第250話 通常運転3 ~湯の山温泉駅19時49分発~

「楓君。寒いー」

「だからと言って前で何回も止まるの止めませんかね?危ないよ?」

「ちょっと無理ー」

「……」


俺と海織はそんなやりとりをしながら駅へと進んでいた。


まあ……一緒に居た後の2人さんも居るので――。


「柊、柊。私も後ろからガード」

「拒否する」

「えー、卒論ヘルプしてあげたじゃん」

「楓と同じ気持ちだ。なんか楓が嫌がっている理由がわかって来た」

「まあ、私もこれは言っていて恥ずかしいけど……まあ寒いからちょうどいい的な?」

「楓ー、沙夜も壊れたんだが!」

「酷っ。壊れてないし!」


――バンバン。


「ちょ、叩くな」

「あっ、待てー」


と、柊が避難のため少し先へと小走りで移動していったのでそれを追いかけて斎宮さんも……行かなかった。


「無駄な体力は使わないからね」


とか言っていた。


まあ結局追いかけてくる人が居なかった柊は少し先まで先に行って……待っていた。


ちなみに海織はやっと諦めたらしく。俺の横にくっついて歩く。ということになっていた。まあ――これもこれなんだが……うん。まだこれはOK的な……うん。


「そういえばさ。海織ちゃん」

「うん?」

「クリスマスどうする?」

「あー、どうしようか?」


そんな会話が隣で始まった。


「ケーキでも作っちゃおうか?」

「おお、海織ちゃん先生!その話乗ります!」


なんか盛り上がっていますね。気が付いたら海織は斎宮さんと並んで歩き出した。まあそれはそれでいい事なんだが。とか思っていたら俺の隣にもう1人やって来た。


「いやー、楽しそうだな。沙夜も宮町さんも」

「クリスマスだからねー」

「で、今ケーキが何とか言ってなかったか?」

「言ってた」

「まさかの手作りケーキ的な?」

「うーん、まあ海織なら作れそう」

「沙夜は……どうなんだ?」

「柊!あげないからね!聞こえてるから!」

「いやいや、悪かったって。沙夜がお菓子作りのイメージがな」

「もう、こうなったら柊を驚かす。ってことで、海織ちゃん先生お願いします!材料費は柊から」

「何故に!?」

「はーい、何作ろうか」

「宮町さんもさらっと流してきたよ……ってあれ?楓、これ手作りケーキ確定?」

「かな?」

「よし!ケーキゲット。それも手作り。うんうん」


とか言ってるイケメンさんがお隣に居ましたとさ。つい先ほど材料費……とか言われていた気がするが。いいのだろうか。


結局途中からはそんな話をしながら男女で別れて歩き。

今は湯の山温泉駅に到着。


「次は――49分か」


駅の時刻表を見ながら俺がつぶやくと隣に海織がやってきて――。


「楓君楓君」

「うん?急なんだけど今日は家に帰るね。さっきまでは行くって言ってたのに」

「あ、うん。まあそれが普通の事だと思うけど……」


そう、当たり前のように俺の家に今日も帰って来るみたいな感じでゼミの部屋の時は言っていたが……うん。これが普通です。


「ちょっとね、ケーキ作り結構本格的に……になっちゃったから。いろいろ調べたりしたいからね。あと、家に型とかあったかなー。ってちょっと見たいから。せっかくなら楓君も当日まで秘密の方がいいでしょ?」

「ま、まあ、って、斎宮さんすごいやる気ってこと?」

「うん。白塚君をぎゃふんと言わすんだって」

「まあ無理しないように」

「ありがとう。どんなのができるかは当日のお楽しみね」

「はい」


そんなやりとりをしつつ改札を抜けて、電車が駅に入って来ると俺たち4人は電車に乗り込んだ。


車内は外よりマシ。うん。ほんのりだが。暖かい。いい空間だった。


そして湯の山温泉駅19時49分発の近鉄四日市行きの普通電車は定刻通り発車した。


「おつかれー。ってマジ助かったわー」

「バイバーイ」


菰野駅で柊と斎宮さんが降りていき……。


「じゃ、海織。気を付けて」

「うん。なんかこのやりとりの方がレアってすごいよねー」

「それ自分で言う?」

「あー、もしかして楓君本当は来てほしい?」

「ちゃんと自分の家に帰りましょう。じゃ」

「もう……おやすみー」

「おやすみ」


20時07分伊勢川島駅に到着。


はい。今日は無事にというのだろうか。伊勢川島駅では俺しか降りなかった。


ってさっきも言ったがこれが普通なんだよね。

うん。って……なんか寒いな。あれか海織がずっと横に居たから……ってまあなんか変なことを考えているとあのお方は察知してくる可能性がありますからね。よし。早く帰ろう。


ということで俺は駅を出て家へと向かった。


真っ暗な道。まあまだ暗いがちょっと時間的には早いから……家に帰るまでに数人の人とすれ違ったが。まあさすが田舎というか。もう静かな時間である。家の電気が付いているところが多く。外は――ほとんど人が居ないという時間帯だった。


家に着くと当たり前だが真っ暗。そして……寒い。こういう時はとっとと風呂に入るのが正解だな。ということで俺はまず風呂へと行くことに。


そして暖まってから部屋に戻ってきてから片付け。明日の用意。うん。まあざっとでもしておくと明日の朝が楽なんでね。


と、ある程度の片付けなどが終わり、俺がちょっとのんびり。ということでスマホを見ると……。


「うん?」


メッセージが来ていた。


「楓君楓君。ケーキ作る時楓君の家で作っていいかな?」


そんなメッセージが来ていた。って……あれ?まだ講義はあったから――と、予定を見てみると……あれかもしかしたら俺だけあるパターンかもしれない。とか思いつつ。


でもまあ、海織ならいつもの事だし……俺が居ない時でも普通に居るだろうから。ということで。


「大丈夫だけど。もしかしたら講義があると昼間は居ないかも」


と、返事をすると――。


♪♪


「楓君の返事が遅いー、まあ気にしてないけどね。わかったー、勝手に使わせてもらいまーす!」


と、そんな返事が返って来た。って海織もしかしてスマホを握って返事を待っていたのだろうか……と、ちょっと想像……うん、してそう。


「帰ってきてすぐシャワー浴びてたから遅くなっただけです。あっ、まああさらない程度にご自由にどうぞ」


♪♪


「あれー、楓君私が居なくて寒かったからお湯に浮気したんだね。ニヤニヤ」


無視していいかな……とか俺が思っていると――。


♪♪


「大丈夫。ちゃんと明日はお泊りに行くから。さっきレシピもいい感じの見つかって、型とかもあるのが使えそうだったから。これなら楓君ところ泊まっても問題なかったー。ってレベルなんだよ」

「来なくていいからね?遅いから」


俺はその返事はすぐにした。いや海織の場合もう居るとかそんなオチもあるので……心配……。


♪♪


「ちゃんと家に居るよ。洗濯機まわしちゃったから動けないよー。ショック」


♪♪


というメッセージの後に再度メッセージ……いや画像が来た。


「うん。洗濯中かな」


洗濯機の画像が届くという。うん。まあ証拠とか言うやつかな。でも海織だと……これで信じると――っていうのがあるからな。


とか思っていると。


♪♪


また海織からメッセージが来た。


「楓君さ絶対。これ……実は嘘。とか思ってるよねー。大丈夫、今日は本当に大人しくしてるから。今からお風呂も入るし。あっ、まさか私の写真が欲しい……とか?ニヤニヤ」


俺の心の中見られていたみたいです。怖い怖い。ってそんなことより。相変わらずの絶好調なお方です。


「大人しく。そのまましていてください。写真とかも大丈夫です」


♪♪


「なるほどなるほど楓君はやっぱり実物じゃないとかー」


この子何言ってるんだ?とか思っていると。本当にお風呂に入るらしく「お風呂入って来るね」と、いうメッセージが連続で来てその後俺のスマホは静かになった。


うん。多分。大丈夫なのだろう。多分。


ということで俺も再度ゆっくりすることとした。ちなみに本当に今日は静かでした。はい。


もうすぐクリスマスです。

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