統一歴14年7月20日

今日、私は君の家族のもとへ訪問したよ。私が君との婚約を破棄した後、君はカルヴァス男爵家に嫁いでいたね。当時の私は、侯爵家息女であった君が没落しかけの男爵家嫁ぐと聞いて、いい気味だと思った。本当に酷い話だ。君にとっても屈辱だったろう。上級貴族が末端も末端の男爵家に嫁がなければいけなかったのだから。

 

 私は君が住んでいたカルヴァス邸に行って驚いたよ。当時いつ潰れてもおかしくないと言われ、貸し家に住むような状態だったカルヴァス男爵家が下級伯爵が住んでいてもおかしくない屋敷を構えていたからだ。私は君の偉大さに改めて気付かされたよ。

 私は君の息子と孫に会った。向こうは私が公爵であるから、仕方なくといった感じだった。それもそうだろう、君の仇でもあるし、公爵が自分の屋敷にやってきて喜ぶ下級貴族などいない。そこで、君の話を聞いたよ。

 随分と派手にやってたみたいだね。領地の農地改革から商会設立までと幅広い。特に驚いたのが、ハンバーグが君の考案した食べ物であるということだ。私はハンバーグに出会って以来、週一で必ず食卓に出るように指示したくらい好きだ。私は君のレシピとは知らなかった。多分、周りが私に気を使って君の名前を言わなかったのだろう。それにしても、君は本当に強い人だね。君はどこにいても輝くことができる。

 私はそこにも君に嫉妬していたのだろう。

 あれは私たちが12歳のときだ。魔法の授業を受けていたとき、君は無属性しか才能がなくて、僕は全ての属性の才能があった。あのときは、君に初めて勝さるものができて嬉しくて自慢しまくったことを覚えている。しかし、その喜びはすぐに打ち砕かれた。無属性は何にも役に立たないと言われてたのに、君は無属性魔法で大賢者が使ったといわれる魔法を再現したね。大人たちも驚いていたし、私も驚いた。本当に妬ましく思ったよ。君はどんなことにも真正面から立ち向かいそれを軽々乗り越えていった、まさに物語に出てくる英雄のように。


 ともあれ、君の家族から君の話を色々聞けた。本当に楽しい時間だった。まあ、君の家族には迷惑をかけてしまったがね。何か穴埋めをしようとは思っているから、出来れば私の行動に怒らないでくれ。君の手紙を見てから、忙しい日々を送っている。久しぶりに精力的に活動をしていると思う、君と過ごした日々のように。だから、今日はもう疲れてしまった。ここまでにしよう。



 親愛なるオレリアに捧げる。

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