第6話 美海《ミュウ》

 そうだ。

 幼馴染みの高原 美海ミュウだ。


「まッ、まさか……」

 目の前のワイルドビーナスが……。

 にわかには信じられない。



 小さい時、一緒に遊んでいた幼馴染みの高原 美海ミュウなのか。


 僕の家にも毎日のように遊びに来ていた。



 言われてみれば確かに、あの頃の面影がある。

 仔猫のようにクリッとした大きな瞳が印象的だ。


 

 小学校五年生の時、家庭の事情で美海は、母方の実家のある北海道へ引っ越す事になった。



 その前の晩、彼女は僕の家にやって来た。




 あの頃の美海はショートカットの似合う男の子のような美少女だった。



 もちろん黒髪で、可愛らしくて僕は彼女に憧れていた。


 初恋と言っても過言ではない。

 



 あの時……。



 僕と美海ミュウは近くの『海が見える公園』で別れの挨拶をした。



 

『ねぇ、アユム君…… 美海ミュウの事、絶対に忘れないでねェ』

 彼女は大きな瞳を潤ませた。



『うン……、もちろん、美海ミュウちゃんのことを忘れるはずないだろォ~』

 初恋の女の子だ。




 絶対、忘れるはずがない。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る