8話 村へ

 村へ


「あら? まだここに居たの?」

映像の出どころを探した路地裏、そこにはもういないでしょうと思いながらも、私達は訪れたのだけど、まさかいるとは思わなかったわ。

「うん、一回出たんだけどね、怖いお爺さんに追いかけられたの」

「それでこの場所に居たのね。けどここ、もう人払いできてないわよ」

「へ? でも人こなかったよ」

「だってここ、裏道でなおかつ、ゴミ置き場よ。こんなところに女の子が隠れているなんて思わないわよ」

「そっか、じゃあ私が隠れるのがうまいだけなんだね?」

「まあそういう事かしら? それはそうと、助けてきたわよ」

「あ、お姉ちゃんだ!」

「望月じゃないか。君だったんだね。式に助けを求めてくれたのは、助かったよありがとう」

皐月は辺りを見渡していてまだ気が付いてなかったのね。

「で、誰に追われているの?」

「お爺さん」

「それって、僕たちの村の村長じゃないのかい?」

「そ、そうだけど、でも怖い顔してたもん!」

「どこじゃ! 望月! おかしいな。この辺で見失ったはずじゃが」

「村長、ここだよ」

「うっ、お主は皐月! 誤解で悪いことをしてしまったのう。申し訳ない」

「気にしなくていいよ」

さっき流しておいた映像は有効だったみたいね。あえてカメラを止めない形で、助けた甲斐があったわね。

「お姉ちゃんなんで教えちゃうの?」

「いや今から帰るからだよ。村長さんもそのつもりだよね?」

「ああそうじゃ。さっきまで望月は、皆に追われておったんじゃ。お前、何をしたんじゃ?」

「皆を説得してたんだよ。でも何故か皆話を聞いてくれなくて怒ったら、追い回されたんだ」

「けど、私達が出て来てからは、白い目でも見られてないし、ましてや追い回されたりなんて」

「あの映像じゃな。あの解放した時の映像で皆、皐月は悪くないと言いおってな、まったく遅いやつらじゃわい」

「成程。あの人本人が意図して使ったかは知らないけど、カリスマを持っていたんじゃないかな?」

ん? カリスマを使ったって何かしら?

「もうこんな町嫌! お姉ちゃん達帰ろ!」

「うん、そうだね。式、君は僕のお婆ちゃんが営んでいる、宿に泊まって行ってくれないかい」

「いいわよ。貴女の話を聞きたいし」

「じゃあ行こうか」


村に戻ると、宿のお婆さんが、暗くて寒い中村の外まで迎えに来ていた。何時からいたのかしら

「お婆ちゃん。足悪いのに迎えに来なくても……」

「ばあは、皐月ちゃんが心配だったんだよ。村長さんからメールが来て、急いできたんだから。それに子供の心配をしない親が何処にいるっていうんだい?」

「ありがとう、ありがとう!」

皐月が大粒の涙を流している。やっと助かったという気持ちになったようね。村長はどこかに消えた。やっぱり居心地が悪いからでしょうね。望月ちゃんはオロオロしている。

「お姉ちゃん。泣いちゃったよ? どうして?」

「あれは、安心したのよ。今まで気を張っていたからね」

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