第71話 連行 ~14時23分発京都行き急行~ 

のんびりとした、宮町さんとの休日があったかと思えば……。

なんか――1年前にもこういう経験をした気がします。

いや、ちょっと、違うか。

今回は怪しい行動があった。あの時の宮町さんの行動は、そういうことだったか。と、今理解しました。


今、かなりのスピードで景色が流れていきます。100キロくらい出ているのかなー。と。


現在は、10月下旬。俺の誕生日が過ぎてしばらくした頃。ちなみに、今年の俺の誕生日会は、みんなの都合が合わなかったため。大学の昼休みに、お昼をおごってもらうという事になりました。いや、それでも全然個人的には問題ないのですが。大学のいつものベンチで、4人で、わいわいお昼。宮町さん斎宮さんが講義の空き時間にケーキを買って来てくれたので、ケーキもちゃんと食べれました。


――なお、柊と斎宮さんの怪しい感じは続いています。いや、主に斎宮さんだけなんだが。柊を見ると不機嫌になるという。柊は、笑って過ごしています。いつまで続くんだろうか。


で、重要なのは今です。はい。

確か始まりは、金曜日。後期の講義も金曜日の6限の講義が入っていたので、それが終わってから家に帰って来る。ちなみに、宮町さんがもう当たり前と言うのか。普通に俺の家に居ついている週末。で、何故か翌日も普通に宮町さん俺の家ににいました。いつもは土曜日には帰るのだが……帰る気配が全くなかった。


そして、その日に朝からよくスマホ見てるな。

――と思っていたら「明日どこか行こうか?」と、宮町さんが急に言い出して、何事?と、思っていたら。「せっかくだから、泊りでどこか行こうか?」と。なんか急にお出かけ?の話が出てきて……でも、不思議というか。行先を言わない宮町さん。なのに「ほら楓君。ちゃんと、準備して」と、言われ。うん?なんかおかしい。そして、宮町さん無駄にスマホ見ている回数が多い気がした。


なんか謎な土曜日午後がありました。出かける。いうなら宮町さんも準備のため帰るのでは?と、思っていたのだが。宮町さんちゃっかり。2泊うちでしていきました。ホント、この家に居つかれた?


そして、日曜日。やっぱり出かけると言っているのに、宮町さんは、朝からのんびり「天気いいから、洗濯しちゃうね」と、なんか。家事を普通にしてくれていました。今までも1人で普通に家事は全部していたので、大丈夫と前言ったのだが。でも、最近の宮町さんなかなか折れてくれなくて。結局というか。自然とたまに家事してくれています。という話は、またとして。うん?俺には、何故か出かける準備を昨日からさせている宮町さん。でも宮町さんは全くと言っていいほど動く感じがない。謎。と、思っていたら、昼前に。


「あっ、楓君そろそろ出発準備した方がいいよ?」

「……はい?」


と、いきなり言われて、少しすると。

家のインターホンが鳴る。そして、普通に宮町さんが出る。

――何度も言うがここ俺の家である。


「はーい」

「あっ、本当に同棲してる」

「同棲って……沙夜ちゃんが協力して言うから、楓君に準備させてたんだよ?」

「ごめんごめん。でもいいの?楓くん借りちゃって」

「うん。振り回してきていいよ」

「ありがとう。いっぱい。写真送りつけるから」


と、玄関の方から、よく聞く声が、って「沙夜ちゃん」と、宮町さんが言ったのが聞こえたので、斎宮さんですよね。そこにいるの。と、思っていたら。


「やっほー。楓くん。出かけるよ」

「……はい?」


お出かけモード?の斎宮さんが部屋に入って来た。

そして、宮町さんは「ほら、楓君荷物持って。はい。行ってらっしゃい。あっ、お掃除して、戸締りして帰るから。カギだけ貸して?」

「えっ?」


と、宮町さん普通に俺が普段棚のところに置いている家の鍵持って、って、え?うん?なんかおかしいが俺、そのまま部屋から出されました。


それから10分くらいすると。俺は伊勢川島駅にいました。

――斎宮さんと。誰か説明をお願いします。本当にお願いします。だった。


「えっと、次は、11時……16分だね」

「あ、うん。四日市方面は……だけど。えっと――これなに?」


と、そのまま、伊勢川島駅11時16分発の近鉄四日市行きの普通に乗る。そして、車内。


「ところで、これは何でしょうか?なんか、宿泊レベルの準備を宮町さんにするように言われたのですが……」

「そうそう、大丈夫。楓くんは、普通に観光してくれたらいいから」

「……どういうこと?」

「まあまあ」

「って、これ、宮町さんも一枚かんでるよね?」

「まあ、海織ちゃんと話してるときに思いついたからね。にひひー」


――子供みたいな人が横にいます。

何企んでるんだろう。お隣さんは……。


「楓くん大丈夫だよ。海織ちゃんにもメリットあるんだから」

「いや、それは聞いてないというか。うん?メリット?って、宮町さん俺の家に置いてきた感じですが……いいのだろうか」

「あるの。まあまあ、今は気にしなくていいと思うよ?だから、私の相手をしてくれたらいいんだよ。許可取ったからね」

「……どうなるのこれ」

「おでかけー」


と、楽しそうな斎宮さん。一方で――。


「……家大丈夫かな?」

「あさられてるかもね?」

「まあ、犯人わかるから、宮町さんはそんなことしないと思うけど」

「どうだろうねー。あっ、もうすぐ四日市だよ」


と、ホント元気な斎宮さんでした。で、宮町さんは……俺の家で何をしているのでしょうか。で、ちょっとメッセージ送ってみたら。


「今は床掃除してるよ?帰ってきたらピカピカだよ?あっ、ちゃんと、沙夜ちゃんの言う事聞くんだよ?楓君わかった?」


と、返事がきました。もうなんでこうなっているのかわかりません。

それから近鉄四日市駅に11時25分に着いた後は――。


「今回は、ちょっと、ホテル代があるから、移動は急行でお願いしまーす」

「……え?ホテル代?」

「そう。鹿たくさんいるかな」

「—―鹿!?」


とかなんとか話しながら――近鉄四日市で乗り換え。

お昼を挟むということで――ちょっとコンビニでいろいろ購入し。11時54分発の松阪行き急行に乗った。


「ところで、俺はどこに連れて行かれているのでしょうか」


急行電車はクロスシートの車両だったので、斎宮さんと座り。先ほど買ったパンを食べつつ俺は聞く。


「うん?秋と言えば京都でしょ」

「……京都?そう」

「あれ?でも鹿がどうとかって」

「あれ?いなかった?」

「それ――奈良では……」

「あー!そっか。奈良駅だ。駅前に鹿がいるの」

「まあ、そういうことです。で、なんで、俺がまた拉致されて、京都に付き添い?しているのでしょうか……」

「あっ。そうそう、楓くんちょっと、写真撮らせて?大丈夫顔は写さないから」

「……何してるの?」


と、何故か、パン?の写真撮っている斎宮さん。


「よし、まず1枚」

「……あの」

「まあまあ、楓くんは普通に楽しんでて」

「いやいや、気になるのですが」


とか話しているうちにも電車は走る。

12時38分。俺と斎宮さんが乗った電車は伊勢中川駅に到着。


「あのー楓くん。京都方面の電車はどれかな?」

「斎宮さん……計画は立ててない……と」

「うん。目的地しか決めてない」


――めっちゃいい笑顔でそんなことを言われたが……どうすれば?と俺は思いつつ駅の時刻表をとりあえず見る。


「えっと――特急使わないなら。12時48分発大阪上本町行きの急行かと」

「よし、じゃそれ乗ろう」


とすぐに行動は決まりまして――少し伊勢中川駅で俺たちは待機してからの乗り換え。


「とりあえず、理由は聞かせてもらえないのでしょうか」

「まあ、もういいか。海織ちゃんとね。どうしたら、柊が慌てるか。って話してたの」


と、聞いてなんかピンと来た俺。


「もしかして、斎宮さんが誰かと旅行行ってるアピールして、柊を慌てさせて、仲直り計画的な?」

「あれー。私が言う前に、なんかほぼ言われたー。まあ、そんな感じかなー。今まで、私誰かと出かけてるアピール。って、去年の楓くんしかないからねって、仲直りっていうより、ちょっと、慌てさせるだから」

「仲直りですね」

「もー。楓くんがいじめてくる。あとで、海織ちゃんい報告するからー……まあ、でも、今回は、誰かわからないように、写真撮って。私が誰かと出かけているアピールをするってことで」

「それ、宮町さんでも良かったのでは?」

「私もそう思ったんだけど、そしたら「そうだ沙夜ちゃん。楓君連れて行ったら?」って、海織ちゃんが許可くれたの」

「本人に相談なしと……」


俺の知らないところで、話が決まっていました。怖い怖い。


「まあまあ、怒らないであげてね?」

「まあ、宮町さんも何か考えていると」

「あれだよ、楓くんとの同棲計画だよ」

「いやいや」

「でも最近よく居るんでしょ?」

「……まあ」

「あらー、これは、今日明日でたくさん聞けそう」

「帰りたい」

「ダメだからね。わたし。京都久しぶりだから、迷子なるかもだから。楓くんよろしくね」

「いやいや、俺もそんなにわからないけど」

「とりあえず、お寺とか神社みたいかなー。ということで、今から少し考えようよ。って、京都何時に着くかな?」

「急行だと……16時くらいにならない?今からだと」

「えー、夕方。じゃ、ホテル行って、明日朝から回る方がいいのかな?」

「今からだと、東寺くらいなら行けると思うけど。京都の駅前だし。確か世界遺産?じゃなかったかな?あと、五重塔とかも東寺ならあったから。京都来たって感じはあると思うけど……」

「もう一回言って、もう一回。調べてみる、何々?東寺?だった?」

「そう、京都駅の1つ前にある駅で、その東寺までも歩いて行けるかと」

「ほうほう、楓くんやっぱり詳しいじゃん」


と、なんか行き当たりばったりだが。車内で斎宮さんと話していると――大和八木駅には14時11分着。

ここで京都方面乗り換えて――大和八木駅14時23分発の京都行き急行に乗った。

そして、その間に斎宮さんがいろいろ調べた結果……東寺を見てみたい。ということで、15時32分東寺駅に降りた俺達でした。


って、本当に京都まで来ました。はい。県をいろいろ超えてきました。

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