10話 異世界の魔法少女

 異世界の魔法少女

 

 

 

 見慣れない天井。ここは何処? ああそうか、私はたしか、回復のために、少し休んでいたんだっけ? でもここは、揺れている? ここは乗り物の中かしら? もしかして捕虜になったとか? というかあの敵、生きている足の方に攻撃するなんて、最悪だわ。

 

「に、逃げないと!」

 

 思わず声にしてしまったけど、早く逃げないと、危ないわ。みんなに迷惑をかけるかもだし。部屋をこっそりと調べる。よし鍵はかかってないわね。ソロリソロリと廊下に出る。見張りもいない? って逆の廊下から、声が聞こえてくる。戻って隠れるわけにもいかないし。

 

「そういえば、式は起きたかな?」

 

「ま、まだかも、こ、こっぴどくやられていたみたいだし」

 

 何今の会話! めっちゃ腹立つ! そして、なんで私の名前バレてるの? まあそれでもいいわ。逃げるのが先決よ。あれ、こっちからも足音が!

 

「起きたでござるか。って、何故、廊下の隅でへばり付いておるのだ」

 

「あ、あれ? ムーン? って事は、捕虜にはなってない?」

 

「そうでござるよ。拙者が回収して、そのまま、武蔵の船内で寝ていたでござる」

 

 という事は、さっきの声は、

 

「あ、お、起きてる」

 

「良かったよ。でも、なんで、こんなところに?」

 

 雛と皐月だったのかぁ。

 

「あ、いや何でもないわよ」

 

「この者は、敵地だと思ったらしいでござる」

 

「いー! うー! なー!」

 

 あああああああああ恥ずかしい!! なんで敵地だと思ったんだろう! よく考えたら、敵地で鍵が開いているわけがないのに!

 

「まあ、もう少し寝といたほうがいいと思うよ。傷はふさがったけど、まだ本調子じゃないでしょ」

 

「うん、じゃあお言葉に甘えて少しさっきの部屋で横になっておくよ」

 

 ふう、すごく疲れた気分。まあ、体力戻って無いのと、隠れて移動しようとしていた心労かしら? 布団に入り込んですぐまどろみに落ちた。

 

 

 

 目が覚めた。身体は……うん、全快みたいね。とりあえず、甲板に出よう。どこかに地図無いかしら? あ、机漁ったらあったわ。やっほい。そろそろと廊下を通り、よし甲板に出たわ。今時間は? 機工を見ると、13:18もう昼ね。どんだけ寝てたのよ!

 

「あ、起きたんだね。式。で、体調はどうかな?」

 

「あ、皐月。心配してくれてありがとう。もう元気よ。あなたはどうなのかしら」

 

「僕は、戦にあまり出てないから、怪我はないよ。雛の方も大丈夫そうだったよ」

 

「じゃあ、怪我したのは私だけなのかしら。なんか自信なくすわ」

 

「強い敵が出たのは式の担当していた場所だけだったから、しょうがないよ」

 

「そうなのかしら……」

 

 まあ気休めだと思わない方がいいかしら。あいつが出てくるとは思わなかったし……。

 

「にしても、賢者の吸石が出てくるなんて、砂ぐらいの大きさにしたのに、なんで動けるんだろう?」

 

「増殖して、人形の中に入っているみたいだったわ。そして頭は兵器が入っているみたいだった。片手は砂でできていたわね。つまり、砂が中からその人形を操って、砂で吸収する。そして、頭の兵器でビームを放ってきたわ。それで、相手を倒すみたいね」

 

「うーん、なんかややこしい強さになっているね。僕だと小さくできるかもしれないけど、消すことはできないかな」

 

「そうだ、そのことなんだけどね」

 

「ってうわ! 後ろから声かけないでよ! 文。吃驚したわ」

 

 そう後ろから、文が声をかけてきた。どこから聞いてたのかしら?

 

「御免、御免。でも、そういう敵を倒すために作られた、刀があるって話を持ってきたんだよ。まあ。今からじゃ間に合わないけど、情報だけ、滅鬼っていうんだけど、魔の者に分類される生き物を絶対殺せるって代物なんだ。ただ……」


「ただ?」

 

「どこにあるか判らないんだ。もしかすると、あの刀は、他の刀に合体させて使うものだから、もう、この世にはないかも……。それに、7本刀の中では一番脆いから、残っていても、ボロボロかもしれないんだ」

 

「なんで上げて落とすのさ」

 

 皐月の言う通りよ、なんで、いい情報話して、悪い情報言ってくるのよ。

 

「方法はいくらでもあるからね、皐文に頼むか、滅鬼を溶かして打ち直すのもありだね」

 

「な、成程ね。どうするのかはわからないけど、なら、あきらめるべきではないわね。あ、後、ゴトの所の兵士もいたわ」

 

 厳しい感じだけど、あいつを倒さないと、危ないと思うのよね。ならば、諦めるべきではないわね。

 

「へー、ゴトの所の……って、事はゴトも、敵勢力の中にいるんだね。倒さないと!」

 

 僕の言葉に、皐月が殺意を放っている。まあ、私も殺意出ているかもだけど、

 

『所属不明の飛行物体接近中! 繰り返す、所属不明の飛行物体接近中! 臨戦態勢をとりなさい!』

 

 え、マーキュリーの声ね、ってそんな事より、敵襲かしら? 迎撃態勢を取らないと、と言っても私此処から迎撃する方法はあまりないけど……。船の上で戦車出していいならそれでもいいんだけど。とりあえず、甲板に出た。


『まだ撃たないでね。なんか白旗持って通信を入れようとしながらこっちに向かってきているわ』


「白旗って事は、敵じゃないのかな? ここで待っていたら来るかも?」


「そうだね、此処甲板だもんね。ここ以外着艦するなら、水上機で、着水するぐらいしかないもん。飛行機だと終わっているけどね」


 そんな会話を皐月としていると、目の前にキラキラした少女5人が空から降りてきた。


「すみません、私たち魔法少女なのですが、円卓機工と戦っている人たちはここに居ますか?」


「私たちがそうだけど、それであなたたちは、この戦艦に何か用かしら? いや、連合軍に用なのかしら?」


「あ、連合軍というのですね。実は私たち、この世界の魔法少女なんですが、円卓機工と戦いに来たんです。あなたたちの連合軍に私たちも加えてください」


「え? 君たちは魔法少女なんだよね、夢や希望を配るという。それなのに、侵略者に手を貸すのかな?」


 すると、気まずいような顔をして、リーダー格であろう光属性っぽい女の子が、


「えっとね、私たちは、円卓機工と戦って負けたの。世界の平和や、秩序のために戦ったんだけど、負けたのだから、平和と秩序のために、円卓機工は倒すべきなんだよ」


「え、でも、この世界は円卓機工のおかげで、発展したりは」


「してないよ。それどころか。すべては機工使いのためって言って、一般人から後で返すからと言って物資を取り上げたり、無理やり徴兵したり、かなりひどいことしていたんだよ」


「まあ、この世界の意思はそれを望んでないけどね」


 恐らく、土属性の子が冷静にぼそりと言う。


「そうなの?」


「え、ええ。この馬鹿はなんでそれを話したか知らないけど、そうなのよ。何故か世界の意思は、円卓機工に付いたのよ」


 え、世界の意思って何かしら? そう考えていると、周りも皆首をかしげていたから、光の魔法少女が、


「えっと、世界の意思の情報、いる?」


「うん」


 私たちの答えに、魔法少女たちは、少しため息を入れて、けどすぐに、


「まず、世界の意思っていうのは簡単に言うと、その世界を運営している者の意思って感じでいいんだけど、詳しく言うと、世界がいい方にいい方に、人間が進化するようにするようにって感じの意思かな」


「ただ、そいつが、円卓機工に付いたんだ、意味が分かんねぇ」


 火の魔法少女が怒りながら、拳を壁にぶつける。つまり、そっちの方が世界の運営に都合がいいってこと、なのかな?


「なんかすごい曖昧な物なんだね。正体はわかっているのかな?」


 すると、魔法少女たちはすごく暗い顔をして、


「私たちの宿命で、6人いる世界の魔法少女の一人、と言うか彼女は厳密には魔法少女じゃないのだけど、闇の魔女と呼ばれる存在がいるんだ。それが殺されると、世界の意思になるっていうシステムらしいんだ」


「ちょっと、見ず知らずの人たちにそんな話までしちゃっていいの? ノームサンド!」


「見ず知らずではあるけど、関係ないわけでないよね。それに、この人たち、闇の魔女を知ってそうだよ」


「え? どういう事? 違う世界の闇の魔女の知り合いって事?」


「うん、そうだと思う。で、その意思があちらに付いたって事は、私たちは闇堕ち認定されるかもしれないんだ」


「そうなるとどうなるの?」


「力は落ちないけど、死んでしまう可能性が出てくるの」


「え、魔法少女って死なないのかい?」


「ええ、闇の魔女には無いけど、魔法少女は魔力障壁を永続付与されるんだ。けど闇堕ちすると、その加護がなくなって、死にやすくなってしまうんだ」


「へー。でもそんな危険、しかも裏切り行為してまでこっちに付く理由って本当に平和と秩序のためなのかな?」


「うっ、それは、そう思うよね。なら理由話すけど、私たちは、もっと仲間がいたんだ。だけど、ほとんどがあいつらに殺された。だから、本当の理由は復讐だよ。仲良かった仲間、好きだった彼、楽しかった居場所それをすべて奪ったあいつらが憎いんだ。だから逃がしてくれたみんなのためにも、あいつらを倒したい!」


「つまり復讐って事だね。分かったよ。でも、まだ、信用できるわけではないっていうのはわかるよね」


 あ、文が悪役を買って出ているわ。


「ええ、それはわかるわ。だから先陣でも何でもいいわ」


「お、良いのかい? じゃあそれで」


えええ、魔法少女たちはそれでいいのかしら? でもいいって言っているし、しかも文もOKだすし。


「ええ。それじゃあ仲間に入れてもらうわよ」


「じゃあ、詳しい話も聞きたいから、こっちに来てね」


「ええ」


 行っちゃった。色々聞いてくれるんだろうけど、私たちには関係なさそうだしいいよね。そう考えて私たちは会話を続けた。


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