。じゃちょっと……休憩へ」

「おうおう。餅は――ちょっと待ってくれ予想よりこっち減ってるな」

「すごいペースですよ?子供たちが来ると一気に減りますし。さっきから高校生くらいの集団も来ていましたから」

「予想以上の人だな。まあ余分に買って準備しておいて正解だな。がははー」

「あっ、あんこのペースは速いですよ」

「おう。なるほど。じゃ加茂休憩行く前に厨房のおばちゃんあんこの追加頼んどいてくれ」

「わかりました」


ということで難波先輩と交代すると……。


「私たちも手伝いましょうか?」


海織が難波先輩に声をかけていた。


「おうおう。いいのか?そりゃ助かる助かる。公民館の方に水道あるからよ。手洗いしてきてくれ」

「はーい」

「私も手伝います!」

「サンキューサンキュー」


まあテントは3人体制にいきなりなったので大丈夫そうだ。

そして俺がテントを離れようとしたとき。


「餅無料だって」

「おお。食いてぇー」

「普通……先に餅つきしてからじゃないか?食うのは」

「腹が減ってはだろ」

「……確かに」


高校生?の集団かな。まあわいわいとやって来たので……3人がバタバタ動き出すのが見えた。まあ俺はそのまま建物内に入ったので――その後がどうなったかはわからない。


少しして――。


「餅が足らんぞ!よし!俺がついてくる!」


とかいう難波先輩の大声が裏で休んでいる時に聞こえてきたので……。

大繁盛でもしたのだろうか。向こう側はここからでは見えないので何が起こったのかはわからないが。まあ表が大変ということが伝わって来たので――。


裏で休憩していた俺はおじちゃんたちと話していたのだが。

そろそろ話を終えて表に戻るか。とか思っていた時だった。


「あれ?お嬢ちゃんどうしたんだい?」

「うん?」


俺と一緒に休憩していたおっちゃんがそんなことを言ったので、俺もおっちゃんが見ている方を見てみると……。


女の子が立っていた。中学生くらいかな。ちょっと人見知りなのか帽子を深めにかぶっている。ってか髪長い子だな。


「お嬢ちゃんこっちは立ち入り禁止だよ」

「ごめんなさい。ちょっと知ってる人の声が聞こえた気がして――」

「そうかい?でもここ男どもしかいないぞ?なあ?」


と、おっちゃんが女の子のところに歩きながら休憩している俺たちに言っていた。まあ確かに男しかいない。俺の周りおっちゃん数人しかいないしな。こんなところに中学生くらいの女の子は用事ないわな。あー、でも誰かの子供……とかはあるか。とか俺が思っていると――。


「……あっ、やっぱりだ」

「うん?」

「えっ?」


女の子の視線が俺の方を向いている。


「そのお兄ちゃんかい?」

「そうです」

「だとよ。お兄ちゃんお呼びだよ。知り合いかい?」

「えっ、俺?」


まさか手招きをされるとは思わなかった。

俺中学生?くらいの知り合いとかいないんだが……とか思いつつ呼ばれたのでとりあえず立ち上がり。女の子のところに行ってみると――。


「お久しぶりです。また会えましたね。あの時は助けてもらいありがとうございます」

「えっと……どちら様?」


おっちゃんと交代するように女の子の前に行ったのだが――。


…………わからん。


誰だ?長い髪に……帽子。眼鏡……ちょっとしっかりした感じの子—―?ダメだ見覚えが……。


「—―あっ、これならわかりますか?」


すると女の子は帽子を取り。長い髪を揺らし。眼鏡も外して……ってそれ伊達眼鏡だったのか。って……あれ?うん。この姿は……なんか見たことある気がしてきた――。


「……あー!オープンキャンパスの時の」

「そうです。あの時は助かりました。ありがとうございました。あの後無事にお昼ご飯にありつけました」

「それはよかった。ってえっ?でもなんでこんなところに?あれ?実はこのあたりに住んでたの?」

「あっ、住んでは無いんですけど。実はこっちにお兄ちゃんが居まして」

「そうなんだ。で、お正月だからこっちに?」

「はい。ってまあ勝手に来たんですけどね」

「勝手に?」

「はい。年末に帰って来た時になんか住んでる近くで餅つき大会をしてると聞いたのでちょっとどんなのかなー?って暇だったので来て見たら……あれ?今なんか聞いたことある声が……ってその声につられて裏に来たら。ってことです」

「それはすごい偶然で」


と、女の事話していると。


「お嬢ちゃん。お兄さんの知り合いなんだろ?餅はもう食べたかい?今ちょうど出来たってばあさんが渡してくれたんだが。あんこで良ければ食うか?」

「あっ、いいんですか?まだ食べてないので食べたいです!」

「ほらほら男ばかりだからな。かわいい子が居てくれると明るくなるわい」

「だなー。ほらほら」


と女の子はスタスタと俺が座っていたところに歩いて行き――おっちゃんからお餅をもらっていた。

うん。おっちゃんたち全員がにやけていましたとさ。1人の力でこんなに場の空気は変わるんだよな。うんうん。


ちなみに俺にも餅はまわって来たので頂きました。ってやっぱり出来立ては上手いな。うん。


とまあ突然知り合い。というか……こういう場合なんて言うんだろうか――まあ知り合いでいいのか。うん、知り合いと偶然?会った俺でした。

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