翼剣のグラディアトル
前河涼介
ベイロン・コンバット・コンペティション
【定義】
この競技会はかつて実在した飛行機の精密なレプリカを用いて行うデスゲームである。
【共通項目:使用機材】
1.使用する航空機は設計図その他資料によって、構造・材質等を完全に特定し得る機種に限定する。再現にあたって独自の設計・改造を施すことは認めない。
a.したがって基礎的な工作技術の差に基づき、性能・整備性・可動率に史実と差異が生じる点は許容する。
b.たとえ設計上の欠陥があっても修正してはならない。
c.燃料・機械油等は設計段階で想定した性能のものを使用する。
2.使用する航空機の塗装は史実において運用した実績のある国家・部隊のマーキングに則って行わなければならない。
a.塗装の剥がれ、脱色、汚れの再現は任意とする。ただし資料で確認できる以上に過度なものは認めない。
b.チームを組む場合、同一機種の塗装は同一のものとするが、戦闘と爆撃など明確に用途が異なる場合に限り、部隊の別は許容する。
c.操縦者識別の目的に限り、部分的な彩色・エンブレム等のマーキングを認める。マーキング面積の合計が機体表面積の1割を超えてはならない。また国籍マークに上塗りしてはならない。
【個別項目:殲滅戦】
1.2機と2機によるチーム戦である。先にチーム全機が被撃墜あるいは地上撃破によって飛行不能となったチームの敗北となる。操縦者の負傷・死亡による飛行不能もその条件に含める。
a.パイロット、使用機種等の構成は相手チームには明かされない。
b.マッチングはエンジンの公称出力に従って制限する。1000馬力、あるいは5トン以上出力差のある機種がマッチングすることはない。双発機以上の場合はエンジン1基あたりの出力で判定する。
2.戦闘空域はファロンG2空域内の120×120kmの範囲、通称「暗礁空域」(※1)とする。各チームは戦闘ごとに指定される40×40kmの範囲から根拠地となる島を選び整備・補給班を配置する。根拠地の所在は相手チームには明かされない。
a.燃料・弾薬は根拠地以外の島にも用意されているが、その場合補給はパイロットが自力で行わなければならない。
3.整備・補給班は整備・補給に関する任務以外は中立であり、偵察・監視等は行わない。整備・補給班を攻撃、あるいは盾にした場合、そのチームは審判機によって撃墜または地上撃破される。
4.戦闘開始は根拠島の滑走路上で行う。以後24時間の間に決着がつかなかった場合、任意の隣り合う島から同時に発進してサドンデスを行う。
5.空域内の島への降着は制限しないが、地表への降着は被撃墜とみなす。
6.空域外への侵入は逃亡とみなす。敵チームとの明確な交戦状態が確認できない場合、当該機は審判機によって撃墜される。
【註】
※1:かつての要塞線の一部。高さ約2500mの小規模な塔が約5㎞間隔で立っており、いずれの小塔にも小規模な前線飛行場が備わっている。ただしすでに100年以上前に遺棄されており、軍事施設としての機能は持たない。
(『ベイロン・コンバット・コンペティション・レギュレーション 二訂版』(4104年)より抄出)
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