「寿司、講談、ヘテロクロミア」

 講談社の新人賞に送ったライトノベルの新人賞の、評価シートが返ってきた。講談社のやつは一次選考通過で講評を出してもらえるのである。だから送ったとも言う。

 で、内容だが、くそみそのボロボロだった。「虹彩異色症ヘテロクロミアのヒロインという設定は陳腐でありふれており~」とかなんとか。がんばって考えたのに。まあ、一次選考を通過できただけでも恩の字だったというべきか。とどめを刺してもらえたのだから。

 なんとなれば。

 小説家を目指すのはいいが、25歳までにものにならなかったら諦めて家業を継ぐと、親とは約束していたのだ。だから、これは最後のチャンスだった。

 で、おれの家業だが寿司屋である。25歳になってから修業を始めるのは非常に遅いという世界なので、小説を書くかたわら、寿司職人の修業もしていた。いちおう、既にツケ場(客の前で寿司を握る場所のこと)に立つことのできる地位だ。親父はもう隠居したがっているから、家業を継ぐとはつまりおれが店を継ぐということである。

 明日は豊洲で仕入れだ。早く起きなきゃならないから、さっさと寝なければ。じゃ、そういうことで。

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