第41話 ピクトリアン王国からの外交の申し込み
そうやって各国と外交をしている内に、ピクトリアン王国からの会談の申し込みがあったと聞いた。
オービニエ外務大臣経由ではなく、アルンティル王国、国王へ直接の打診。
しかもセシリア・ピクトリアン・グルダナ単独で、とのご指名だった。
フレデリックは、この話を自分の執務室では無く、私のお部屋まで来てしていた。
内々の話として処理できるようにするためだと思う。
「どうする? 断る事もできるが……」
過保護だわ。相手国がピクトリアンなら、断る選択肢などないだろうに。
「わたくしの所為です。わたくしが、ピクトリアンが入っている名前を使って外交をしていたから。断ったら、アルンティル王国に迷惑をかけてしまいます」
「そなたに外交を任せたのは、俺の判断だからな。それは、かまわんが」
フレデリックは、なんだかとても心配そうにしている。この間から、フレデリックは私に少しずつ、感情を見せてくれるようになった。
「大丈夫ですよ。とりあえず行ってまいります。私の単独指名とはいえ、書記官や他の文官は連れて行けるのでしょう? 公の場なのですから」
「それはそうだが……。そなた、外交を始めてから少し大人びたな」
「そうですか? ずっと大人のふりをして外交をしてますから、そのせいだと思いますが」
フレデリックが、ふいに私の頬を手で触れる。
「そう……か」
私は久しぶりにフレデリックに触れた気がして、頬にある手に頬ずりをした。
大きな手がピクッと反応した。なんだか戸惑っているみたい。
「セシリア?」
「なんだか久しぶりで……、つい」
多分私は、不安そうな素振りを見せたのだと思う。
フレデリックは、自分のお膝の上に私を引き寄せ乗せて抱きしめてくれた。
なんだかとても、気持ちが良い。
このままずっとこうしていたいと思ってしまう。
私はフレデリックにもたれかかって、目を閉じた。
「すまんな。無理をさせて」
そんな申し訳なさそうな、フレデリックの言葉も、睡魔の中に溶けて行ってしまった。
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