こんなんなっちゃった
門前払 勝無
第5話
知れば知るほど小さくなっているー。
風に揺れる花のような笑顔達に浮かれて、柔らかい雨のような涙の毒に騙されて、何人殺しても次々に出てくる心が腐ったゾンビ達と戦ってきた。
鏡を見ると返り血で汚れた自分が映っている。
“もう終わりにしよう”
魔王の居る最上階へ行くと、そこには勇者がいた。
望んでいたモノと違うモノになっていて、ケーキを食べたいのに寿司を食べていて、暖かい布団に入りたいけど深い池に落ちちゃって、トンボみたいに空が飛びたいのにダンゴムシみたいに地面を這いつくばっていて、結果的にこんなんなっちゃった。
普通とか常識とか異常とか…。
隣と同じじゃないと認められない、認めてもらいたい訳じゃない。
青い鷹はマユコの肩にとまった。
「ジャックは何処に行こうとしてるの?」
「俺は彷徨ってる…目的も理想も無い」
「アタシは普通になりたい…小さい頃は見えないモノを見て過ごしていたけど…今は…」
「俺は俺の道を進んでるんだけどね…周りから邪魔される」
「昔は空も飛べたし目を光らせてレーザー光線を撃てた。仲間と冒険もしたのに気付いたら大人になってて独りぼっちになってる」
「馴染もうとするからだ」
「でも、馴染まないと生きていけないよ」
ジャックはマユコの手を握った。
今にも落ちてきそうな重そうな空を見上げた。
しばらく二人で見上げていると雲の切れ間から明るくなってきた。切れ間に続く階段が現れて二人で上り始めた。
「なんか来るぞ!」
青い鷹が下の方を見た。
階段の下から気持ち悪いゴブリン達がワサワサ着いてきている。
ジャックはナイフを取り出して、マユコに先に行くように促したが、マユコはジャックの隣に立ち目を光らせてレーザー光線をゴブリン達に放った。ゴブリン達は身体が真っ二つに切り裂かれた。
「二人で行かないと意味が無いよ」
「いや、そうだけど…すげぇ強いな!」
二人は一歩づつ進みながらも後ろから迫り来るゴブリン達を蹴散らした。
青い鷹は少し離れた所から応援している。
ジャックはポーズをとって昔観ていた仮面ライダーブラックに変身してみた。すると若干薄いブラックに変身出来た。しかし、仮面ライダーは肉弾戦だからゴブリン達と肉弾戦で戦ったー。
マユコはレーザー光線の威力をドンドン高めてナウシカに出てくる巨神兵の一撃位の威力で下界を焼き尽くしていった。
「なんだか力の差が凄すぎるな!」
ジャックはマユコのレーザー光線に圧倒されている。
「俺はキックとパンチなのに!」
少し疲れてきているジャックは小休止で煙草を吸っている。
「なんか燃える街を見てるとワクワクしてくる!」
マユコは街をも破壊し始めた。
二人が進む方向へ階段は伸びていき、無限に増えてくるゴブリン達が着いてくる。
二人で世界を破壊し続けた。
何日も戦った。
たまに休憩をして下界を眺めると、ゴブリン達は住むところを失って難民キャンプをあちこちに作っていた。赤十字の旗を揚げた馬車には怪我したゴブリン達を運んで、子供ゴブリンに食料を与えたり、戦争時の人間と同じように不幸がたくさんあった。
それを見たマユコは目を瞑り両手を上に上げて呪文を唱えた。
ジャックも隣に立ちマユコの手を握り一緒に呪文を唱えた。
二人の頭上の分厚い雲が渦を巻いて空一面を覆った。雷が唸り竜巻が何本も現れてゴブリン達の難民キャンプは大混乱に陥っている。
渦はみるみるうちに巨大になり地上の全ての物を巻き込んで吸い込んでいったー。
そして地球は…ただの白い丸になった。
マユコとジャックは白い球体になった地球を後に階段を登って行ったー。
「なんだかスッキリした」
「エンディングっぽいね」
「だね!」
太陽と月の光に照らされた地球は他のどんな美しい星よりも輝いていた。
おわり
こんなんなっちゃった 門前払 勝無 @kaburemono
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