第28話

それから暫くすると、どこからともなくリンリンと音が鳴り響いた。


「フフ、やっと念話連絡が来たわ。」


そう言うと、左手を左の耳に当てた。


「フフフ、遅いわよ。」

・・・・・・・・・裏工作が長引きまして。」

「それで?」

・・・・・・・・・・・・結果としては失敗しました。」

「あらあら、ダメじゃないの~」

・・・・・・・・申し訳ありません。」

「仕方がないわね~私が何とかしますね。」


そう言って念話連絡を切り、机の一番大きい引き出しの中をガザゴゾと何かを探し始めた。


「あったわ~」


手には手のひらサイズの巻物を持っていた、その巻物を広げると魔法陣が書かれており、魔力を通すと淡く光りだした。


「何ようだ?リューデ・ゼよ。」


しばらくすると魔法陣から男の人の声が聞こえた。これはスクロール羊皮紙の巻物に付与魔法で書かれた魔法通信で、念話より遠い距離の会話を可能としている、ただ一つの魔法陣で対のスクロールしか登録できない、会話は周りに丸聞こえとデミリットもある代物だ。


「ポール商店の事よ~」

「あそこか。」

「潰しても良いかしら?」

「・・・あの店の噂は知っておる、だが多くの貴族が好意にしている店だ、簡単には了承しかねる。」

「フフフ、そのようなことを言って良いのかしら?」

「む!・・・まさか脅す気か?」

「フフ、脅す?例えば最後のおねしょが、じゅう・・・・」

「あーーーーーーーーーーー!」


よっぽど恥ずかしいのか、相手が大きい声でリューデ・ゼの声をかき消した。


(話し相手は、おねしょを最低十歳までしてたのかよ。)


「あらあら、そのように大きな声を出さなくても。」

「誰が出させた!」

「なら、私からのお願いを聞いてくれないかしら?」

「・・・了解した。ただ半時ほど待ってほしい。それとこのような手段は使わないでくれるとありがたいのだが?」


「まったく・・・・・・・」しぶしぶ承諾したのだろう、ブツブツと何か言っているが聞こえなかった。


「フフフ、善処いたしますわ。」


魔法通信が切れると。


「ふぅ~昔は可愛かったのにお姉さんに反抗的になっちゃって~」

「通信相手は弟さんでしたか。」

「違うよ?」

「だってお姉さんって。」

「フフ、昔この子が私をお姉ちゃんって呼んでいたのよ、今では偉くなって皇帝だもん月日が流れるのは早いわね~」

「「「こ!皇帝様!!」」」


この国で一番偉い皇帝様が最低十歳までおねしょ!


衝撃的な情報をサラッと暴露するリューデ・ゼ。


「それでは少し食べてから行きましょうか、それなら半時はかかりますからね。」

「え?付いて来るのですか?」

「フフフ、ええ、あの豚には借りがありますからね。」


こうして一時的に行動を一緒にする事になったリューデ・ゼ。


・・・あ!ず~と静かだったベチャリリスの存在を忘れてた!


あ~~~ビューヘルンの顔がめちゃくちゃ不機嫌だ。

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