14話 太陽に対するカウンター

太陽に対するカウンター




戦車で階段を駆け上がった後、私たちは何処に逃げるか、言い争っていた。


「大天守に逃げて、皆で戦うのはどう?」


「こんなやつ皆の所に連れて行けるわけないだろう。それより、外に逃げて、逃げ回るほうがいいと思う」


「そっちの意見だと倒せないわよ! 何とか動けなくしないと、どうしようもないわ」


「だが、仲間を殺すわけには……!」


こんなときに、機工に通信が入ったわ。皐月から? しょうがないからでるけど! なんでこんな時に!


「はい、式よ。今、敵に追われてて大変なんだけど」


「その敵、今から大天守に連れてきて、こちらは準備万全で、待っているわ」


あれ、皐月じゃない? どうなっているのかしら? とりあえず、広域に聞こえる様に設定を変更する。


「あなた誰?」


「儂は、ヴィーナス・エルピスよ。この世界のエルピス、義和のカウンターよ」


「ああ、ヴィーナスさんね。ってカウンター? って事は、勝ちの目はあるって事?」


「あるわ」


「……分かったわ! 久礼も解ったかしら?」


「分からないけど、まあいいよ。二人に任せる。ただし、仲間が死んだりした場合は、責任取ってもらうからね!」


「ええ!」


そのまま私たちは、大天守に向かう。けど、かなり火移りしている? 所々燃えているんだけど、


「こっちだよ!」


「あ、雛。迎えに来てくれたのかしら?」


「うん。皆が構えて待っている。だから、3人ともあたしに掴まって!」


「ええ!」


「分かった」


「お願い!」


全員が掴まっていることを確認して、雛は飛び出した。速く素早く! そして、大天守に到着。するとそこから、大量の鉄の盾と、大量の銃などが私たちの後ろを狙っているのが分かった。そこで私たちは下ろされて、


「この銃を使って」


と、とても旧世代というか、火縄銃を渡された。そして、少しの沈黙。襖の向こうから現れた敵はこの布陣とヴィーナスを見て、


「参った降参だわ。じゃが、わらわの目的はすでに達しておる。もうこの世界には用はないからの、集合場所にでも行っておくかの」


そう両手をあげた。


「目的?」


「そうじゃ、目的じゃ、ここの世界は、あまりにも管理されすぎておる。もちろん、作り手、いや、神からじゃがな、じゃから、わらわは、元の世界演算から外れた、いや、神の思い通りの箱庭にされたこの世界を、この中の人の意志で動く世界に変えようと思いてな」


「えっと……どういう事? ここが作られた世界だっていうのは知っているけど、神っていうのはこの世界を作った人の事よね? その人たちの思い通りって事は当たり前なんじゃ?」


「いや、違うのじゃ。この世界は、元の世界を生かすための、破滅防止用演算世界なのじゃ。演算によって、世界の破滅を避けようというのが、この世界の成り立ちと言う訳じゃな。じゃが、ここの世界はそれより外れておる」


「それが、世界を管理されているってこと?」


にやりと、義和が笑う。


「そうじゃ。そして、この世界の管理者が望むのは、この国が天下を取ることなのじゃが、それを強制的に、他の国を沈める、隕石が落ちた、等の災害によって、滅ぼしてしまったんじゃな」


「けど、そんな世界では、本来の未来演算が出来ない?」


「そうじゃそうじゃ、じゃから、元に戻せないにせよ、管理者の手から離れるように仕向けたのじゃ。そこはうまくいったのじゃが、日輪の子がまさかの暴走で、わらわは培養槽に押し込められて、能力を使われていたと言う訳じゃな。それに、ここでは、反乱がおきておる。となると、簡単に政権交代が成功するじゃろう。ではわらわは約束の地に向かうとするかの」


そう言うと、義和は姿を消して、


「ふうー! 緊張したわ!」


とヴィーナスさんの言葉と共に皆へたり込んだ。


「なんで、この場で降参したのかしら?」


ヴィーナスさんに聞くと、ふふっと笑いながら、


「それは出てから話すわ」


皆が、なんとか立ち上がり、出口へと向かっていく。そして、なんとか外に出ると、


「簡単よ。儂は鉄を操れるのだけど、例えば、溶けた鉄を混ぜられた日とかどうなると思う?」


「いや、鉄なら、溶けて、そのまま操れなくなるんじゃ?」


「そうならないのよ、儂の生成した鉄ならね。そのまま重力圏を抜けて、攻撃できる。それが、全方位で構えているのよ」


「え、けど、あの敵の火の玉って、そんなやわな攻撃じゃ通過できないような」


「核分裂しても、この金属であるなら、大丈夫よ。それで、貫かれたらいくら太陽神でもひとたまりもないわよ」


「成程、相性が悪いんだね」


「そういう事。だから、義和は大人しく、約束の地に向かってくれたのよ」


何とか、燃えている、城から脱出してそんな話をしていると、周りが少し騒がしくなってきた。


「……い、……を、解放……、だが……」


ん? やっぱり、反乱軍と、久礼たちに亀裂は大きくなっていたみたいね。久礼たち、問い詰められているわ。なら、


「皐月、雛。もう大丈夫? 世界跳躍するわよ今のうちに逃げ出さないと、大変なことになりそうよ、ヴィーナスさんもそれでいいかしら?」


「うん」


「わ、分かったよ」


「なら一旦、絡繰り世界に飛んで、休憩したほうがいいわ。儂も一緒に行くから、それでどうかしら」


「ええ、いいわよ」


「あ、あたしも行くよ」


と弥生が来た。少し不安そうに周りを見ているわね。


「じゃあ、行きましょう」


最後に現れた、杉谷を連れて、私たちと弥生は絡繰り世界に飛んだ。なんかキツネもついて来たけど?

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