告白を断り続ける美少女がエロ小説ばかり読む俺なんかと恋仲になったワケ
文嶌のと
告ワケ
高校三年 春
第1話 秒でフラれたんだけど
ここは高校の屋上。
そして今、俺の目の前に長らく片思い中の彼女が立っている。
彼女の名前は
誰とも付き合わない事で有名な学校一のモテ美少女だ。
彼女を好きになった理由にやましい気持ちなど微塵も無かった。なんて可愛い美少女なんだ……ペロペロしたい、ただそれだけなのだ。
この場に居るのは二人だけ。そう、俺は彼女に告白する為にここに居る。彼女の下駄箱に俺の名前入りラブレターを入れておいたが、屋上に来てくれたみたいだ。名前を見た上で、となると、もしかして脈ありなのかと意気込みながら、
「あの……鈴城さん。俺と付き合って下さいっ!――」
「イヤっ!」
一瞬にして俺の想いは打ち破られた。冬の冷たい風を受け、余計に切ない気持ちになる。
「寒いから、もう行って良い?」
「あ……うん」
鈴城さんはすぐに屋上を去って行った。
こうして、高校二年最後の月はフラれる苦い思い出と共に幕を閉じた。
* * * * * *
月日は流れ、高校三年の始業式がやってきた。
俺が通う都立
その中でも、鈴城さんのモテ具合は別格で告白する男子が後を絶たなかった。どれ程告白されようとも鈴城さんは誰とも付き合う事は無かった。
正門を通り、左手の掲示板付近に目をやると多くの生徒が集まっている。新しいクラス名簿を確認しているのだ。皆、口々に『また一緒のクラスだ。宜しくね』とか『ああーん、彼氏くんと別々のクラスになっちゃったよー』とか言っている。友達の居ない俺には全く関係の無い話だ。定義上ボッチという位置付けかも知れないが、話し掛けたいと周りが思っていても俺のオーラを感じて去っているだけだろう。俺は友達が居ないだけで、決してボッチなどでは無い。
だが、教室の場所を確認する必要がある為、仕方なく掲示板の方に歩みを進める。
一学年五クラスずつに分かれており、見ると俺は三年B組だった。金○先生かよ、と心の中で呟いた。そう、あの腐ったみかんエピソードで有名な。今、腐っているのはフラれた俺の心だが。
クラス名簿を確認すると鈴城さんの名前があった。
――ゲッ、一緒のクラスなのか。気まずいな。
二年間一度も同じクラスになった事が無かったというのに、今年に限って一緒だなんて不運にも程がある。まだ始まった所だというのに、もう憂鬱な気分になった。
教室に向かう前に講堂で始業式を受けなければならない。講堂は正門から真正面に位置し、左右に東館と西館が建っている。講堂入口の下駄箱に靴を入れ、スリッパを履いて講堂内へと入った。
立って始業式を受けるのだが、立つ場所は学年とクラス毎に位置決めされている。自分の定位置に着いた後、周りを見渡したが、鈴城さんの姿は見当たらなかった。出来れば会いたくないのでホッとする。
始業式が始まってすぐ校長先生の話になる。校長先生の話はとても長いので、始まる前から憂鬱になった。予想通り話は長かったが、普段よりも更に長かった。
――勘弁してくれよ、校長先生。立ってるの、疲れてきたよ。
学校関連の話をされるならまだしも、途中から『最近雨が降らないから家庭菜園が干上がっている』とか『春休みに食あたりして入院していた』など話が脱線し、周りの生徒は皆、怒りの表情を浮かべていた。
ようやく話が終わり、生徒会長の話に変わる。生徒会長は去年に引き続き、
やっと始業式から解放され、皆が新しい教室に向かっていく。俺も向かおうと下駄箱を開けたが、靴が見当たらない。
――あれっ、おかしいな。このままじゃ靴下で登校になる。
辺りを見渡すと、踏まれてドロドロになった靴が一足。
――コレ、俺のじゃないか! 酷い、おニューなのに。
これぞ踏んだり蹴ったりである。仕方なく泥だらけの靴を履き、新しい教室に向かった。
今年の教室は西館三階だった。靴事件で時間を取られた為、恐らく到着したのは一番最後だろう。
――トリで登場って、注目の的だろうな。
ガラガラと音を立てながら堂々と扉を開けて中に入ると、クラスメイトは皆ちらりと俺の方を見てすぐに目を逸らした。恐らく、俺のオーラがそうさせるのだろう。
出席簿順に配置された席から自分の席を探す。無事に発見し、着席するとすぐに担任が入ってきた。
「皆さん、おはようございます」
今年の担任は学校一の人気女性教師だった。歳は若く、綺麗で優しい。更に巨乳ときている。この点だけは幸運だった。去年の担任はスパルタ男性教師だったが、本当に地獄だった。思い出しただけで吐き気がする。あだ名は確かゴリマッチョ。成績が悪い俺は何度廊下に立たされた事か。今の時代、廊下に立たせるなんてあり得ない。野○、廊下に立っとれ、の名シーンが頭の中に浮かんでいた。
「今年、三年B組を担当する事になった
男女問わず人気の高い千鶴先生に対し、歓声が上がっていた。
「出席簿順の並びってつまらないわね。そうだ! 今から席替えしましょう」
その提案に皆は喜んでいるが、俺は不安でしかない。俺がサで鈴城さんがスの為、現状では鈴城さんの席から俺の席は見えない筈だ。隣になったりなど絶対にしない。だが、席替えなら話は別だ。隣になる事もあり得る。あんなフラれ方をした後に隣にでもなったらそれこそ目も当てられない。
「それじゃあ、クジを作ったから順番に引いて行って」
千鶴先生が即興で作った
ついに、俺の順番が回ってくる。
――兎に角、鈴城さんの隣以外でお願いします。
引いたクジをその場では確認せずに自席に戻る。戻った後にゆっくり開封し、書かれている番号の位置を黒板で確認する。
――一番後ろの列の左窓側から二つ目……か。
「みんな、引き終わった? じゃあ、新しい席に移動して下さい」
千鶴先生の掛け声に皆が一斉に散る。一抹の不安を残しつつ、俺も移動を開始する。
向かうと、左隣の窓際にはすでに座している者が一人。
――ッ! あの金髪のロングヘア。まさか……。
あれほど神に祈った筈なのに、神は俺を見放した様だ。
そう、そこに鎮座する少女こそ鈴城さんだった。何も声を掛けず、静かに自分の席に座った。鈴城さんはずっと窓の外を眺めているので、まだこちらに気付いていない。
「じゃあ、まずは隣同士で仲良しに、って事で自己紹介し合って下さい」
――な、なんだとっ!
何も知らぬ千鶴先生は容赦なく俺に追い打ちをかける。千鶴先生の言葉に反応し、鈴城さんがこちらを向いた。
「あっ! アンタ、あの時の……」
やはり鈴城さんもあの時の記憶を残している様だ。とても嫌そうな表情をしている。
「ど、どうも」
俺の言葉を無視し、鈴城さんはまた窓の方へと目を向けた。
「あのぉ、自己紹介しませんか?」
「アンタ、私のこと知ってるでしょ」
「だよね。鈴城さんも俺のこと知ってるよね。手紙に名前添えといたから」
「もう忘れたわ」
まだ数週間しか経っていないというのに忘れられている。もっと奇抜な名前に生まれておけばと後悔した。
「じゃあ、俺の名前教えるね」
「別に知りたくないわ」
「そんなこと言わずに。俺、
「はいはい」
鈴城さんは嫌々右手を振って愛想をした。最悪な再会に今後の学生生活が不安でしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます