第127話 お見送り ~菰野駅22時27分発~

俺と斎宮さんがなんやかんやといろいろ話しつつ。パソコンとにらめっこをしていると玄関の鍵が開く音がした。そしてドアが開く音。


「ただいまー」

「おかえりー。海織ちゃん」


海織の声が聞こえると。斎宮さんが立ち上がり玄関へ。そして2人でリビングに戻ってきた。


「楓君。これインクね」

「あっ、ありがとう。そしてお金払うよ?結構いい値段してるから」

「いいよいいよ、本当に。私結構ここで課題の印刷とかしているからね。ところで楓君はできたのかな?」

「……7割くらい」

「じゃ、残り3割頑張って。沙夜ちゃんは?」

「楓くんが楽しくお話してきてくれたから……進捗状況は……4割くらいかな?」

「えっ!?斎宮さん!?進んでなかったの?結構キーボードたたいてるなって思ってたんだけど……」

「エンジンが暖まるまでちょっと私時間がかかるからね」


かわいい顔してもだめですよ。斎宮さん。だってお隣の海織が――。


「もう、楓君ダメじゃん。沙夜ちゃんの邪魔しちゃー」

「えー!?」


なんか、おかしいことがあったが――それから海織に斎宮さんのお手伝いをするようにと言われたため。俺は斎宮さんにアドバイスしつつ。斎宮さんのパソコンを見ている。


「楓くんこれじゃ短いかな?」

「うーん。今の段階でいろいろ書くよりは……短くこんなことしたい。みたいな方がいいかと。俺は思うんだけど……」

「なるほど――にしても……いい香りがする……」


当たり前のことだが、いい香りとは俺の事ではない。その香りの発生源は――すると斎宮さんの声が発生源にいるお方にも、聞こえていたらしくキッチンから声がした。


「沙夜ちゃん。課題出来ないととカニクリームコロッケ私が食べるからねー」

「えー!それは無いよー。海織ちゃん!私頑張ってるからー!食べる!」


そう言いながら斎宮さんは急いでパソコンに視線を落とし。キーボードをたたきだした。海織は斎宮さんをやる気にするのが上手いというか。食べ物で動かしていた。


ちなみに海織が帰って来た後はこんな感じだった。


「沙夜ちゃんがコロッケって言っていたから。ちゃんと買ってきたよ。さすがに今から作るのは……だったから」

「美味しそう!わっわっ」

「これがジャガイモので、こっちはカニクリームコロッケ」

「おお。美味しそう!」


途中で買い物をしてきてくれた海織はコロッケをいくつか買ってきてくれた。そして今は、ご飯を炊いてくれたり、その他サラダや。みそ汁などを作ってくれている。


「本当に楓くんは幸せだよ。これはずるいレベルだよ。いい奥さんが居るって良いなー」

「奥さんって――まあ確かにご飯は……めっちゃ美味しい」

「自慢されたー。わー!どっかで爆発してこーい!」


そんなこんなでコロッケを食べたい斎宮さん。必死にそれから頑張り――ちょうどご飯が炊きあがった頃に――。


「できた!できました!海織ちゃん!」


無事に完成しましたとさ。後は3人とも印刷。なのだが。海織が準備してくれた晩御飯のいい香りに負けた俺と斎宮さん。すぐさま机の周りを片付けて……。


「「いただきます」」

「はい、どうぞー」


今日も美味しい晩御飯をいただきました。海織のご飯は美味しいから。って、最近本当によく作ってもらっているのだが……お礼が必要なのではないだろうかとか。俺は思っている。お昼も作ってもらうことあるし……うん。どこかでお礼を考えよう。


「やばーい、ここのコロッケ美味しい。サクサク」

「でしょ、私たまに買ってたんだ。大学帰りに通るからね」

「いいなー、いいなー」

「まあ、最近は楓君が帰らせてくれないから。買うのは久しぶりだけどね?」

「ちょっと、事実と違うことをさらっと言わないでください」

「あれ?違ったかな?ニヤニヤー」

「やっぱりー、楓くんが海織ちゃんを拘束していたんだね。もう、海織ちゃんがかわいいから離したくないんだー」

「斎宮さん、事実じゃないですからね?」

「困っちゃうでしょ?楓君甘えてくるから」

「ちょっと!?海織?話を大きくしない」


なかなかにぎやかな晩御飯となりました。なんか俺が恥ずかしい思いをしただけなような気がしたが……まあ、美味しいご飯を頂いたので……って、帰らせないとかないからね?海織が帰らないんだからね?と、一応何度か俺も対抗して言ったが。まあ、うん。男の子の発言は弱かった……とっても弱く。女の子2人にいじめられましたとさ。


食べ終わった後は。俺が片付け。そしてその間は女の子2人はくつろいでいました。っか、2人とも俺の部屋なのにすごくリラックスしているという。まるで自分の部屋に居るように――。


そして俺が片付けを終えると。再度各自でパソコンを準備。そして海織が持って来てくれたインクを俺がセットして、テストプリント。インクを交換したため問題なく全色出るようになったので3人が順番に印刷をしていく。


「やったー、出来た」

「うん。問題なしかな」

「無事できてよかった」


3人がそれぞれ感想言いつつ。印刷した自分のプリントをチェックする。俺も読み直して……うん。多分大丈夫そう。それなりには指導が入りそうだが……多分大丈夫そうなものができた。


「あっ、もうすぐ22時だね。私そろそろ帰るね」

「ホントだ。あっという間だね」

「だねー。でも課題できてよかったー、これで今週は乗り越えられるー。あっ、楓くんまた手伝ってね?」

「なるべくは1人でしたほうが……」


俺が言い終わる前に海織が入って来た。


「うん。やろう。みんなでやった方がいいよ。ね?楓君」

「—―はい」

「楓くん海織ちゃんに弱いねー」

「ははは……」

「あっ楓君。もう外くらいから沙夜ちゃん送ってってあげようよ」

「えっ?」

「いいよいいよ。海織ちゃん。電車乗ったらすぐだから」

「楓君。ずっとパソコン見てたから少しは外に出るのもいいと思うよ?ほら」


海織に腕を引っ張られるので――。


「えっと――じゃ、斎宮さんまだ電車もあるから送るよ」

「いいの?」


ということで、片付けてから貴重品だけ持って3人で伊勢川島駅へ。


「真っ暗ー。最近遅くなること多いねー」

「うんうん。夜の女の子1人は危ないよ?ね、楓君」

「ですね。って、海織本日ご帰宅は――」

「1回もう帰ったよ?」


まあ、確かに帰りましたね。はい。インク取りに……ってそれは帰ったにカウントされるのだろうか――と、俺が思っていると。


「ふふふ。楓くん大変だねー」


隣から斎宮さんに言われた俺でした。


「ほんと。あっ、電車21時56分だからもう来るよ」

「あっ、ちょっとダッシュ!乗り遅れて待つのは嫌だからね」


3人でちょっと早歩きで改札を抜ける。そしてホームに着くとちょうど踏切が鳴りだした。そして3人で電車に乗り。伊勢川島駅出発。数分電車に揺られて、22時06分菰野駅到着。すると――。


「あれ?沙夜たちじゃん」

「—―あっ、柊何してるの?」


菰野駅ではちょうど湯の山温泉方面からの電車も到着した。そして偶然湯の山温泉方面の電車から降りてきたのは柊だった。


「七夕祭の準備。地域の人と話すのが長くなってな。っか。ほぼ居酒屋に居た気がするが」

「だから白塚君から焼き鳥のにおいがするんだね」


確かに海織の言う通り。柊が近くに来た時に確かに焼き鳥のにおい。あのスーパーとかの駐車場でたまに売っていて、まわりに充満しているあのにおいがした。つまり……めっちゃいい香りという事。えっ?駐車場とかでそんなもの売ってない?このあたりだけなのだろうか……まあ、それはいいとして。


「で、3人は何してるんだ?」

「沙夜ちゃんのお送りだね」


柊の質問には海織がすぐに答えた。


「うん。海織ちゃんと楓くんとでゼミの資料完璧だよ」

「あー。俺まだだー。なあ、楓、今から手伝ってくれ!」

「嫌だよ。帰るよ。電車なくなるし」

「歩いて帰れるさ」

「お断りします」

「まあ、俺疲れたから今日は寝るだろうけど」

「なら、俺を呼ばないように」


そんな話を駅の改札を出たところで話していた。


「じゃ、楓もおやすみ」

「ああ、おやすみ」

「海織ちゃん晩御飯ありがと!おやすみー」

「おやすみー、沙夜ちゃん。白塚君もー」


そして、俺と海織は先ほど柊が乗って来た電車にはさすがに乗れなかったので、その次の電車。菰野駅22時27分発の近鉄四日市行きの普通電車に乗るために、再びホームへ。斎宮さんは柊と2人で帰っていった。なんやかんやあったが。あの2人今のところいい感じらしい。なんか柊に飛びついている斎宮さんが居たような気がする。


そして菰野駅22時27分の電車に乗った俺と海織だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る