ゴールデンウィーク feat.ジュン

第19話人手が足りない!

ゴールデンウィーク初日。


店長になって初の大型連休だ。

アキラさんは覚悟してね!キツいよー!と言っていたが。

うん。日曜日より客足多いかも。


モール内はバーゲンもありそれは賑わっていた。

たこ焼き、焼いても焼いても焼いても・・・次々に無くなっていくやん!


そんな直ぐに焼けるもんでも無いから時間もかかるし。


フードコートは満席。


SSSバーガーの行列はうちの店の近く迄出来ていた。

列の並びを整理して誘導しているアキラさんと目が合う。

お互い苦笑い。

きついねー?って言ってる。俺も頷いた。


大変だけどアキラさんの顔見たらちょっと元気出た!


昼は戦場・・。

これが約1週間続くのか。


人手が足りん!!後2人くらい居たら楽だろうな。


「オーダー入りまーす。たこ焼き・焼きそばセット2。」

「はーい!」

レジもバタバタだが作り手はもっとキツい。

セット注文が多いなぁ。


フードコートが満席になると持ち帰りが増える。

持ち帰りになるとパック詰めと袋詰めでまた大変。


やっぱり最低あと1人居るな。明日からのスケジュール見直そう。


漸く落ち着いた14時頃に休憩出しを開始。勿論、交代で。


俺も早く休みたい。


そして16時に俺の休憩タイム。


座りたーい!!!

そんな時、店の電話が鳴った。


「もしもし、お疲れ様です。事務所従業員専門部の中山です。」

モールの社員の人からだった。


「お疲れ様です。たこ焼き屋店長、大濠です。」


「御意見が届いているので事務所に取りに来て貰えませんか?」

御意見?ん?何それと思ったがとりあえず行くと返事した。


タバコ吸いたいしお腹空いたのに。


フラフラと店を出る。


隣はまだそこそこの列が出来ていてアキラさんは忙しそうだった。


先に飯にしよ。タバコ吸いに行く時に事務所行こ。

そう思いSSSバーガーに並ぶ。


待ち時間は少しだけだった。流石、こういう所のシステムが凄い。


注文して受け取る時にアキラさんから渡された。

「お疲れ様。だいぶお疲れの様だね。大丈夫?」

優しい言葉が嬉しい。

「まじでキツかったよ。何か今から事務所に行かなきゃならないし。」

御意見?の話をするとアキラさんの顔は苦笑い。


「それ、クレームの意見かも。」

「え?そうなんだ?」

あまりゆっくり話せずアキラさんは頑張って!と言って送り出してくれた。


クレームか。何やらかした?


社員食堂でハンバーガーを頬張り考える。


やっぱり今日は時間かかり過ぎたかな。待ち時間長いとかだろうなあ。


うーん。


仕方ない。御意見貰いに行くか。


1本タバコを吸って事務所へ向かった。


「すみません。たこ焼き屋です。御意見の件で。」

事務所にはモールの制服を着た事務員さん達が数名居た。


「あー。はいはい。これです。何か身に覚えあります?」

事務員さんが渡した紙を読む。



『持ち帰りで注文して直ぐに駐車場で食べたのに冷めてて不味かった。』


は???

おいおいずっと連チャンで焼いてて冷めた、たこ焼き何か全然無かったぞ?


「いや、身に覚え無いですね。今日は常に焼きたてでしたし。」

少し不満げに事務員さんに言うと


「ですよね。でも、此処に謝罪文を書いて下さい。それが決まりなんですよ。」

「あっ・・。はい。解りました。」


少々不満はあったが営業の時も頭を下げてばかりだったし。

意に沿わなくても謝る事は出来る。


それにしても連絡先も名前も無しか。


本当にどうにかして欲しいクレームは普通は記入する筈だ。


誰かも解らないし何を買った、何時頃買ったかも解らない。


でも、謝罪文をその場で悩みながら記入した。


やっぱり待たせ過ぎで腹も立ったのかな。

それは事実だし。


小さな不満は気に入らない事を更に拍車をかけて大きなクレームになる。


閉店までの時間と明日の昼間は本当に気をつけないと。


そう思いながら事務所を出るとアキラさん・・・。


「うちもだよ。御意見。」

アキラさんは大きな溜息。俺がハンバーガー食べてる時に電話があったそうだ。


忙しい中、抜け出して来たらしい。


「すみません。SSSバーガーです。御意見を貰いに来ました。」


まだ休憩時間あるしその場に残る事にした。


御意見を見たアキラさんの顔は不快そうだった。


「有り得ない・・・。」

そう呟いたので俺はアキラさんの横から御意見書を覗いた。


『対応最悪!!不愉快!!!』

えー?何か面倒な御意見だ。それにまた名前も無いし連絡先も無い。


「今日のメンツでこれは無いな。」

アキラさんがムスッとしている。


「そうなの?」

聞くとそれは仕事の出来るサービス業の鏡みたいなメンバーだったらしい。

しかも、お客様の様子は逐一観察しているからね?とアキラさんはそう言った。

「新人は応対させて無いしなあ。まあ、謝罪書くけどね。」

アキラさんは軽く溜息を付いてそう言った。

俺もさっきの御意見は納得いってない。


これがモールのキツい所なんだなあ。


「戻ろうか?」

「そうだね。」


疲れたねー。と2人で従業員通路を歩く。

「疲れたけど元気出るな。」

「うん。俺も。」

従業員通路には監視カメラもあるから手も繋げないけど。


並んで時々触れる手が少しくすぐったくて癒された。

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