第9話「13万分の1の存在」
「昼からブラッドやる。」
おお。今まで天日子が配信してきたゲームは一度もやったことないマイナーなやつばかりで、正直アドバイス的なことは出来なかったが、初めて自分が知ってるというか、かなり遊び尽くしたゲームが来たのでビビった。ヘタに詳しい分、いろいろ指示してしまいそうだ。天日子は指示厨を嫌うから匙加減に気を付けなければならない。どうする?あえて知らないフリをするべきか?いやいや、逆にこのゲームのことは何でも知ってる有識者として振る舞うべきか?コメント職人としての自分の立ち位置に迷う。まだ時間はある。攻略サイトを見ておさらいしておこう。そうそう。序盤はスタミナにパラメーターを振るのが定石なんだよね。あのショートカットを開通したら相当楽になるけど、初見は気付かないよなー。緋色のペンダントを取ってないと最初のボスを倒すのに3時間は掛かるんじゃないかなー。嗚呼どうしよう。絶対言いたくなっちゃうじゃん。自分が好きな配信者が自分が好きなゲームをやる。こんなに嬉しいことは無いはずなのに、どうして俺の方が緊張してるんだ!そうだよ!ふざけるな!俺はただの1リスナーなんだから思ったことを脳直でコメントすればいいんだよ!自意識過剰も甚だしい!何様のつもりだ!自分は13万分の1の存在であることを忘れるな!
「よう」
天日子の配信が始まった。
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