王国玄冬記 ~Saga of Kingdom Turmoil~

Soh.Su-K(ソースケ)

Prologue

 王国史に残る重大事件はいくつか存在する。

 その中で最も大きな事件とされるのが、当時の国王が暗殺された『フェム事件』である。

 当時、世界は魔王と戦争状態にあり、人の生活圏を犯そうと北上する魔王軍をほぼ王国単独で足止めしていた。

 王国の南部を前線とする防衛線が何重にも引かれ、魔王軍の進攻を何とか食い止めている状態である。

 くしくも、勇者は不在。

 それ故に不利だと考えられていた王国側は、奇跡の様な防衛戦を展開し、魔王軍の侵入を防ぎきっていた。

 そんな中、前線の視察及び兵達の激励に南部を訪れた第四五代国王ガーランド・フォン・バーテルバーグが暗殺される。

 ガーランドは優れた国王であった。

 南部に魔王軍との前線を抱えていながら、王国の強大な経済力を維持していた。

 そんな国王の暗殺に、王国全土が動揺する事となる。

 そして、その内政不安は大きなうねりとなり、空席である玉座を巡って、貴族同士の内戦へと発展していく。

 俗にいう、『王国玄冬期』の到来である。

 それに呼応するように、魔王軍も攻勢を強めた為、南部戦線はかつてない後退を強いられる事となった。

 ここに記すのは、王国が最も荒れた『王国玄冬期』に関するものである。

 この様な愚かな所業が二度と起きない事を願って私はこれを記す。


――王立図書館 所蔵「エルウェ著『王国玄冬記』」前書きより一部抜粋

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