第4話 林さん劇場

「私と共闘しませんか?」

林こと私は、ネコの人に提案する。


「……嫌だよ。」

放課後は西日が眩しいです─。


それは、あの日の夕焼けを思い出させました。


高校1年の秋の放課後の教室。ガヤガヤと帰っていくクラスメートの雑踏の中、

夕焼け色に染まった華麗な少女の姿がありました。


その子が帰ろうと立ち上がった際、

今がお近づきになるチャンスだと、私も下校を装い、わざと肩をぶつけてみたのです!

その子は、机や椅子にぶつかりながら、思いの外遠くへとすっ飛んでしまいました。


へたりと座り込んで、びっくりした顔がとても可愛らしくてうっとり…

いえ、見とれてる場合じゃない!

「ごめんなさい!!お怪我はないですか?!」

只今、ファーストコンタクトに成功した嬉しさを噛み締めております。


「…大丈夫。すごく飛んだね…。」と、はにかむ様子がとても眩しく、

私は目の前の魅力的な少女にかしずき─


「お詫びにこれ…もらって下さい。」

「これ…何?」

「ミドリムシ型のキーホルダーです。」

「…食べるもの?」

「いいえ、こうするものです─」そっと、私はその子の通学用カバンに取り付けました。

「……ありがとう。」


ああ、可愛い!隙がありすぎて可愛い!こうもあっさりGPSを着けさせて頂けるなんて!!



「……顔がにやけてて気持ち悪いぞ。」

そうでした、今ネコの人と居たのでした。私は、咳払いをひとつして、


「これは、悪い話じゃないと思うのです。あなたと私で妖精さんの正体を突き止めようではありませんか!」


ネコの人がぐっと奥歯を噛みしめる。

「正直あんたと居たら疲れる。出来たらつるみたくない。だけど…アイツの正体については私も気になってる。」


「私も粗暴なあなたのことはさほど興味が湧かないのですが……私と組みますと今なら妖精さんの有益な情報をお教え出来ますよ。」


「余程自信がある様だな…。その情報とやらは役立つものなのか?」


「ええ!出会いから今までの413日間を記した妖精さん日記と…こちらをご覧ください。スマホ画面の点滅している所が、今彼女の居る場所です!これらの情報から─」


何故だか、ネコの人は全身の毛が逆立つ様だとか、考えさせてくれと言って去っていきました…。



どうして私がネコの人を誘ったのか─


私は、妖精さんが擬人化の方だと知り、元は何の動物なのかという謎があるということを知り─今まで以上に探求心を駆り立てられたのです。


そして、妖精さんは今まで誰とも親しい人が居なかったのにも関わらず、直ぐ仲良くなったネコの奴─

そいつと一緒なら、警戒が薄れて色々実験……もとい、妖精さんについてより詳しく、有意義な観察が出来ると思ったのです。

…悔しいけれど…

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