第四話・カッパじゃありません!カメなんです!

特殊処理的ロボット怪獣『メカカナ』登場①


 とある、町の地下──ブロンズ像のような宇宙人『ブロンズ星人』の秘密基地があった。

 ヒューマンタイプで、全身プロンズ色をしたブロンズ星人たちの股間は、マネキン人形のようにノッペリしている。

 秘密基地には、広い格納庫があり。

 そこには、裸っほい格好の巨大阪名華奈が、鉄骨の囲いブリッジの中に立っていた。

 巨大裸体ヒロインの華奈を眺めていたブロンズ星人の一人が、隣に立っていたブロンズ星人に言った。

「どうだ本物と見分けがつかないだろう……これなら、アポな地球人を楽に欺けるな」

「はぁ? これで欺け……ますかね?」

 聞かれたブロンズ星人は、キョトンとした顔で目の前に立つ、巨大サカナカナを眺める。


 偽物の華奈は、目尻が吊り上がっていた。

 腕と足に金属のリングがつけられていた。

 頬にイナズマのような模様があった。

 前頭部にカッパの皿のような、カバーがとりつけられていた。

 背中に甲羅を背負っていた。

 手足の指の間に水掻きがあった。


 ブロンズ星人たちが、ニセモノの『メカカナ』を眺めていると、二足歩行をする尻尾が二つに分かれた眼帯アイパッチネコが、白衣コート姿で歩いてきて、ブロンズ星人たちに訊ねた。

「どうだ、メカカナの様子は?」

「問題ありません、体調も良好です」

 ネコマタ星人の『ニャゴ博士』が、メカカナにも訊ねる。

「どんな気分かニャ……阪名華奈から採取した細胞をクローン培養して、特殊処置を施したロボット怪獣『メカカナ』………熱はないかニャ?」

 メカカナの額に向かって、ドライヤー型をした巨大な非接触型の体温計が、機械アームで向けられメカカナの体温が測定される。

「熱はないニャ……顔色もいいみたいだニャ、特殊処理的ロボット怪獣『メカカナ』」

 ブロンズ星人の一人がニャゴ博士に質問する。

「あのぅ、ニャゴ博士……わざわざ、特殊処置的なんて言い方しなくても、クローン体を改造したサイボーグ怪獣でも」

 途端にニャゴ博士の体躯がブロンズ星人たちの二倍に膨れ上がり、見下ろすニャゴ博士は獰猛なネコ型生物の姿で牙が生えた口を開けて言った。

「それ違うから、サイボーグっ呼び方。いろいろと問題あるから………これは、特殊処置的ロボット怪獣だから」

 変貌したニャゴ博士の姿にビビる、ブロンズ星人たち。

「わっ、わかりました! ニャゴ博士がおっしゃる通り。これは、特殊処理的ロボット怪獣です!」

 ブロンズ星人の一人が小声でボソッと。

「ロボット怪獣なら、なんで巨大な排泄用のトイレやシャワールームまでブロンズ星人に作らせたんだよ」

 呟いたその言葉をニャゴ博士は聞き流す。


「わかれば、いいニャ」

 ニャゴ博士の体が元のサイズにもどると、立ちっぱなしのメカカナが言った。

「あのぅ、博士そろそろ横になってもいいですか? ずっと立ちっぱなしで疲れちゃって」

「そうだニャ、立ちっぱなしは疲れるニャ、横になってもいいぞ」

 メカカナが巨体を横臥させると、また呟きブロンズ星人が。

「ロボット怪獣が疲れるかよ」

 の、呟きもニャゴ博士は無視する。

 横になったメカカナが、床に置いてあった。

ファストフード店でシェイクを注文すると出でくるカップに刺した、途中から蛇腹で曲がるストロー〔フレックスストロー〕を咥えたメカカナは、巨大カップの中に入っている飲み物を飲んでから言った

「ニャゴ博士に、少しお聞きしたコトがあるので、ブロンズ星人の方々はロボット倉庫から、退出してもらえませんか?」

 ブロンズ星人が、不満気味な声でメカカナに訊ねる。

「我々がいたらダメなのか? おまえは我々、ブロンズ星人が作り出したサイボ……」

 ニャゴ博士から、ギョロと睨まれたブロンズ星人が、言いかけた言葉を訂正する。

「もとい、特殊処理的ロボット怪獣だぞ。我々は、おまえの所有者だぞ!」

「あたしを作ったのはニャゴ博士ですから、ニャゴ博士がお父さんですから……退出お願いします、あと二十四時間の監視カメラとか。倉庫内の録音とかもやめてください………女の子のブライベートな時間もありますから」


 ブロンズ星人たちの姿が見えなくなると、ニャゴ博士がメカカナに言った。

「聞きたいコトってにゃんだニャン」

「あたしの背中にどうして、甲羅がついているんですか?」

「弱点の背中側からの攻撃を防ぐためだニャ、あと膝のバランスが悪かったので甲羅にはバランサーも入っているニャ」

「じゃあ、額から前頭部についている。このカバーみたいなのは?」

「それも、頭部の弱点を補う強化パーツにゃ」

「手足の指の間に、水掻きみたいなのありますけれど」

「水中を泳ぐために必要ニャ」

 メカカナが横臥した上体を起こして言った。

「これって………ほぼ、カッパですね」

「ちがうニャ、カメだニャ」

「はぁ、改造のコンセプトはカメですか」

「改造なんてしてないニャ! メカカナは、特殊処理的なロボット怪獣ニャ! その証拠に、足の裏から炎を噴射して空飛ぶニャン!

 ブロンズ星人の連中は『メカカナの両足を体に収納して、収納した穴から炎を噴射して空を』とか

『体をバラバラのパーツに分離させて空を』なんて、出した提案を全部却下して、メカカナは足の裏から炎噴射で飛行にしたニャン」

「あたしの体に、そんな飛行方法案もあったんですか?」

 メカカナは、手足や頭が体の中に収納されて、胴体がグルグル回転しながら空を飛んでいる姿や。

 体がバラバラになって、頭部や腕がついた胸部が空を飛んでいく姿を想像した。


 ニャゴ博士が言った。

「他に質問したいコトはないかニャ?」

 メカカナが最後の質問をする。

「あたし、いつになったら地下倉庫から出撃して、町を破壊できるんですか?」

 と………。

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