第13話 土曜日の大学 ~11時28分着交渉~

早いことで、数か月の大学生活が過ぎた。相変わらずだが、友人3名を維持している俺。増えることも減ることもなく。維持している。


大学から入学時に渡された年間の予定表を見ると、今月は休みに講義日というのもなく。

いや、そもそも土日以外に祝日がない。

で、これといった行事もない為か。中旬くらいにオープンキャンパス。という言葉だけがあった。


そういえば、1年前オープンキャンパス来たな。と。

あの時は、もしかしたらいるかもしれない。というところだったが。

無事この場所にいる。

まあ、その話は別にいいか。

そんなことより考えないといけないことがあった。

何をしているかといえば――。


今は金曜日の昼休み。いつもなら、やっと明日休みだー。となっている雰囲気なのだが今日は違う。

いつもの4人。柊と、斎宮さん、宮町さんは変わらないが、いつもと違うところは、4人で年間予定表を見ていた。


なんで今頃年間の予定表を見ているかといえば、


「あはは……ピンチかも、助けてー」


言い出したのは、斎宮さん。だったらしい。

らしい。というのは、柊経由で聞いたから。


大学は出欠を毎回とるところもあれば、とらない講義もある。

で、今何がピンチかというと。


「沙夜も馬鹿だな。出欠取ってること知らなかったって」

「だってー。絶対初めに言ってないって、あんな感想文みたいなのが出欠とか……」


斎宮さんが1人で受けている講義。出欠取ってないんだ。と、思っていたら。

授業の最初に、感想文?質問書?みたいな……紙切れ。と言ったら悪いが。小さな紙を先生が配り。終了後に出してください。みたいな感じで言われていたらしいが。斎宮さん。それは、質問。意見。わからないことがあったら出すみたいな紙と勘違いしていたらしく。


ちなみに、俺の受けている講義でも1つ。そのような紙を使っている先生がいて、学生番号を書く欄があって、確かその講義もその紙で、出欠確認に使っているとか言っているのがあり。とりあえず毎回終了後に何かは書いて出している。

ちなみに、最新式というのか。講義中に学生証?カードタイプなのだが、それを読み込ませる機械を回し。出欠確認している先生も居る。あれは初めて見たとき、なんだこれだったな。レジでピッとしてもらうというか。電子マネーで支払いするときの機械というか。

いやいや、さっきから話が脱線するが、本題。はい。本題話します。


その出席やらやらのことで、斎宮さんが。


「今まで出してないよ……どうしよう」


昨日の講義後に知ったらしく。柊に相談したらしい。

が、2人ではいい解決策がなく。翌日昼休み。つまり今。俺と宮町さんにも相談がやってきたということ。


とりあえず講義の回数を確認……という話になり。

そしたら宮町さんが、年間の表持っていると出してくれたので、それを見ていたところ。


「回数的には、微妙だな……何とかなりそうな気もするが」


柊が表を見ながらいう。出席といっても1回休んだらアウトというのはない。全講義中の何回か。で試験の受験資格がなくなるみたいなことらしい。


「当日ちゃんと講義出ていた。その場に居たっていう証拠があればいいんだろうけど……」

横から、宮町さんも表を見ながら言う。

「私皆勤だよ?サボりなしだよ?これホント。海織ちゃんー。この講義ちゃんと出てるんだから。1限の時間頑張って行ったのがー。ありえないー」

「沙夜。やっぱり先生に相談言ったらどうだ?」


柊は先生に相談行くべき。という判断らしいが。斎宮さんは、先ほどのことみたいに、実は出てなかった。とか言われるんじゃないかと思っているらしい。

それに講義室の講義だと人数も多く。先生とのやり取りなどほぼない。

初対面になる先生に、、、たとえ居ました言っても先生の記憶に残っている可能性は低い。


「ノートと、これまでの紙持ってくだけで……大丈夫かな。ねー。海織ちゃんどう思う?」

「ど、どうなんだろう。でも遅いより。早めに相談行った方がいいんじゃないかな?」

「ほらみろ沙夜。俺と同じだろ。楓もそうだろ?まず相談だよな?」

「うーん。まあ、説明はいるだろうけど。早い方がいい気はするね。もう何回だっけ?5回6回は講義あったから」

「……ノートと、紙で大丈夫かなー……めっちゃ心配なんだけど……」


その時にちょうど昼休みが終わる時間に、講義があるため。各自講義室へ急ぐ。


「沙夜ちゃん大丈夫かな?」

「うん。まあ、でもまず先生のところ行ってみないとじゃないかな?やっぱり」


相変わらずいうのか。宮町さんとは同じ講義なので2人小走りで講義室へ急ぐ。

それから、講義が終わった後。しばらくして、宮町さんと帰っている時に、


「沙夜ちゃんから、さっき白塚君と先生のところ行ったけど、先生、留守だったって」

「ありゃ。まあ毎日先生いるとは限らないからね。あ、講義の予定表見たら大学にいる日、わかるんじゃないかな?」

「あ、そうだね、沙夜ちゃんに伝えとく」


それから、駅で電車を待っている時に返事が来たみたいだった。

調べてもう1回行ってみるやらの返事があったらしい。

ふとその時。駅の改札でICカードのチャージをしている人を見かけた。ICカード……。


「宮町さん」

「うん?どうしたの楓君?」

「斎宮さんってICカード使ってるかな?」

「どうして……?えっとね……確か……あ、タッチして使ってたから多分、そうじゃないかな?そういえば、楓君は、普通の磁気定期券だよね?」

「あ、うん。でさ。ふと思ったんだけど、ICカードって利用履歴とかわかるんじゃなかったっけ?何時何分に改札入ったとか」

「あー。わかるよ。買い物とかでいくら使ったとかあとから……あー!そうか。1限の講義って沙夜ちゃん言ってたから。ちゃんと1限に来ていたなら朝にこの駅の改札は通ったっていう証明ができる」

「そう、講義室にいた証明にはならないけど、この駅には居たって、証明はできるんじゃないかなーって。それが毎週同じ時間なら。このあたりで朝から遊んでた。は考えにくいだろうし。山行ってたらわからないけど……ちょっとした証拠みたいに……は無理かな?」


話していると、宮町さんはスマホで何かを調べていた。そして、


「あー、直近の数十件分だけみたい」

「あ、そうなんだ。じゃあ全部は無理か」

「うん、私の持っている定期券で調べてみたけど」

「じゃあ、ダメかー。毎日使ってると、数十件とかすぐだよね。2か月くらい残っていれば、いいんだけど」


ふと浮かんだ俺の考えは無意味だったようだ。と、なるはずだったのだが。

その日の夜。


♪♪~


「……斎宮さん?」


寝るか。と思っていた時間に斎宮さんから電話が来た。

何かと思えば。


「楓くん!ナイスだよ!」

「……斎宮さん。一応夜だよ?」

「あ、ごめんごめん。じゃなくて、利用履歴」

「うん?利用履歴?」

「楓くんでしょ?気が付いたの」

「えっと、もしかしてICカードの利用履歴やらの話してる?」

「そうそう、さっきまでね。海織ちゃんと電話してたら、その話してくれて、私海織ちゃんの使っているICカード定期券とは違って見れるの。半年分くらい」

「……へっ?」

「だから、これ印刷して、ちゃんと駅までは来てました。の証拠1つ増えたよー」

「ま、まあ、使えるか微妙だけどね」

「いやいや、ノートと紙だけよりはいいかなーって。で――もう1つ楓くんにお願いがあるんだけど」

「うん?」

「家に印刷機ある?」

「えっと……あるよ?」

「おー、じゃあ明日の朝。楓くんの家行っていい?」

「……はい!?」


翌日午前中。


「おー、これが、海織ちゃんが滞在していたお部屋。綺麗にしてるね楓くん」


なぜか、この家に来た2人目のお客さんも女の子。

今までではありえないのだが。なんでこうなっているのか。


「滞在って、運転見合わせの時間だけだよ」

「それからは?」

「いや、来てないけど」

「あれー、おかしいな」

「おかしい……?なにが?」

「いやいや。あ、印刷機お借りします」

「あ、うん。一応パソコンとつないであるよ」


本当にやってきた斎宮さんを家に案内してきたところ。

駅まで行けるけど、そこからわからない。と言われたので、電車の着く時間に駅まで迎えに行った。


本当は、柊が、印刷機持っているらしいが。「こういう時に限って連絡つかないー。もう」と、先ほど聞いた。いや、まあ連絡はあれからついたらしいが。「今日は朝からサークルメンバーで遊びに行く予定なってるんだけど……」と、言われたらしく。で、昨日言った通りうちに来ましたと。

ちょっと……斎宮さん怒ってましたよ?柊よ。


「えっと、会員ところに入って……」


部屋で斎宮さんがパソコンをカタカタ。

なんかレアな光景。


「でた。これこれ」


と、見せてもらうと。確かに1か月ごとにまとめられているのか。ずらーっと、改札を通った時間やらが出ていた。


「4月からの全部。印刷いきまーす」


印刷開始。家のだから早くはないが、まあ普段レポート印刷くらいしか使わないから機械は喜んでるか。それから、該当の時間がわかりやすいようにと蛍光ペンで印して。俺が。めっちゃ使われている俺。

さらには、


「楓くん今から時間ある?できれば大学付いてきてよ」

「はい?」

「1人じゃ、なんか不安だし。先生の部屋まで一緒に……と。柊はこういう時に使えないんだからーもう。ダメかな?」


断る理由もなかったので、うなずいたら。そのまま連れ出されて、土曜日の大学に。

そういや……前は柊と一緒に行ったとか言ってたか。


ちなみに、なぜ斎宮さんが急いでいたか。

理由。担当の先生が土曜日の午前中は講義をもっていたから。

今日ならいるんじゃないか。と、いうことらしい。みんなが早く行った方がいい。と、言ったから結構気にしていたみたいだ。

間的には11時微妙かもしれないが。


駅に行くとちょうど……11時10分の電車乗れて、11時28分到着。

40分過ぎには大学の講義棟近くにある……なんていうんだろう。教授室?というのか。先生らの各部屋があるのでそこに着いた。


「えっと、確かね階段上って、ずーっと、奥の部屋」


何気に数か月大学に来ていたが。この建物入るのは初めてだった。

明るい場所ではなく。薄暗い廊下というのか。あと静か。土曜日だからだろうか。

先生たちも少ないのか。と、思っていると着いたらしい。


「あ、電気付いてる」

「じゃ……この辺にいるから」

「うん。頑張ってきます」


斎宮さん2つくらい先の部屋に――ノックしたらすぐにドア開けて入っていったので、先生はいたらしい。


俺。土曜日に何してるんだろうな。と、思っていると――。


「失礼しました」


斎宮さんの声がした。思うと、トタトタ。と、いや。あれはスキップ?

すっきりしましたというのが、聞かなくてもわかるくらい。笑顔で斎宮さんは戻ってきた。


土曜日ということもあり。

学食が空いていた。

何回かは来たことはあるのだが。まあ、ほぼいつものベンチで宮町さんといるか。4人でいるかなのだが。稀に来たことはある。


窓際の席に斎宮さんと座り。ワンコインランチを食べていた。揚げ物とかなんか久しぶり。そして、美味いしそれなりに量もありうれしい。


ちなみに結果だが。

あっさりと。問題なく大丈夫だったらしい。むしろ――。


「いやー。まさかあんなに優しい先生とは思わなかったよ。心配して損したー」

「でも、よかったんじゃない?ちゃんとわかってくれて」

「うんうん。なんかお菓子までもらったし」


斎宮さんは、机にお饅頭を置いている。それは、ちょうど訪問した時に先生が食べていたものらしく。1つくれたのだとか。


「むしろ笑われちゃったよ。キミ真面目だねって」

「まあ、ノートと紙以外に定期券の利用履歴持ってくる生徒だからね」

「ちなみに、楓くんの意見ですよ?覚えてます?」

「ですね。はい」

「でも、試験はしっかりしてね。言われたちゃったから。頑張らないと。こんだけ騒いで、試験落ちましたー。は嫌だからね」


問題解決し。まあ美味しい学食に休日ありつけたのはいいことか。


「あっ」

「どうしたの?斎宮さん」

「海織ちゃんに、怒られるかな?」

「……な、なんで?」

「いやさ。休みの日に、楓くん無言で借りたから」

「いやいや。なんでそこで宮町さん?」

「いやー、あれは怖いんですよ。うんうん。海織ちゃんは」

「……どういうことそれ」

「楓くんにはわからないかなー?後でメールしとこっと」


なんか、気になること言われたが。

まあ無事に、土曜日は終わっていきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る