MeCab とCaboCha(副題:文体模写)

※創作のネタではありません



 MeCabメカブ(和布蕪)とCaboChaカボチャ(南瓜)。


 これらのツールを使えば、美しいと感じた文を、客観的に分析することができます。真似した文章に関して、品詞や係り受けの側面から一致していることを確認し、うまくできているか評価します。


 簡単にツールについて紹介します。

 MeCabメカブは、形態素解析をしてくれるツールです。

 CaboChaカボチャは、係り受け解析をしてくれます。

 どちらも無償です。

 インストールすれば、Windowsで実行できます。


 文章を品詞毎に分けてくれるのがMecabです。

 係り受けを分析してくれるのが(そのままですが)、CaboChaです。文節に区切って関連性を示してくれます。



 『蜘蛛の糸』のエピソードで引用した次の文を例に挙げたいと思います。

“自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。”


抜粋:

蜘蛛の糸

芥川龍之介


 例えば、“犍陀多の無慈悲な心が”という文章は、次のように形態素解析されます。

 名詞(犍陀多)+助詞(の)+名詞(無慈悲)+助動詞(な)+名詞(心)+助詞(が)


 引用した文の係り受け解析を実行し、文章をスッキリさせると次のようになります。

・心が罰をうけて、地獄へ落ちてしまったが、浅ましい。


 傍点を打った、の、は非自立名詞と呼ばれるそうですが、これは、こと、に置き換えた方がわかりやすい気がします。

・心が罰をうけて、地獄へ落ちてしまったが、浅ましい。

  

 文の構造をみてみると、それほど難しくないですが、の、を使っているので何を指しているのかわかりづらく、やや上級者向けかもしれません。(ネイティブ日本人にはどうでもないと思いますが)

・心が罰を受けて地獄へ落ちた。それが浅ましい。


 これでは、何も感銘を受けない普通の文章です……ね。(あれ、こんなはずでは)


 芥川龍之介の文章は、句点の打ち方や接続詞に工夫があり、なんでもない文章の美感を高めているのかもしれません。


・私の心が、そうして理不尽な罰をうけて、憤怒の罪に落ちてしまったのが、誰の目にも面白くうつったのでしょう。


 “そうしてその心相当な罰を”、と、そうして理不尽な罰を、の部分が違いますが、係り受け解析による全体の文の構造はほぼほぼ同じです。


 

 『蜘蛛の糸』のエピソードを書いた時、私が感動していたのは、ちょっとわかりづらいともいえる文の構造に対して抱いていたのかもしれません。(心相当の罰、という言葉は言い得て妙だな、と思っていました)



 日本語の文法なんて意識して書いていないし、私は勉強した覚えもないので、ただ単に文を読んだだけでは品詞や構造はわかりません。ただ、こういったツールがあると文章に対する理解が深まる気がしています。

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