19話 特訓開始

 特訓開始




周りでみんな私に向かって土下座をしている。


「疑ってごめんなさい。君のおかげで、紫波様は助かったわ。皆、文さんにげんこつ喰らって、頭が冷えたみたい」


みんな頭を地面に擦り付けて謝っている。なんか申し訳ないわね。私は戦えなかったのに。


「いいわよ。それより、紫波はどうなったの?」


「今、文さんが治療してくれているって。それと、雛と、皐月とあなたを呼んでいたわよ。何か重要な話がとか言っていたわ」


何かしら? でもまあ呼ばれているのなら、行くしかないわね。此処にいたくないし!


「ええ、行くわ。皐月、悪いけど起きて」


「うん、聞こえているよ。成程、そういう事だったんだね、それにしても、皆に崇められていい気分じゃないのかい?」


「いやよ。だって……」


私戦えなかったんだもん。怖くて動けなかったんだもん。そんな臆病者が、皆の救世主みたいな扱いなんて、耐えられるはずがない。そんな気持ちで、医療室に行くと、すでに雛は来ていた。そして元からいたであろう文が手を出して、


「……来たね。じゃあまず、武工を出してくれないかい」


「う、うう、うん」


「分かったよ」


二人は武工を出す。文は受け取ると、髪の毛に繋げる。少し目をつぶり、その後、


「……やっぱり。雛の持っている方は、位置特定機能がオンになっているね。後、他にも不都合が色々あるね。だから、私に一度預けてくれないかい?」


「う、ううん分かったよ」


「うん、僕のほうもお願い」


「……うん、二つとも預かるよ。で、君たちにはいい知らせと悪い知らせがある」


「どっちから聞くべきかしら?」


私と皐月が頭をひねっていると、


「……まずいい知らせだけど、紫波はさっき目を覚ました。そして、式、君の義手も出来上がった、いや、もう少しで出来上がるよ」


「いや、今のって、いい知らせ悪い知らせどっちから聞く? ってやつじゃないのか!」


「……まあまあ、で、悪い知らせっていうのは、武工のせいで、ゴトに居場所がバレたってこと。少なくとも上の町がもう少しで戦場と化すだろうね」


「なら、迎撃するしかないわね」


「皆を守れとは言わない。ただ、守ってほしい人がいるとだけ伝えておくよ。で、式、君の苦無を貸してほしいんだけど、いいかい?」


「? いいわよ」


その言葉に従い、素直に苦無を渡した。


「やっぱり、これ、魔吸まきゅうのレプリカだね。魔力を吸収する刀、それが魔吸。これを、君の義手に組み込むよ。それにしても、後の二人もいい武器持っているね。雛の刀は、魔化まか、皐月の斧は、斬帰ざんき、そんないい武器持っているなんて」


私たちは首を捻る。なにその武器?


「持っていて、その武器の能力を知らないのはいただけないね。先ず、魔吸は魔力を吸収、魔化は、無機物の魔力化。そして、斬帰は、斬られると二度とそこは治らない、くっつかないっていう不死身殺しの武器だよ。これらは、ある無名の鍛治屋が作ったという、7つの刀だよ。って脱線したけど、三人共、後でリストを送るから、守ってね。また、訓練施設は解放しておくよ。自由に使ってね。ほかの皆にも伝えておくから~」


「分かったわ」


私たちは強くなるために、皆で戦闘訓練を始めた。奴らが来るまでの間に。

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