美し過ぎる妹がただ憎かった(姉の末路)

青空一夏@書籍発売中

第1話 プロローグ





侯爵である綾小路家の桔梗は美しかったので皇后から皇太子妃候補にと望まれていた。ところが、もっと後に生まれた妹がさらに美しく光り輝くようだったので皇后はその妹の方を皇太子妃候補にした。妹の名前は百合。賢く素直な優しい子に育ったので皇太子妃に確定した。しかし、その翌日に、事故は起こった。百合10歳のときだった。すさまじい泣き声が暖炉のある部屋からするので、みながそこに行くと、百合の手が焼けただれていたのだった。


「なぜ、こんなことが起こった?侍女はなにをしていたのだ?」


「あ、あの、桔梗お嬢様に用をいいつけられておりまして‥‥」


「なんだと?お前は百合の専属侍女だぞ?百合の側を一分たりとも離れてはいけないだろう?」


「お父様、私がいけないのです。百合が暖炉の火かき棒を振り回して遊んでいたので止めようとしたら‥‥」


「な、なんだと?これはどう見ても火かき棒のようなものでは‥‥」


父親が桔梗を見ると桔梗は薄く笑いながら、しれっとした表情をしていた。わざとしたことは明白だった。しかし、そんなことは公言できなかった。急いで、そこに転がっていた焼きごてを隠した。


ー百合は前日に王太子妃に確定している。もう候補ではなく王族の一員扱いだ。そんな人物にわざと桔梗が火傷を負わせたとなれば、一族郎党斬首となるのがこの国の法律だ。ここは、事故で済ますしかない‥‥





「申し訳ございません。少し目を離したすきに自分で‥‥」


父親は皇后に平身低頭してお詫びをした。皇后は大層、残念がったが事故ならば仕方がないとおっしゃった。


百合は自分の不注意でケガしたことにされた。そして、桔梗が代わりに皇太子妃になった。{皇太子妃に傷があってはならない}と、そのような法律があったからだ。


「百合?その醜い手の傷だと、低位の貴族にもお嫁に行けないわよ?私の専属侍女にしてあげるから、私の代わりに勉強なさい!」


「はい、ありがとうございます」


こうして、光り輝くように美しい百合は、手の醜い火傷痕のために姉の専属侍女になるのだった。








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