第46話 雪の夜 ~ちょっと名残惜しい20時37分着~

柊の家に来ると、恒例になったのか。柊の誕生日の時にもしていたあの、人生歩んでいくみたいな、すごろくのゲーム。また、4人で、勝負しました。何気に、これ、いろいろなパターンあるから。シンプルだけど、楽しいんだよな。サイコロ振って進んで、あとは、選択肢。勝敗の基準は、まだいまいちわかってないが。とりあえず、トータル。そのキャラの一生の、幸せ度やらやらで、判断されている気がするが。楽しいから、細かいことは気にしない。


ちなみに1回戦。

1位柊。2位斎宮さん。3位宮町さん。4位俺。だった。


「いや、楓。早かったな。人生終わるの」

「いや、まさかの40代だった?止まったマスで、いきなり不治の病って。3人が終わるまで、結構暇だったけど」

「まだまだ、知らないパターン多いよねー、柊と結構してるけど。同じって……ないよね?」

「近い感じのは、あるけどな。全く同じって、見てないな」

「まあ、私としては、柊が、私より上が許せないんだけど」

「石油王の俺には、勝てないさ」

「うー。さあ、もう1回!」

「今日は、時間早いから、何回もできるね」

「まあ、だね。宮町さん相変わらずの、いろいろ挑戦だったね」

「なんか楽しいからね」


そういや、12月の時は、この後終電に乗り遅れた。で、いろいろあったんだよな。今日は――まだ、夕方。大丈夫。


それから――2回戦。


「マジか……」

「楓、どうした。今日は運がないか?」

「……次は、20代で、終わったんだが――」


俺、2回目も、まさかの、早々終わる。が、今のところ、トータル評価だと、結構良いのだが。20代で、難病に、効く薬を開発し、難病を治す医者になる。みたいな感じで、進んでいたら。いきなり。ぽっくりいっちゃったんだが。自分が病で。今回俺、病に負けてる気がする……。


「これ、俺、また――しばらく3人の、人生プレイを見る感じだな」

「だな。まあ、ゆっくり、俺が、2連覇するところ見ててくれ」

「違うし、私が勝つの」

「でも、今のままだと、楓君トップだよね?」

「……確かに。このまま1位ってあるのかな?あまりこういうパターン知らないんだけど。ねえ柊」

「まあ、なくはないと思うけどな。まだわからんな。あ、楓」

「なに?」

「暇なら、夕食頼む」

「……はい?」

「いやさ、多分、まだゲーム終わらないし。でも、腹減りそうだから」

「あっ、私もー、楓くんの料理希望!。そして、私が、勝つ」

「私も、楓君の料理。久しぶりに、食べたいかなー。あ、私、宝くじ当たった」

「ちょ、海織ちゃんが、一瞬で、億万長者にー」


この3人ゲームに、ハマってます。楽しそうなことで……っか、さっきまで、まさかの俺の1位みたいな話あったが――宮町さんのキャラが一気に迫ってきました。あ、これダメなやつだ。っか、運要素強いから、俺が運ないだけか。


「ちなみに、柊。この家何か作れるものあるわけ?」

「もちろん――ない!」

「おい」

「鍋は、あるぞ」

「それ、なかったら、どうしろと」

「まあ、楓の力にまかせる」

「……」


どうせ、することない為。一時退出。柊のところ、冷蔵庫何もなかったから。

外は、まだ、雪が降っていた。道は、積もってないが。一部白くなりだしているところも。そして、寒い。

このあたりのことは、あまりわからないので、スマホ出し。近くのスーパー検索。幸い少し歩いたところにあるみたいだった。


ちなみに、メニューは、すぐに浮かんでいた。作るの簡単。材料集めやすい。寒いときに美味しい。


スーパーで、必要なものだけ買って、柊の家戻る。3名様まだ、サイコロ振ってました。

俺は、台所借りて、人参、ジャガイモ、玉ねぎ切り。鶏肉は、カットされていたやつだからそのまま鍋へ。野菜も入れ、炒める。そのあと、水入れ。しばらく放置。しばらく煮込んだら、ルー入れて。最後に牛乳。あ、コーン入れるの忘れてた。と、ここで、入れたが……まあ、大丈夫だろう。少し煮込んだら、はい、完成。シチュー。あと、フランスパンを、適当な大きさにカット。このアイデアは、年末の時の、宮町さんの料理から。


「シチューの香りがする」


出来たころに、斎宮さんが、ふらふらと台所に寄って来た。


「終わった?」

「私だけ、終わったー。2人は、まだ100歳のバトルしてる」

「……あのゲーム。わからん」

「でも、面白いよねー」

「なんだが。早々終わるとめっちゃ、暇なんですがね」

「でも、そのおかげで、誕生日に、美味しそうな晩御飯まで、ありつけましたー」


そのあと、やっとゲーム終わったらしく。

1位。斎宮さん。2位俺。3位宮町さん、4位柊。だった。あれ?俺、なんもしてないのに、いい順位だった。


「長生きも良いけど、最後に、周りに迷惑かけると、評価下がるなー」

「ホント、このゲーム基準わからないけど……すごいのは、すごいのか。これだけ、遊べるから。にしても、柊落ちたな」

「あれは、長生きしすぎたからだな」

「楓君、ほぼやってないのに、2位だね」

「ほんと……ほぼ、参加してないのに。っか、斎宮さんは、これ、どういうこと?ぶっちぎりの1位じゃん。すべての項目で」

「でしょー。私もびっくり。誕生日。だからかなー。まあ、気分良く決着着いたから。晩御飯食べちゃおう」

「いい香りしてるもんね。シチュー?」

「そう。簡単だから。と、思い浮かんだから」

「楓に、まかせれば、普通に、何かは出てくるから、楽だわ」

「便利屋みたいに、言うなよ」

「え、便利屋でしょ?」

「おかしいだろ」

「ごめんね。楓君1人に、頼んじゃって」

「いや、まあ、暇だったから……良いんだけど」


それから、ゲームやらどけて、夕食。

まあ、味は、問題なかったみたいで、瞬く間に、消えていきましたとさ。


「じゃ、雪も積もるとだから。帰るよ」

「だね。私も」

「じゃ、私もかなー。今日は気分よく。退散できるから」


晩御飯から少しして、まあ、もう外は真っ暗なんだが。

3名帰宅へ。俺と、宮町さんだけが、帰るのかと思ったら、斎宮さんも、ゲーム勝ったし。食べるもの食べて、満足したから。と、一緒に、柊の家を出ました。


「うわー、寒いね」

「ホント……風邪ひく寒さだね」

「雪ずっと降ってるな……さっき買い物行った時も、降ってたし」

「今夜は、積もるかな?」

「かもね。じゃ、2人とも気を付けてね?また、乗り遅れとかないように」

「いやいや、まだ、時間早いから今日は大丈夫だから」

「わからないよ?海織ちゃんが、突撃訪問するかもよ?」

「ないでしょ……ないよね?」

「えっ?いいの?」

「違います。言ってません。はい。言ってないからね」

「えー。まあ、仕方ないかー。じゃ、駅に、歩いて行こうか」

「このまま話していると、風邪ひきそうだからね。じゃ、斎宮さんも、風邪ひかないように」

「うん。おやすみー。2人とも」

「沙夜ちゃんも。おやすみ――じゃ、楓君。行こうか」


斎宮さんと、別れて。っか、斎宮さんいいよな。すぐ、自分の家だから。今も手振って、ちょっと小走りに、自分の部屋に消えていきました。こちらは、ここから駅まで、歩いて、電車乗り。また、少し駅から家まで、歩くと考えると――また、自分に雪が、積もりそう。


雪が降っているからか。まだ、そこまで遅い時間ではないのだが。人通りも少なく。静かな中を、宮町さんと、話しながら、駅に、向かって歩く。


――確か……斎宮さんと、別れたときは、宮町さんとは、人1人分くらいの距離が、あった気がするのだが…・・気が付いたら俺のそばを歩いている。

そして、いつからか、わからないのだが。なんか、服を、引っ張られている感じがあり。見て見ると……なんか、宮町さんに、服を持たれていた。そして、近い距離で、目が合う。何故か、ニコニコと「ホント、寒いねー」と、言っているが――転倒防止だろうか。


「—―えっと――宮町さん」

「うん?何かな?楓君」

「いや……なんで、服持っているのかな。と」

「ちょうど、いいところに、あったからね」

「……もしかして、何か、訴えてます?」

「さあ?どうかなー。どうかなー?」

「……なんか、過去の流れ的に……手—―をつなげとかの。訴えかと。思ったけど……違うよね」

「おー、楓君。私と手繋ぎたかったのかな?」

「いやいや……なんか、そんな雰囲気—―いや、なんでもないです。はい。忘れてください」

「仕方ないなー。楓君は、ちゃんと、言葉にしたから、ご褒美ですよー」


言いながら、宮町さんの手が、服から、さっと、俺の手を掴んできました。あれ?俺……自分からなんか言っちゃった――?よね。うん。


隣を、歩く宮町さんは、大変ご機嫌みたいですが……まあ、手は、暖かいし良いのか。良いのだろうか?


「楓君。また、前みたいに、楓君の家まで歩く?」

「歩かないから。ホント風邪ひくから。雪も降ってるし」

「えー。歩いたら暖かくなるかもよ?」

「ホント、こんな中、歩いたら、次こそ、風邪ひくよ?」


なんで、宮町さん。こんなに、楽しそうなんだろうか。雪結構降ってきましたけど……。

まあ、人通りも少ないからか。目立つことなく。そのまま、手繋いで、菰野駅まで来ました。っか。宮町さん離す気がないのか。しっかり握られているのですが――。


今の時間が、20時20分を、過ぎたところ。次の電車は、20時28分発の、近鉄四日市行きの普通。駅のホームは、2人だけだった。


「雪止まないねー。ホントに積もるのかな?」

「積もられると、困るなー」

「どうして?」

「あ、明日じゃないんだけど……明後日には、実家帰らないとだから」

「あ、実家帰っちゃうんだ……」

「いや――その、親がね。冬休み長いから、自動車学校に、忙しくなる前に行っておけとか。少し前に、連絡してきてさ」

「あー、確かに、就職活動やら言い出したら、忙しくなるからね。それまでに取れるなら取った方がいいかも。それに、免許あると。どこか行くのも、行きやすくなるよね」

「金は出してやるから。さっさと帰ってきて、自動車学校行ってこい。みたいな感じでね。まあ、大変それは助かるから……甘えるつもりだけど」

「私もママに、相談してみようかなー冬休み長いもんね」


話していると、電車が入って来た。


「—―あの、宮町さん……その――なんで、まだ、手繋いでいるのでしょうか?」

「暖かいからね。ほら、空いてるから、座ろうよ」


流れのまま、電車に手を繋いだまま乗り込む。あれ?なんか俺の予想していたのと違う。駅までだと思っていたのだが――。


そのまま、座席に座る。今は、帰宅時間だからか。近鉄四日市方面に向かう電車は、空いていた。この車両も数人が乗っているだけだった。


「やっと、風から逃げれたね」

「まあ、で……まあ……いいのか」

「そうそう、細かいこと気にしないだよ。で、何の話してたっけ――?あっ、免許免許」


そこから数分だが、先ほどの話の続きをしたのだった。


20時37分。電車は伊勢川島駅に到着する。


「—―あー、着いちゃったね。せっかく楓君の手。暖かかったのに、楓君このまま乗ってく?」

「……いや、降りますよ?」

「だよね。じゃ、また、連絡するね」

「あ、うん。じゃ――気を付けて」


電車が、駅に着いて、俺が席を、立ち上がろうとすると、宮町さんの手が離れた。


「おやすみー」

「あ、うん」


宮町さんと別れて、電車から降りる。たまたまか。駅に降りたのは1人だったらしく。すごく静か。電車が発車し、ジョイント音が、響いていた。


そして、ずっと、握られていた手だけが、すごく冷たい風を、受けているように感じた。なんだろう、温度差?その部分だけ、風があたると、とても冷たく感じた。

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