夢が現実と化す少年

萩野

第1話 始まり

「なんで、なんでだよ」

 ぷるぷると震えながら紐を持ち、独り言を発している。

「俺が何をしたっていうんだよ、なんで俺が」

 涙を流しながら椅子に上り、天井に紐を括り付けている。

「父さん、母さん、今まで育ってくれてありがとう」

 首にひもを強く結び、いすを蹴り飛ばす。

「あ、あ、ぐ、あ、ぐ、」

 もがき苦しんでいる幸雄が動かなくなる。


「ピピピピ」

 携帯で設定しているアラームが部屋に鳴り響く。

 目をこすりカーテンを開け窓の外を眺める。

 さっきまで見ていた夢は何だ、自殺をしようとしていたのは確実に親友である幸雄だった。

「知也ご飯よ」

 母親の呼ぶ声が一階から聞こえてくる。

「わかったよ、母さん」

 一階に降り、食卓へと向かう。

 テーブルに並べられているパンと目玉焼きを食べ、洗面台に向かい歯を磨き洗顔をする。

 時計を見ると時間は8時20分を指していた。

「やべ、遅刻だ」

 二回に上がり制服に着替え急いで学校へと向かう。

 学校つくと親友の幸雄が校門の前を歩いているのに気づく。

「おはよう、幸雄」

「おー、知也じゃないか、おはよう」

 いつもどうり元気な幸雄、名前に入っている「幸」のおかげだろうか。

 そのまま二人でクラスへにつき席に着く。

 幸雄は俺の前の席なので、いつも授業が始まるまでしゃべり続けている。

「あ、きたぞ、クラスのマドンナ紗季ちゃんが」

 笑顔でこちらを見る幸雄

「ほんとかわいいよな」

「今度話しかけてみようかな」

「やめておけ、後悔するだけだ」

「そ、そんなこと言うなよ」

 いつものようにくだらない話をしていると、紗季ちゃんが僕を横切る

「君が見た夢は本物だよ」

 後ろを振り向くと彼女の姿がない、気のせいだろうか、でも確かに聞こえた。「夢、本物」というワードが。まさか朝に見た夢のことだろうか、今までに感じたことのない不安が襲ってくる。


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