15. 責任を押し付け合う者と過去を悔いる者


今、これまでの話を修正したいという衝動にかられてます。

それに合わせてこの話もあとから大幅に過筆修正するかもしれません。


そして今日は間に合えば今日中にもう1話更新する…かも、しれません。


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「こ、この本が本当なら、太陽の神子がいなくなるとこの大陸全土がとんでもない厄災に襲われる事になるでは無いか!!」


なんて事をしてくれたんだと喚く小太りの男の顔は青い。


「3年前に前国王がマクファディン家の令嬢を貶めた時に1番嬉しそうにしていたやつが何を言っている!」


小太りの男を責める派手な服の男が普段、目の上のたんこぶである小太りの男にそう反論した。


「な!?、止めなかったのは私だけではなかったでは無いか!巫女は争いを呼ぶなどと便乗して言ったおったのはどこの誰だったか?実の所自分の娘を王妃にしたいだけだったのは誰もが知っておるぞ。」


自分達が我欲のために貶めた者が実は世界にとってとんでもなく大切な者だったと今更知ってその責任を醜く押し付けあって言い争っている姿に騎士団長であるルヴァインと次期宰相であるファウストは怒りをとうに通り越して何も感じなかった。


なぜなら3年前はもっと醜く足掻く者が今の倍はいたのだから。


この2人は陛下が戻ったら報告しないと行けないな…

ファウストが内心でそう思いうんざりしている事にも気づかずに今もなおくだらない言い争いをしているもの達にとうとう堪忍袋の緒がキレた。


「いい加減にしろ!!!」


ファウストが会議室の円卓を両手で叩くとこれまでうるさくしていた者が一斉に黙り込んだ。


「現状を他人のせいにしかできないような者は2年半前に揃って前国王と一緒に処刑されたと思っていたが違ったのか?」


そう言ってギロリとやかましく騒いでいたもの達を睨むと青くなって黙った。


「今この場で我々がやるべき事は2つ。陛下が戻るまでに我々がやっておくべき事の確認と、それを誰がどうやるかという話し合いだ。少なくとも私はそのように認識していたのだが違うのだろうか?」


蛇に睨まれた蛙のようになっている貴族達に呆れてものが言えないファウストは『ああ、だからこの書類を置いていったのか』と心を閉ざし何も相談してくれなくなったかつての友の考えを悟った。


「前王時代の膿が除去しきれてなかったどころか、前王は我欲でこの大陸を滅ぼすところだったと今更になって判明するとは…。」


ルヴァインの父であるクレスウェル伯爵が言う。


「この国の…いや、我々のこれからがどうなるかはクリスティーナ様のお心次第なのかもしれません。」


今の状況を正しく理解出来ている数少ない内の1人であるルヴァインが呟いた。


「やはりお前もそう思うか。」


「はい父上。陛下は3年前のあの日、我々に失望したとおっしゃいました。あの時から陛下にとっての最優先事項がこの国からクリスティーナ様個人になっていたんでしょう。」


それもそのはず、最愛の婚約者だっただけでなく、文字通り世界の宝だったのだから。それを踏みにじった我々などとっくに見限られていても不思議じゃない。元々陛下は王になるはずのなかった人なのだから。


それに王太子時代からソレイユは身近な者に言っていたのだ。『クリスティーナは世界の宝とも言える巫女なのだから、私の婚約者かどうかは関係なく大切にしないといけない存在だ』と。今までそれは恋するあまり視野が狭くなっているだけだと思われていた。女で堕落して破滅した貴族は歴史上を見ても珍しくないからだ。


「だが伯爵はそういうが、そもそもこのような大事な事を今まで我々に黙っていた陛下も悪いのでないか?」


「言われてみればそうではないか。なぜ今まで王にだけに秘匿されていたのか。」


さっきは醜く言い争っていた小太りの男と派手な服の男が口を揃えてソレイユに文句を言い始める。


それを聞いて、クレスウェル伯爵らは『お前達のような者がいるから黙ってたんだろう』と思い呆れた。だがそれを言ってやってもこいつらには何も響かないので言いはしないが。


「(こいつらの考え方は何も変わってないと言う事か…嘆かわしい…)この3年間、陛下が王としてやってくださっていたのは我々を許したからなどではなく、ひとえにこの国に住む無辜の民のためだったと言う事か…。」


頭が痛い話だな、とクレスウェル伯爵は数年前に前国王をもっと本気で止めなかったことを後悔した。


「王という存在が必要のない新たな政府…これが布告されれば最初うちは政府機関が荒れはするでしょう。ですが国民の大多数をしめるの平民達の暮らしは何も変わらないですむでしょう。」


王という存在がいなくなり、貴族達の中から新たにリーダーを決めるようになるだけでやる事は今までとそこまで変わらないのだから。これまでは貴族家の当主でさえいれば将来安泰で実際の能力自体は無能でも問題なかった。たが、この法律が施行されればそうはいかなくなる。

この法律が影響を及ぼすのは無能な貴族だけだろう。ただ上がすげ替えられるだけ。これはそういう事だ。


「だが、これが施行されれば国は必ず混乱する。ただでさえ前王の暴挙のせいで不安定な状態にあるこの国を建て直し、おさめられるのはあの方の他にいるとは思えない。」


クレスウェル伯爵がそういうと全員が揃って押し黙る。


「…やはりどう考えても、我々の運命は文字通り、クリスティーナ様のお心次第という他ないようだな。」


「そういう事でしょうな…。」


国王がこの置き土産をした思惑をちゃんと理解できた者はこの置き土産を最初に見た時に国王の必死さに思わず苦笑いをこぼしたものである。今大騒ぎしているのは本当の思惑に気づくことすらできない者だけだ。しっかりと頭が働くものならば陛下が本気で王を辞める気など欠けらも無い事はすぐにわかるのだ。


そう。これはあくまでもポーズだけなのだ。クリスティーナにこの国に戻ってもらうための。


クリスティーナ。兄様の事は許さなくていい。だけど、お願いだからこれ以上陛下から離れようとしないでくれ…国が割れるっ…。


ここまで念入りに準備したからにはクリスティーナに逃げられそうになったら本当に国を捨てそうだと思ったクリスティーナの兄で次期宰相のファウストは密かにそう願った。




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ここまでお読み下さりありがとうございます。

また読みに来てくれると嬉しいです。

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