試作
狐ドラゴン
朽ちるもの
———
1939年9月 帝政アーネンラント ベルリン
八気筒ガソリンエンジンと
砲塔側面に描かれた鉄十字のマークは
帝政アーネンラントの所属部隊の印だ
砲塔の上に見える燃えるような紅髪の乙女は、無線機を片手に切羽詰まった様子で指示を飛ばしている。
「全小隊へ、住民の避難までの時間稼ぎが最優先目標ってことを忘れないで!
無理な交戦は絶対に禁止っ!少しでも情報を持ち帰らないと…!」
「しょ…小隊から大隊長へ!中隊長車の76㎜砲以下の砲撃がすべて跳ね返され…というより目標の前に何か壁の―ひあぁっ!!」
「巡洋戦車以下の護衛戦車じゃ全く装甲が足りてません!!撃破されていく一方です!!」
「リーセ大尉!」
損耗率が高すぎる…!敵の情報も、打開策もない中でどうやって時間を稼げばいい…⁉
「リーセ!!」
「へ⁉」
不意に目の前を巨大な鉄塊が遮る。
リーセの乗る指揮官用の戦車と擦れ大きな金属音がなると同時に
全高3mはある鉄塊、戦艦級戦車に直撃した青い閃光が装甲に阻まれて屈折し
側面にあった住居を溶解させ、それ以外の部分がガラガラと崩れ落ちる。
即座に戦艦級戦車に搭載された複数の砲が反撃に出るが、2mほどの大きさ、四足歩行で動く機械のような敵を仕留めたのは122mm砲のきわめて破壊的な一撃だった。
「大尉!戦場のど真ん中でボーっとしてもらっては困る!!」
「ご、ごめん!いやありがとう?エンリル!」
「大尉が配下に謝るなんてまったく、士官学校時代から変わってないな…」
目つきが良いとは言えないような彼女は
やれやれとでもいうように、軍帽に指を添えて首を振り
長髪をさっと揺らすと戦車側面を見つめた
「…にしてもこいつは全くどういう理屈だ?あの閃光が当たった部分の装甲が融解しているぞ。」
一週間前。南方の砂漠地方で突如として発生した謎の生命体、
人類が初めて遭遇した人類以外の強敵は反攻の余地さえ与えなかった。
それが発する青い閃光はことごとく人や兵器を溶かしてしまい、
彼らが現れた土地はみな一様に腐ってしまう。
突如として現れたそれは、世界各地にも出現し同時多発的に進攻を始めた。
現地の人々は古い共通語と神話からその生命体を
試作 狐ドラゴン @FoxDragon
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