(二)‐8

 工場の中は何もなかった。天井高も高く二階か三階建ての建物くらい高かった。壁際にはパイプや廃材などが重なって置かれていたが、すでに大部分を処分したのだろうか、あまり残っていなかった。そんな広い空間の真ん中に椿は仁王立ちし、缶のプルタブを立てて中に充填されていた窒素を逃がした。歌子とクロエもそれに続いた。

 椿はじっといずみを見ながら「まあ、あんたも飲みなよ」と言った。

 いずみは「頂きます」と小さく言ってプルタブを立て、中身を一口飲んだ。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る