act.3 緒方 寿への応援コメント
藤咲 沙久さま、「マイ・ベスト短編の里」へのご寄稿ありがとうございました。
藤咲さまは、演劇の知識や経験をお持ちなのでしょうか?たとえお持ちでなかったとしても、この作品にはとても自然な臨場感がありますね。そういえば「月下、唆すは猫。」もどこか舞台感のある書かれ方だったなあと思い出します。
人の行いには大抵の場合、「自分の為」と「ひとの為」の二面性が不可分に結びついているような気がしますので、「誰のためか」を自分に突き付けて、自責して行くような深刻さは、必ずしも好みではありません。でも、この作品は良いですね。「自分の為」であることそれ自体が悪いのではなく、「ひとの為」であるふりをすることが悪いのだというのはその通りだと思います。ただ、厄介なのは、我々が、本来、自己保存や快楽原理の本能から逃れられない動物だということかもしれません。母親には自らの命を投げ打ってでも子を守らなければならない母性が要求されますが、もしそうした場面で突然逃げ出した母親があったとしても友未には一方的に彼女を責められない気がします。他者への愛と利己的な欲望の両方を神仏のように包み込んで行けるような生き方はないものでしょうか。
テーマの焦点がシャープに定まった、登場人物に共感できるお話でした。
作者からの返信
企画立案、並びに大変丁寧にお読みくださり誠にありがとうございます。
そして『月下、唆すは猫。』の藤咲であると覚えていて頂けて光栄です。
穂村たちほどの経験ではありませんが、かつて演劇部に所属していました。なのでご指摘にはとても驚いております。微かに残る舞台上への憧れも滲み出たのかもしれませんね。
今作は、本当に他人の為だけに動けるなんて現実的なのか?それは絶対的な正義なのか?と自問を繰り返し悩みながら書きました。そこで着地したのが「他人の為を装うべきではない」という結論です。
それでも、自分に正直であることだって難しい。どう向き合っていくかはそれぞれ個人に委ねられている、という意味でも二人の目線で描くことにしました。
長々とお返事してしまってすみません。テーマの定まりを感じてもらえ、また、共感を持って頂けたこと、とても嬉しいです。
ありがとうございました。
act.3 緒方 寿への応援コメント
忖度なしで感想を書きます!
にご参加ありがとうございます。
面白かったです。
人物の葛藤や苦悩にリアリティがあり、説得力がありました。
演劇の台本から物語を始めるというスタイルで「奇を衒っただけで中身が伴わないんじゃないの~?」と斜に構えておりましたが杞憂でした。
相手の為ってなんなんでしょうね。
緒方がラストシーンで言う台詞も、結局「他人を思いやるフリをした“自分の為”」から「シンプルに他人を思いやることをやめた“自分の為”」だよなあ。
そこがちょっともやっとする気はします。
緒方の内面で物語が終わっていますが、焔、もとい穂村がどういう感情だったのかも絡めてカタルシスのある終わり方が出来たらいいな、と思いました。
でもまあもやっとする終わり方も一興ではありますよね。というもやっとする感想。
作者からの返信
企画立案、ならびにご感想ありがとうございます。
面白かったと言って頂けて、素直にホッとしました。
作中で焼かれる胸の裡や「相手の為」とは何かという問いは、形は違えど自分の中で感じ続けていたものが根元だと思っています。
まだどこか結論が出せていない部分、そういった点が制作中も二転三転した緒方の決意に大きく絡んでおり、それが「もやっ」に繋がってしまったのかもしれません。
時間をかけて、さらに研ぎ澄ませるのではないかと感じている作品でもあるので、吉沢さんのお言葉や感じられたものを今後参考にさせて頂きたいと思います。
ありがとうございました!
act.3 緒方 寿への応援コメント
自主企画にご参加くださり、ありがとうございました。まったく、才能っていう贈り物は意地悪に分配されるようになっているんですかね。本作を拝読させていただいて、なんともコミュニケーションというものの難しさのようなものを感じました。才能溢れる者に嫉妬を抱きつつも、冷徹漢になれない優しさに似た不器用さとか。役を思うからこそ、意外と役の向こう側にいる役者の姿が見えていない凶器のような真っすぐさとか。互いの”視線”を合わせて切磋琢磨しあえる関係性になれれば良いのでしょうが、人間とは簡単なものではないですね。
作者からの返信
こちらこそ、お越しくださりありがとうございます。
役者にもなれない穂村が秘める才能。それはトップ俳優であるはずの緒方に足りないもの。確かに意地の悪い分配ですね。互いに互いが羨ましい。
これから二人が胸を燃や合いしながら、どうか成長していけることを祈っています。
ご感想をありがとうございました!