第4話「配信者の命は短い」

風呂から上がってケータイを見たら天日子が既に配信を始めていた。なんでや!9時からって言ったやん!まだ8時50分やん!そんなに俺たちに会いたいんか!かわいい女やのう!とりあえず「やあやあ」と挨拶コメントだけ残して片耳にイヤホンを装着しながら変な体勢で髪の毛を乾かす。配信開始は3分前か。予告通り今日はお掃除ゲームだ。いくら好きな配信者と言っても正直当たりハズレはある。お掃除ゲームは派手なドンパチも無くひたすら家の窓や床を拭き拭きするだけなので、退屈と思うキッズも多いだろう。だが俺は好きだ。雑談が多いし作業用にピッタリだし何より安眠用に使える。恥ずかしくて誰にも言ってないが、俺は毎晩天日子のお掃除配信を聴きながら眠っている。これが実に心地良く眠れるのだ。低音で落ち着いた天日子の声も相まって、掃除機の音すら子守唄に聴こえてくる。配信ゲームをコロコロ変える天日子だが、このお掃除ゲームは割とシリーズ化していて、本人も相当気に入ってるのが分かる。このダラダラ感がいつまでも続いてほしい。好きな配信者はマジで俺が死ぬまで配信し続けてほしい。究極の暇潰しになるからね。ま、そうは言っても天日子は事務所に所属してるアラサーの女性タレントだ。ある日急に配信業を引退しても何ら不思議ではない。もちろん俺たちには一切言わないが、付き合ってる男とかいるだろうし。てかこのルックスとトークスキルで男がいないわけないし、いても全然構わないのだが、結婚とかで安易に配信業を辞めないでほしい。それくらい天日子の配信が俺の日常に溶け込んでいるのだ。

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