二人の旅路

@chauchau

第零話 価値のないプロローグ


 人類が初めて手を取り合うために必要だったのは、強大な敵の存在だった。

 個々としての能力に秀でていようとも決して群れることがないとされていた魔族を纏め上げた魔王の出現に、有史以来最初の、そして最後と揶揄される共同戦線が組まれることとなる。

 そこからの歴史は幾分割愛させていただくが兎にも角にも、滅びかけた人類を救済し魔王を討伐したのはたったひとりの男の活躍だった。勇者と歴史に名を遺す彼のその後はどの文献を探そうとも記されてはいない。


 魔王が倒され人類に平和が戻ってから早二百年あまり。人類が勇者の名も魔王の恐怖も忘れてしまうには、充分すぎるほどの時が流れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る