7章*離れていたって友だちなんだ!の巻
第105話-古の森まつり
古の森では、朝から可愛い系のみんなが総出で忙しく動き回っていました。ドンちゃんと、兄弟のノラウサギさん、魔リスさんたちは木の葉を敷き詰めて、湖の前に広場を作っています。魔ねずみさんたちも、キラキラ光る木の実を咥えて忙しそうに行き交っています。モッチをはじめ、クマン魔蜂さんたちも蜜を集めてはちみつ玉作りに余念がありません。
今日はいったい何があるんでしょう?
そこへ黒ドラちゃんが飛んできました。
「みんな~!ゲルードたちがもうすぐ着くみたいよ~!」
ドスンッと湖のそばに降り立つと、魔ねずみさんたちから木の実を受け取りました。そして、大きな大きな大きな木に、木の実を飾り付けて行きます。まるで湖の前はお祭り広場のようでした。
そう、実はみんなで「古の森祭り」の準備をしているんです。
この間、黒ドラちゃんとドンちゃんが王都の夏祭りに行った時のことを森のみんなに話しました。そうしたら、みんなも「お祭りしたい!お祭りしたい!」って言い出したんです。それで、せっかくお祭りをするならお客さんにも来てほしい!っていうことで、ゲルードや鎧の兵士さんたちを招待することになりました。ゲルードたちが植えてくれたお花もずいぶんと増えて綺麗に咲いています。なので、今回は「古の森花祭り」
マグノラさんやブランにも、もちろん来てもらいます。ラウザーにも「良かったら来てね」と言ってあります。ラウザーはお祭り竜って呼ばれることを気にしていたので、ちょっと気を遣いました。
でも「もちろん!行く行く!俺、ラキ様乗っけて行くよ!!」と喜んで来てくれることになりホッとしました。
みんなで一生懸命飾り付けをして、湖の周りはキラキラと輝いていました。
そこにブランの声が聞こえてきます。
「おーい、黒ちゃーん!来たよー!」
ブランのキラキラした体が木々の間から見えてきました。黒ドラちゃんは急いでその方向へ飛んでいきました。ブランの後ろの方から、森の道をゲルードたちが進んできています。
「ようこそ、古の森へ!お待ちしてましたあ!」
黒ドラちゃんは嬉しくて、ゲルードたちの前にドスンと降り立ちました。すぐさまゲルードが片膝をついてお辞儀をします。
「本日はお招きいただきましてありがとうございます。古龍様にはご機嫌麗しく、森の皆々様も……」
「良いの良いの!早く行こうよ!みんな待っているよ?」
ゲルードのご挨拶が長くなりそうだったので、黒ドラちゃんがサクッと切り上げました。
黒ドラちゃんが先頭を飛んで、ブランがその後を、ゲルードたちは下の森の道を歩いてきます。
やがて一行は湖の前の開けた場所に出ました。
「おお、これは美しい!」
ゲルードが感嘆の声を上げました。鎧の兵士さんたち、いえ、今日は鎧は着ていません、普段着です。普段着の兵士さんたちも、口々に「きれいだ!」とか「すばらしいなあ」なんて言ってくれています。古の森を褒めてもらって、黒ドラちゃんは嬉しくてラウザーのように空中で何度もクルクル回っちゃいました。
そこへモッチたちクマン魔蜂さんが、はちみつ玉を抱えてゲルードたちの前に現れました。
「うっ」
一瞬ゲルードはひるみましたが、すぐに片膝をついてご挨拶しました。
「これはクマン魔蜂様たち、ご機嫌麗しゅう。今日も素敵な二色使いですな」
ちょっとビクついていますが、一応礼を尽くそうと思っているようです。
「ぶい~ん!」
モッチがゲルードの目の前にはちみつ玉を持っていきました。
「こ、これは!」
すぐにゲルードが反応します。でも、もう前のように力ずくで手に入れようとは思わないようでした。
「見事なはちみつ玉ですな。さすが特大クマン魔蜂殿の腕前は素晴らしい」
「モッチだよ、ゲルード。その大きなクマン魔蜂さんはモッチっていうの」
黒ドラちゃんが紹介すると、モッチははちみつ玉を抱えたまま、ゲルードの目の前でくるっと回って見せました。
「モッチ殿、その……初めて城でお会いした時は大変失礼をいたしました。このゲルード、二度とあのような暴挙はいたしません、どうかお許しください」
ゲルードが深々と礼をすると、モッチは良いよ良いよ、というように「ぶいんぶいん」と右左に飛んで見せました。
「ありがたい。そのように言っていただけると、胸のつかえが取れますな」
「えっ!、ゲルードってばモッチが何て言ってるかわかるようになったの!?」
黒ドラちゃんが驚いてたずねると、ゲルードもおや?と首をかしげました。
「そう言われてみれば、そうですな。なぜでしょう、なんだかモッチ殿の気持ちが伝わってくるような……」
「すごいね!さすが国一番の魔術師!」
黒ドラちゃんが褒めると、ゲルードがさらりと金の髪をなびかせて微笑みました。
「いや、これくらいのこと、大したことでは――「ぶいん!」
あ、モッチに突っ込まれています。
「たいしたことです、はい」
ゲルードはおとなしくうなずいていました。
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