第70話 これが幸福という奴か!
俺はポーションを一気に飲む。
うわっ!?
まっずい……これは薬だな……体にかける方がいいなこれ……確かに回復はしたが────進んで飲みたい物じゃない。
俺は闘気を纏う──
魔技は消耗が激しいので使わない。というか残量的にキツい!
それに敵はゴブリン、オーク、ウルフとかその辺にいそうな魔物ばかりだしな。
今の俺にはそこまで危険はない相手のはず──油断しなければ。
…………ただ……武器ないんだよな……拳で殴るのか……嫌だな……。
こういう時は────魔法だな。
と言っても乱発したら直ぐに尽きるからなぁ……ってもう魔法撃ってる暇もないな。
「いっくぞぉぉぉぉっ!」
ティナが気合を入れた一撃を先頭集団に大斧をフルスイングする。
────あら不思議……一瞬でミンチの出来上がり。今夜はハンバーグだね!
────って食えるか! 慣れたと思ったけど、グロすぎて気持ち悪くなってきた。
それに、ティナを中心に暴風が巻き起こっているかのようにミンチが量産されている。
あの中に入って大丈夫なのだろうか?
俺ミンチにならないよね?
よくラノベとかでいきなり連携とりながら戦ってるけど、普通素人が直ぐに連携とかとれないよね!?
良し、あの端っこの奴にしよう。
暴風地点から離れた場所にいる魔物目掛けて駆け出す。
俺の渾身の右ストレートがオークの顔面に接触し────
オークの顔面は風船が破裂するかのように爆発する。
マジか!?
俺こんなに強くなってたんだな……予想以上だな。
一応がむしゃらとはいえ、ワイバーン倒してるんだけど実感なかったわ……。
爆散した血肉が呆けている俺の目に入る。
「────目がぁぁぁっ!? 痛っ!?」
視界が塞がれた俺に鈍い痛みが背中に走る。
何かで殴られたようだ。
殴られた方向に回し蹴りをして、攻撃して来た奴を吹き飛ばす。
血糊で全く見えないぞ!?
見えないから闘気を目に込めても意味がない!
というか──記憶の流入から察するに────こいつら大将の誘導で来てるじゃないか!?
なんで、また石とか投げて挑発してるんですかね!?
って、痛いなっ! これ、タコ殴りにされてるんじゃね!?
闘気なかったら死んでるよ!
「痛いわっ!」
俺は魔法の風刃を攻撃して来た方向に向けて放つ。
魔物の声がそこらから聞こえて来ているから、手傷ぐらい負わせているだろう。
こんなんどないせーと!?
気配だ──気配を感じろ……集中…………集中…………。
ドコッバコッ
「痛い──って言ってんだろぉぉっ!」
今度は雷魔法で無差別に放電する。
気配なんてわかるかぁぁぁっ!
(感じろ!)
大将の声が聞こえた気がした。
なんで聞こえてくるんだよ!? 何かの魔法か!?
それより、大将が引き起こしたんだろ!?
感じろ!
────じゃねーよっ!
感じるも何も、何をどうすりゃいいか、やり方すらわかんねーよっ!
────そうだ!
俺は風魔法を自分中心に使ってみる事にした。
──これで、風圧により攻撃を受けないだろう────って、痛いっ!?
さっきより痛みマシだけど攻撃当たってるよ!?
(まだまだじゃな……)
また大将の声が聞こえて来た。
これデートだからっ!
戦闘ばっかしてるけど、これデート!
邪魔するなよ!?
「コウキっ! 大丈夫か!?」
「なんとか……────ん? 攻撃が来ない?」
ティナから声がかかり、攻撃が来なくなったので目を擦る。
視界が元に戻り始める。
光景は死屍累々……至る所に臓物や血肉が飛び散っていた。
阿呆な事をしてる間に戦闘は終わりを迎えたようだった。
「次期Sランク半端ねぇっす!」
そんな俺の言葉でバトルデートは終わりを告げる。
◆◇◆◇◆
俺は現在、冒険者ギルドに来て換金している所だ。
俺の精神は疲労困憊だ。
ギルドカウンターの前でティナが隣で腕に胸を押し当てて来てくれている。お胸様が、今俺を癒してくれている。
周りの目は少し可哀想な物を見る目なのは気のせいだと思いたい。むしろこれは羨ましいはずなんだが……なんでだろ?
しかし、デートって疲れるんだな……異世界のデートは普通じゃないな。まさか魔物狩りデートがあるとは……。
「ティナ様とコウキ様ぁ〜、お待たせしましたぁ〜」
受付嬢から呼ばれる。
「はーい、ここに──「ちっ」──います?」
俺は返事をすると──ティナが舌打ちをする。
何故!?
「今回の買取はワイバーン4体と────肉塊になった何かわからない魔物達ですね。ワイバーンは4体で金貨200枚、他は──残念ながら買い取りできません」
ワイバーンは1匹、金貨50枚なのか!? さすが討伐ランクAだな!
冒険者ってのは命を賭ける職業なだけはあるな。他の買い取りはダメ元だったし、特に問題はないだろう。むしろ処分してくれ。
ドンッ
カウンターを力強く叩く音が目の前で聞こえてきた。
何事だと俺を含め、周りの人が注視する。
「全部買い取れ」
ティ……ティナさん?
「ですから、何の魔物かわからないので不可能です」
ティナさんや? 俺、大満足だから別に食いつかなくて大丈夫ですよ?
「いいから金を上乗せしろ。肉屋に卸せばいいだろ?」
ティナさんや……どこの恐喝屋さんですかね?? しかも何の肉かわからないのに買い取る人とかいないんじゃね?
それに対する受付嬢も全く引く気配がないな。
もしかして────いつものやり取りなのか?
2人付近の空間は威圧感が半端ないんだが……。
「俺はワイバーンだけでも十分ですよ?」
「──むぅ、コウキがそう言うならそれで良い」
「────!?」
ティナが妥協した瞬間、受付嬢の表情が驚愕に変わる。
いや、そこまで驚く事なの!?
ティナのいつもの行いが気になるな……。
「ティナ……なんで受付嬢の方はこんなに驚いているの?」
「ティナさんは──いつも横暴で野蛮な事をおっしゃるんです……いつもギルド職員は迷惑してるんです……コウキさんもなんとかおっしゃって下さい」
受付嬢が俺に答える。
というか、そこで俺に話を振るなよ……ティナの顔が怖い……。
「コウキ! 私は無実だっ! なぁっ! 皆もそう思うよな!?」
ティナは大声で言ってくるが────周りの反応は首を横に振っている。
きっと、それが答えなんだろう……というか哀れんだ目の正体はそれか……。
その後に軽く、ティナが暴れるという一幕があり────
なんとか宥めて武器屋に向かう事にした──
──というか、抱き抱えられて連れ去られた。
周りの人は皆合掌していた。
ちなみに俺はティナが暴れてる間に新しい冒険者証を渡された。
討伐履歴が昇格条件に満たしたとDランクになっていた。一気に上がるんだなと思いながら、鼻歌を歌うティナに運ばれる。
なんかこれ────さっき見た記憶にもあったな。確か──出会った頃だな。
俺はお胸様に埋もれながら、存分に幸せを満喫した。
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