第38話 年末詣 ~14時05分発初路線~

9時過ぎに、バスは、椿大神社つばきおおかみやしろ近くのバス停に、着いた。

今は、宮町さんとともに、本殿へと」向かって、歩いている。


「やっぱりそれなりに、人いるね」

「まあ、大晦日だし。これから、もっと増えるんだろうね。交通規制するのか。準備みたいなのもあるから」

「朝一に、して正解だったかな?」

「うん、多分。年明けしたら、こういうところって。テレビで、見るみたいに、お参りするだけで、何時間ってレベルになるんだよね。多分。伊勢とか、毎年すごいから」

「あー、だね。実家の方だと、熱田さん?かな。あそこもすごいらしいよ。まだ、年末年始に行ったことないけど、そういえば、椿大神社つばきおおかみやしろは、椿さんって、このあたりの人は言うのかな?さっき、バスで話している人たちいたから」

「そういえば、いたね。確かに、椿さんの方が言いやすいかも。親しみもあって」

「伊勢神宮も、お伊勢さんって言うよね」

「そうだね。うちの周りでは、そっちの方がよく聞くかな」


それから、鳥居をくぐると、やはり、こういう場所は、空気が変わるというのか。入った瞬間、何かが変わった気がする。それから、手水舎てみずやに寄り。この時期の水は、冷たかった。それから、砂利道をまっすぐ進んでいくと、本殿で、いいのだろうか。お参りするところに到着。偶然なのか。たまたまか、思ったよりは、人が並んでおらず。少し待っていると、順番が来た。


お参りの後は、宮町さんが、御朱印を書いてもらう。ということで、受付へ。ここの方が、お参りの時より時間がかかった気がする。本当に、今、御朱印って、やっている人多いんだな。と、改めて感じた。御朱印帳を預けて、書いたら呼ばれる。という形だったので、待っている間に、宮町さんと、お守り見たり、おみくじ引いてみたりとしてました。

それから、御朱印を書いてもらうと。これで終わり?と、思っていたが。宮町さん的には、ここからが、本命だったらしく。


「楓君。次は、椿岸神社つばきぎしじんじゃに行くよ」

「はい、って、それはどこ?」


どこかへ、また、移動するのかと思ったが。椿岸神社つばきぎしじんじゃと、言うのは。先ほどの、本殿から、少し移動したところにあった。同じ敷地内というのか。近かったです。


「宮町さん、ここは?」

「ここね、なんかパワースポットなんだって」


先ほどの、本殿よりかは、小さいところだが、何人か並んでいた。女性が多い気がしたが。こういう時に、いろいろ知っていると、よかったのだろうが。あいにく、勉強不足。宮町さんに、付いていく形で、お参りする。


「で、楓君、ここの横にね。かなえ滝。って、のがあるんだよ」

「そういえば、水の音するよね」

「えっと――こっちかな?」


椿岸神社つばきぎしじんじゃの横でいいのかな。そこには、小さな、でもちゃんとした滝があり。看板には、かなえ滝。と、書かれていた。宮町さん曰く。このかなえ滝を、スマホなどの待ち受けにしておくと。願いが叶うやら。と、なるほど、だから、女性が多かったのだろうか。ちなみに、宮町さんも撮影のため、数人が並んでいた列に、並んでました。


「やっぱり、実際に見ると違うね」

「そうだね。写真やテレビとは、全然違う感じだよね。にしても、みんな知ってるんだね。これ、もし1人で来てったら、こっちには来ないで、帰ってそう」

「私も、たまたま知ったんだけどね。でも、楓君が、付いてきてくれてよかった」

「そう?」

「うんうん、1人で来るより、2人の方がいいからね。あ、次はね」

「まだ、あるんだ」

「うん、今日は、振り回すよー」

「はははー」


それからは、また違うところに、お参りでも行くのかと思ったら。休憩でした。鳥居くぐり、少し歩くと、お土産などが、売っているところがあり。そこで、ちょっと休憩。宮町さんは、食べてみたかったのがあると、買っていたので、俺も同じものを買って食べてみたら、これが、なかなか美味しかった。このあたりのお餅?なのだろうか。いい味でした。


店を出ると、来た時より、さらに、人が増えてきた気がする。


「楓君……今日は、時間大丈夫?」

「うん、前にも言ったけど、実家帰らなくなったから、初の1人年越し検討してたくらいだから」

「なら、もう少し付き合ってね」

「次はどちらに……」

「バス移動します」

「はい」


と、バス停へと、移動したのだが――。


「あっ、行ったばっかりだ……」

「5分前だね。次は――って、2時間後?」

「忘れてたー。バスの時間、気にしてないと、いけないんだった……ちょっと、楽しくて忘れてた」

「えっと……どうしようか?」

「うーん、どうしようか――って、このバス停は何?」


と、同じところにもう1つバス停があった。別会社?が入ってきているのかと思ったが。市が運行?しているバスのようだった。


「あれ、こっちは、あと5分くらいで来るよ?えっと……あっ、平田町の駅行くに、行くみたい」

「なら、これでも、出れるね。って、宮町さんどこ目指してるの?」

「それは、着いてからのお楽しみです」

「今日、それ多いね」

「逃げられるかもだからね」

「……逃げないよ?って、ホント、どこ行くの?」


それから、無事バスが来たためとりあえず移動となった。

11時15分くらいにバスが来て――またバスに揺られること、しばらく。50分?1時間くらいだろうか。


朝は、近鉄四日市から来たが。今は、平田町駅と、いうところにやって来た。ここは、名古屋線ではなく。名古屋線の途中にある、伊勢若松いせわかまつ駅からの路線。駅数は多くない。大学のある。湯の山線みたいな感じ。この路線も、基本、普通のみしか走っていない。あ、訂正。確か、時刻表眺めている時に、1本だけ急行表示があった。平日朝のみ、急行が近鉄四日市発で、1本のみ走っている。


「次の電車は。何分かな?ごめんね。ちゃんと、見てなかったから、違う方、来ちゃって」

「いやいや、鈴鹿線は、乗ったことなかったから、ちょっとうれしい」

「そう?よかった。あ、あったあった。時刻表えっと……」

「今、12時半前……だから34分かな」

「うん、そうみたい。でも、楓君、お腹空かない?」

「うん、もう、お昼だからね。朝早かったし」

「通りの方にお店の看板あったから、食べて行こうよ」

「そうしようか」


ということで、12時34分の電車には乗らず。駅から少し、歩いたところに、チェーン店のお店があったので、そこでお昼を。


次に、平田町駅に戻って来たのは、13時45分頃。それから、14時05分発の伊勢若松行き普通電車に乗り。伊勢若松駅へ。そして、14時15分到着。と、ホント少しの乗車時間。そして、駅到着と、同時に、隣のホーム。名古屋線の名古屋行き急行も入ってきた。


「宮町さん。急行乗るの?」

「うんん、名古屋方面だけど、今日は、普通電車じゃないと、止まらないから」

「あ、うん。普通しか止まらないところ……」


伊勢若松駅14時17分発の名古屋行き急行は見送り。そのあとに来た、14時19分発の近鉄四日市行き普通に乗車。ちょっと、この時に、宮町さんが、どこに連れて行こうか、分かったのだが。

個人的には、久しぶりに、思い出した事があるので、ちょっと、窓の外を見ていた。

伊勢若松駅を出て少しすると、箕田みだ駅に着く。その箕田みだ駅を出て、少しすると、名古屋方面だと、左手。山側になるのだが、突然というのか、大きな木が見えてくる。長太なご大楠おおくす。と、言う名前を知ったのは、まだ最近だが、木の存在を、知ったのは、小学校の頃だったかと思う。親と、名古屋に出かけた際に、たまたま山側、西側の席に座っていて、この木を見たのが初めてだったと思う。突然1本だけドーン。と、田んぼ?畑?の真ん中に、木があったので、その時の俺には、衝撃的だったらしく。今でもその時の記憶はある。

まあ、その時の俺は、とにかくデカい木があった。と、いうことしか、言えなかったが。


この長太の大楠。樹齢1000年くらい。あるとか。ないとか。高さは、23メートルほどあるらしい。とにかくデカい。こっちに、来るときは、久しぶりに見れた。と、思っていたのだが。そのあと、そのうち近くで見たい。と、思ってはいたが、通過ばかり。で、いまだに来ることはなく。通る時は、気にするようにしても、四日市から、大阪伊勢方面乗ると、特急急行だと、結構気にしてないと、もう通過した後。と、いうことが、多かった。個人的には、名古屋方面の電車に乗っている時の方が見やすいのだが。帰る時の電車は、夜が多いので、こうやって、明るい時間に、気にしていて、見るのは久しぶり。今日は、普通電車なので、箕田駅。という合図があったので、ゆっくり見れた。

箕田駅を出て、少し、左側には、長太の大楠が見えてきた。相変わらず、デカい。


というか。見ることに集中し、隣の、宮町さんを放置。していることに、気が付き。隣の宮町さんを見ると……同じというのか。偶然か、一緒の方を見ていた。


「あの木すごいよね。1本だけ」

「あっ、うん。大きいよね。宮町さんも知ってたの?」

「……うん。結構前から知ってたよ。ずっと、前から」

「そうなんだ。宮町さん、愛知が、実家だけど、こっち来てたの?」

「この木が、あるって。言っていた人がいるんだー。で、私も見に来たんだよ。そしたら。ホント、大きくて、びっくりしたんだよね」

「ここ、知ってる人は、知ってるからね。電車使う人は、知ってるかな?俺は昔。小学生の頃に、見た時。周りに話したなー。でっかい木があったって。まあ、その頃は、周りに、相手にもしてもらえなかったけどね。」

「—―今はいるよ?」

「うん、ちゃんと、楓君の話聞く人が。ここに」


と。なぜか、とってもニコニコしている宮町さん。宮町さんも、誰かと、この木のこと話したかったのかな?と、思っていると、14時25分楠駅到着。やはり、なのだが。宮町さんは「楓君、この駅で降りるよ」と、いうので、付いていく。


「楓君は、楠駅は来たことある?」

「ないかな。今日は、初めての駅が多いよ」

「それは良かった。じゃ、行こうか」

「……一応聞くけど、どこへ?」

「もちろん、私の家だよ?」

「……ですよね。若松の駅で、普通に乗るって、言ったときに何となくわかってた」

「さすが、楓君」

「いや、なんというか」


それから、宮町さんのアパートは、駅を出てホント、すぐだった。5分もかからな買った。


「ここだよ」

「……予想より、大きい」

「そう?沙夜ちゃんも言ってたんだよね。大きくない?って」

「いや、大きいよ。うん」

「まあ、寒いし入って。入って」

「……おじゃまします」


と、流れで、宮町さんのお宅訪問。綺麗に片付いていて、って、玄関入って、すぐのドアが少し開いていたからわかったが。寝室がちゃんとある。多分その正面は、洗面所とか?で、進むと、奥にキッチンと、ソファー。いやいや、室内広っ。


「宮町さん」

「なに?」

「なんか、すごいね」

「楓君、沙夜ちゃんと同じ反応だね。この前、入ってすぐ、同じこと言ってたよ?」

「いやいや、広いからさ」

「まあ、それは、いいから、荷物置いて、くつろいで、朝から連れまわしたから」

「……で、俺は、なぜ連れてこられたのでしょうか」

「楓君と一緒に、年越し出来たらなー。って、思ったんだけど。ダメ?」

「それで、連行されたのか」

「連行は――してないと思うよ?」

「結構、今日は、秘密で、動いていた気がするけど」

「だって、泊まりに来て、って言ったら楓君。来てくれない気がして」

「いや、それは……うん……泊まりは――ね」

「でしょ、だから連行。あ、連行になってたね」

「まあ、、、予定ないし、1人でだったから。お誘いは嬉しいけど――」

「ダメかな?1人寂しいから――あっ。じゃ、覚えてる?」

「—―何を?」

「ご褒美」


宮町さんに言われて少し考える俺――するとすぐに朝の事が頭に浮かんだ。


「……あー。朝だっけ?言ってたね」

「年越し一緒に、してくれると、もれなく、年越しそばと、おせち料理が食べられます」


ピースサインをする宮町さん。いや、かわいいです。はい。って、おせち食べれるの?今年は、食べれないかな。と、思っていたのだが。


「……マジ?」

「うんうん。年越しそばは、スーパーで買ったんだけど、おせちは、もう冷蔵庫で、スタンバイしてるよ?」

「えっと――買ったの?」

「パパがね。冷凍のなんだけどね。送ってくれたから、解凍中」

「……それは、俺、一緒に食べてもいいものなのだろうか――」

「いいのいいの、1人じゃ、なんか寂しいから。あ、でも、まず、夜ご飯考えないとね。さすがに、まだおせちは……凍ってると思うから。お蕎麦は、夜食べれるでしょ」

「これは……帰らせてもらえない?」

「うんうん。ゆっくりしてってよ。楓君も1人で、年越しって言ってたんだから」


と、そんな流れに、なったが。ここで、俺が1つ提案。

一応、俺も年末年始は、店も閉まるだろうと、家に買っていたものが少しある。

で、何も持っていない状態で、連行されてきたので「一度家帰っていい?」と、聞いてみると、何度か「ちゃんと、帰ってきてくれる?」とか、言われたが、「帰ってくるから」と、こちらも、何度かいい。やっと、認めてもらった。


「じゃ、私はちょっと、準備してるから、帰ってこないと怒るよ?」

「だから、帰ってくるから」

「まあ、楓君は、嘘つかないからねー」

「なら、すんなり認めてくれれば……」

「なんか。このやりとり楽しくて」

「—―ははは……じゃ、一時帰宅します」

「うん、気を付けてね」


と、一度宮町さんところから撤収。


宮町さん宅から楠駅へ。

15時10分の近鉄四日市行き普通に乗り――。

近鉄四日市駅には15時23分着。湯の山温泉行きの普通に乗り換え。近鉄四日市駅発が15時29分。結構スムーズに乗り換えが出来た。

そして、伊勢川島駅には15時38分着。


ここからは、バタバタと家に戻り――。

とりあえず、カバンに――いるだろうというもの詰める。戸締りする。と、タイムアタックでもしているかのような。忙しさだった。

そして再度家を出る。

寒いはずなんだが、これだけ動いていると寒さも忘れる感じだった。

伊勢川島駅に戻り。16時16分発の普通近鉄四日市行きに乗り――。

また近鉄四日市駅へ。到着は16時25分。

ここまではスムーズだったが……ここで乗り換えに15分ほど間が空いたので……駅中のお店で少しお土産?というのか。

まあ、呼んでもらったみたいな感じなので――お菓子だけ買い。

近鉄四日市駅16時40分発の津新町行き普通電車に乗り。—―16時51分。


楠駅にまた俺は戻って来たのだった「なんで、こんなに、忙しいこと、してるんだろう……年末に――」と、思いつつ。宮町さん宅を再度訪問したのだった。

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