第65話 女の子2人 ~16時38分発行き近鉄四日市行き普通~

「でさ、もう、柊何言ってこりないというか。ホント」

「まあまあ。でも、白塚君もわざととかではなくて、自然にそうなるんだと思うから……白塚君人気あるって。楓君も前に言ってたから」

「でもー。最近ずっとあんなんなんだよーもう」

「まあ、わたしもよく見る気がするけど」

「でしょ、でしょ。もう、もっと殴っとかないとだめかな」

「沙夜ちゃん、暴力は……やめようね?」

「だってー」


と、沙夜ちゃんは言いながら、アイスクリームを一口食べました。


今日の私は、沙夜ちゃんに捕まっていました。

大学の帰り。甘いものが食べたいという、沙夜ちゃんとともに、四日市まで出てきて、今は喫茶店にいます。目の前に座った沙夜ちゃんは、デニッシュパン?にアイスクリームが乗ったものを1人でパクパク食べつつ。愚痴っています。私は、紅茶とシフォンケーキを食べています。初めて入ったお店ですが。なかなか良いお店です。これは、チェックしておいて、楓君と来ないとですね。


あっ、そうそう。ちなみに、本当は、今日も楓君と帰ろうかなと、準備していたら。隣に居た沙夜ちゃんに私は捕まりました。それが、少し前のことです。


「海織ちゃん今から時間ある?何か食べに行こうよ」


と、講義が終わってすぐ。沙夜ちゃんが話しかけてきたので、今日は、沙夜ちゃんと行動する事にしました。まあ、腕引っ張られていたので、そのまま大学を出ていつものように駅まで歩いていたのですが。その間も沙夜ちゃんは何か、ぶつぶつと。なんとなく、今日の朝から、ご機嫌斜めかなと思っていましたが。やっぱりちょっとご機嫌斜めの様子です。まあ、理由はなんとなくわかりますが――。


沙夜ちゃんが不機嫌の時は、多分、白塚君関係です。間違いないと思います。今は、ぶつぶつと、言っているので……私は、そっと沙夜ちゃんの横を歩いて行きます。あっ、そういえば、沙夜ちゃんとすぐに講義室を出てきちゃったから。楓君に今日は、沙夜ちゃんと帰ること言わずに来ちゃったけど、大丈夫かな?最近は、いつも一緒に帰っていたから――。

もしかして、待っている……?ってことは、無いと思うけど。沙夜ちゃんもぶつぶつ1人で何かを考えているみたいなので、その間に、ちょっと、メッセージ送っとこうかな。と、楓君に「今日は沙夜ちゃんに捕まりましたー汗。なので、先に帰るね。また明日ー」と、言葉とスタンプを送っておきました。


すると、楓君はすぐにスタンプで了解と返事をくれました。返事が早かったので、もしかして、気にしていてくれたのかな?とか思っていたら。沙夜ちゃんに話しかけられたので、スマホを閉じました。


「あー。海織ちゃん甘いもの食べたいよー」

「えっと、じゃあ、とりあえず――何かお店のありそうな、四日市まで行って考えようか?」

「うん。賛成―。あっ、海織ちゃん、ちょうど電車居るよ」


と、沙夜ちゃんが駆け足になったので、私もちょっと駆け足に。16時38分の近鉄四日市行きの普通電車に間に合いました。乗り込んですぐに、電車は出発。セーフ。でした。それから空いていたところに沙夜ちゃんと座りました。


車内でも、沙夜ちゃんは、白塚君の愚痴を話していたので、私は刺激しないようにしながら話を聞いて、近鉄四日市まで移動しました。電車の中で騒がれたら――なので。私一人では、沙夜ちゃんを止める自信がありません。楓君がいたら、何とかしてくれそうですが。今はいないので。


17時05分。近鉄四日市駅に到着しました。私は、定期区間のため、よく降りますが。沙夜ちゃんは久しぶりらしく。結構楽しそうにお店探しをしています。


2人で駅前ぶらぶらしながら、ちょっと気になった服屋さんとか見たりと、寄り道もありましたが。その近くで、喫茶店や、ハンバーガーのお店、洋食店?などがあるところがあり。甘いものが食べたいという、沙夜ちゃんの希望から、喫茶店に入ることに。そして、先ほどからの、沙夜ちゃんの愚痴が始まっています。


「やっぱり、勢いで付き合ったけど。ダメかなー」

「えっ、でも、2人お似合いだと思うよ?」

「まあ、楽しいときは楽しいけどー。柊の浮気癖あるし」

「えっと、でも、それは、サークルとかって言ってなかった?白塚君知り合い。お友達も結構多いみたいだし」

「だけどー」

「……沙夜ちゃんは白塚君の事好きだね」

「なっ……そんなことないもん。タダ、一緒にいたからいるの。うん」


と、ちょっと、沙夜ちゃんの顔が赤くなったような……かわいいです。

けど、それは続かず――。


「でも、柊は、私をほって遊びすぎ」

「じゃあ、沙夜ちゃんもサークルに顔出してみるとかは?」

「前は出してみたけど……なんか、合わないというか。いろいろな人に、私が声かけられるから」

「あー、沙夜ちゃんかわいいから」

「なっ、褒めても何も出ないからね?」

「本当のことだよ。かわいいもん」

「海織ちゃんの方がかわいいから!」


――私たちはお店で何を話しているのでしょうか。と、思ったので、ここでちょっと会話を変えることに。


「じゃあ、休みにどこか出かけてみるとか?」

「うーん。確かに、最近行ってないから。それは、いいかもしれないけど」

「でしょ?で、甘えてみるとか」

「そ、それは、海織ちゃんだからできるんだと思うよ?」

「いやいや、沙夜ちゃんが甘えてきたら――うん。いいと思うよ?」


と、沙夜ちゃんの甘えている姿を見ると……これはなかなかいい光景ではないかと思いました。すると、沙夜ちゃんは――。


「海織ちゃんが妄想楽しんでる」

「ちょ、もう、沙夜ちゃん」

「まあ、ちょっと考えてみようかなー、まあ、これで、柊が絶叫系のアトラクションとかある遊園地を選んで来たら、速攻で蹴ってから張り倒すけど」

「あはは……多分それは、大丈夫だと思うよ?」

「海織ちゃんは良いよね。楓くんいいスケジュール考えてくれそうだから」

「うん。楽しいよ」

「惚気出ましたー」

「ちょ、沙夜ちゃん」

「いいなー。いいなー。幸せそー」

「沙夜ちゃんもそう見えるよ?」


とかとか、しばらくそんなことを話していました。なんか恥ずかしいこと言っていた気もしますが……大丈夫。沙夜ちゃんしか、今はいませんから。

そして、沙夜ちゃんと私ともに食べ物も飲み物をなくなったところで、お店を出ることに。って。まさかのもう19時を過ぎていました。だから外が真っ暗なのですね。話していると時間はあっという間です。


テーブルで、沙夜ちゃんと割り勘して、私がレジで会計待ちをしていると、混んでいたこともあり「海織ちゃん。私先に外出てるねー」と、声をかけてきたので、私は「わかった」と返して、順番が来るのを待ちました。

それから。無事に会計終了後、お店の外で沙夜ちゃんを探します。が……どこだろう。ちょっと人が多く。キョロキョロと、すると、沙夜ちゃんの後ろ姿発見。で、そちらに小走りで近づきます。


そして、沙夜ちゃんの後ろ姿が大きくなったときに、声をかけると、沙夜ちゃんの正面には、予想していない人が2人も立っていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る