例えば、こんなやり方もございます。

深夜 朔

1

「アンジェリカ・ザラーク!私は今この時を以って貴様との婚約を破棄することを宣言する!」


王太子の生誕を祝う王城でのパーティー。そこで主賓の王太子が幼気な少女の肩を抱いて言うセリフでは……ありますわね、失礼。そちらで考えればそうでした。


それよりも……やっと!やっとですか馬鹿――いえ、王太子殿下!


あら?取り巻きのお方々、どうなさったんでしょう?ここは追従するとこではありませんの?


「アンジェリカ様なら何とかしてくださると思っていたのに……」

「違うだろ、俺たちがそれに甘えて本気で殿下をお諫めしなかったのが悪いんだろ!」

「そう、だな……アンジェリカ様にはいくら謝罪してもし足りないよ」


えぇ……っと、こっそりとお話をしていると思ってらっしゃるようですが、ばっちりと聞こえておりますよ?


というか、あのバ、王太子殿下の相手、私に丸投げしておられたのですね……今日持ってきたのが華奢な扇子で本当によかったですわ。


あ、申し遅れました。私、アンジェリカ・ザラークと申します。

この国、ペルセライ王国の王太子の婚約者――いえ、元婚約者ですね。


流石に、上は公爵から下は男爵までありとあらゆる爵位の貴族、豪商、そして彼らの家族のいる中発した言葉をそうそう取り消せやしないでしょうし。受理しないと陛下が仰ったらその時は……うふふ。


期待を込めて壇上の陛下へ視線を送る。

矢張りと言いますか、女王の証のティアラに輝くサファイアもかくや、というほどの真っ青なお顔をしてらっしゃいました。


「ジャメル!貴方は何という事を……!」


立ち上がる足元も危うくて……私が責任の一端を担っているとはいえ、心配になってしまいます。


他人事のよう、ですか?


そうかもしれません。

だって私は……

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