5話 脱出

脱出




「ああっ、来たよ。皐月の威圧感! これじゃあ、この高度を維持できない!」


 飛ぶものを落とすあの皐月、文月の威圧! これほどとは! 蛇に睨まれた蛙の気分ってこんな感じかしら。


どんどん高度が落ちていく。そのたびに威圧感は薄らぐけど、このままじゃ墜落してしまう!


「墜落はしない! 何とかする!」


雛が頑張ってくれている。でもさ、怖いよ! 高いところが怖いのに、なんで、不時着まで体験しなくちゃいけないのよ! 怖すぎるわ!


「あそこに不時着するから、戦車の用意お願い!」


「わ、分かったわ」


たしかに敵が集まっているわね。そこに落ちるなら、移動手段がいるわ。


「0で戦車出して!」


「ええ」


「3」


緊張しているわね。少し落ち着かないと。


「2」


息を吸い込んで落ち着けさせる。


「1」


機工に手を添えて、さらに気持ちを落ち着け、そして準備を整えた。


「0!」


「機工出庫!」


不時着と同時に、戦車を出した。かなり危なかったけど、なんとかなったわ。


「このまま、走り出すわ」


何とか包囲網(敵は拳銃しか持ってなかった)を突破して、逃げることに成功。このまま山に逃げて行った。




戦車を走らせていると、通信が入ってきた。


『そこの戦車、止まってもらえるかい?』


「あんたたちが敵じゃない確証が持てたらね」


『うーん、それは無理だな。だが、僕たちはこの世界の反乱軍なんだ。君たちはあの町から逃げてきたところを見ると、敵の敵、つまり味方だと思うんだが。そして、僕たちは、今から、あの都市に攻撃を仕掛けるつもりだ。だから協力してくれないか?』


「……いいわよ。雛もいいわよね」


「う、うん、いい、よ」


『とりあえず、この戦車から降りてきてくれないか?』


「対話するのだから、そりゃそうね。機工収納」


此方に通信を飛ばしてきていた人は驚いているみたい。まあ、当たり前よね。


「き、君たち、機工使いだったのか、なら、僕たちのリーダーに話を通すから、会ってくれないかい? ん? キツネ?」


「ええ、いいわよ」


どういう事? 機工を知っている? だとすると、紀光もいるって事かしら? そんな事を考えつつ、付いて行ってみると、そこには懐かしい顔がいた。後このキツネはどこまでついてくるのかしら?


「久しぶりだね、式。そのキツネはペットかい?」


「え、なんであんたがここにいるのよ、久礼。後このキツネはなんかついてくるのよ」


「私は、此処の世界を開放するために来たんだ。式たちの方こそ、何をしに?」


「私たち? 私たちは、ここの世界の太陽神に会いに来たのよ。けど、その際に、仲間が洗脳されちゃって、まずはあの子を助けにかないといけないのよ」


「成程、なら、私たちは協力できる」


「そうね。よろしく頼むわ」


「ところで、式はあの研究所からでた後どうしていたんだ?」


「出たというか、出さされたって感じだけど、一応、睦が用意してくれていた、里親のもとに行った後、旅に出たわ」


「だから連絡が付かなかったわけだ」


「あら、連絡してきていたの?」


「ああ、あの研究所を燃やした忍びの行方を知っていないかっていうのと、円卓機工に入らないかっていうのを聞けって、周りが、うるさくて」


「ふーん」


え、円卓機工に入っているのね。って事は、今後は敵になりそうね。って忍びが放火?


「その忍びって、女の子かしら」


「ああ、そうだ。知っているのか」


皐文、どういう事? 皐文が、放火した?


「いいえ知らないわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る