第四章

 雄一が譲二の持つ出先のフランス料理店で働き始めてから二ヶ月ほどしたある日、フランス南部にある、波が激しく打ち付ける岸壁の下で黒い塊が浮いていた。近くを通った漁船が見つけて引き揚げたところ、すでに半分ほど腐敗して魚などに食われた状態の人間の腐乱した死体だった。

 死体を見つけて驚いた漁船の船長は、慌てて警察に連絡を取った。警察の調べではおそらく崖から落ちた、または突き落とされて死んだものとされた。その死体は傷みが激しかったことから身元が判明するまで時間がかかったが、数少ない所持品などの情報から日本人であることが判明。その名は河原圭、といった。

 圭が見つかった、という報せを雄一は彼の父親から連絡を受けた。フランスで、しかも死体となって、である。

「圭が……」

 雄一は信じられなかった。いや彼が死んだなんて信じたくなかった。

 彼の父の話では、あの店の騒ぎから圭は身を隠すように一人フランスに渡ったようだ。しかしそこで働くでもなく、ただ静かに身を潜めていたらしい。彼の父は連絡先だけは聞いていて、時々話をしていたそうだが、ある時から連絡が取れなくなったという。心配した彼の父は、しばらくしてからフランスの警察に捜索願を出した。

 それが幸いだったのか、死体が圭だとわかって警察から日本に連絡があったというのだ。彼の父は病気で体を壊していたため、雄一の同級生だった今は大手商社に勤めているという弟が、代わりにフランスに渡って身元確認や死体の引き取りなどの手配をしたらしい。

 雄一から圭が死んだという報告を電話で受け、話を聞いていた譲二が尋ねた。

「事故なのか」 

「いえ、詳しくはわからないようです。ただ、」

 店の電話からかけていた彼は、受話器を握りしめながら言いにくそうに言葉を一度切ってこう話しを続けた。

「薬物の反応があったようで」

「薬? 睡眠薬か、それとも」 

「ヘロイン、だそうです」

「ヘロイン? 圭が麻薬を使っていたとでも言うのか?」

 譲二は思わず厳しい口調になって尋ねた。

「詳しいことは分からないそうですが、フランスの警察は日本での騒ぎを苦にしてフランスに渡ってから薬物に手を出したのではないか、という見解だそうです。その麻薬の入手経路を調べているようですが、圭はフランスでは過去に知り合ったフランスでの友人などには近づかないようにしていて、極力人と接しないように、それこそ隠れて生活をしていたそうです。だからなかなか本当のところが分からないようで。薬を摂取して自殺したのか、薬で意識が朦朧として崖から滑り落ちたのかどうかも」

 雄一は圭の父親から聞いた話を泣きながら言った。

「わかった」

 譲二はそう言って電話を切った。そしてすぐに携帯の登録から涼介の番号を探しだし電話をかけた。彼はコール一つで電話に出た。

「涼介さん。申し訳ないですが、フランスに飛んで欲しいのですが」

「フランス……圭っていうシェフの件だな」

 彼が答えた。譲二から圭の死体が見つかった場所や隠れ住んでいたフランスでの情報を聞いて電話を切った涼介は、以前いた古巣の上司に携帯をかけて連絡した。

「「藤堂とうどう」さん」

 電話の向こうで少しの沈黙が続いた。そして

「ちょっと待て」

 そう言った男は周りを気にするような素振りで、どこかに移動しているような気配がした。しばらくして

「涼介か、久しぶりだな」

 「藤堂」と呼ばれたその男は、重厚な声で、しかし親しげに答えた。

「今よろしいですか」

 涼介が尋ねると

「ああ、自分のデスクに戻ったから大丈夫だ。周りに人はいない。だが手短に頼む」

 そう男が答えたため、要件を口にした。

「フランスで起こった、日本人の河原圭というシェフが死体で発見された事件の情報が欲しいのですが」

 涼介の古巣の上司と言えば警察の人間だ。しかも今から八年前に警視正まで務めた涼介の上司といえばかなり権限を持った上位階級である。さらに「藤堂」という名前は男の本当の名ではない。いわば、涼介とその男の間で通じる呼び名、符丁であるといえる。

 用件を聞いて「藤堂」はまたしばらく沈黙した後、涼介に質問した。

「今回は、それでどういった成果がある?」

 事件自体、情報自体にどれだけの価値があるのかを測るような口調だった。いつものことである。涼介は即答した。

「人を殺しておきながらのうのうと逃げ延びて生活している奴らを捕まえること。麻薬を使った犯罪をあぶりだすこと。そのルートを潰すこと。おそらく関わっているであろう暴力団の一部を潰すこと。そうすることで、そいつらの犯罪被害に遭うであろう人々を最小限に食い止めること、その後」

 まだまだ続きそうな涼介の言葉を「藤堂」は遮った。

「わかった。事件の詳細と知りたい情報を教えろ」

 「藤堂」は気が短い。それもいつものことだ、と思いながら涼介は淡々と詳細を説明し始めた。 

 電話を終えた涼介は、リヨンに本部があるICPO(国際刑事警察機構)の事務総局職員に連絡した。日本の警察庁からはICPOに対し数名が事務総局の職員を派遣している。日本はICPOにはアメリカに次ぐ分担金を出し、財政的な貢献をしているだけでなく、人材も派遣しており、過去には総裁、副総裁、執行委員も輩出しているのだ。

 涼介は警視庁時代、警察庁に出向したのち一年間ICPOに研修生として派遣されたことがあった。FBIへの派遣経験もある。そこで培った人脈が今も残り、現在ICPOで重要なポストについている日本の職員の中に涼介の仲間がいた。

「おう、涼介。久し振りだな。どうした、何かあったのか」

「警察庁から正式に依頼が来ると思うが、先日エズの海で死体となって発見された河原圭という日本人の件で調べてもらいたいことがある。俺もこれからすぐにフランスに飛ぶ予定だ」

「そういう情報はまだこちらには来てないが」

「今のところ、ただの日本人観光客が事故か何かで死んだ、という程度の扱いしか現地の警察はしていないようだからな。ただこの事件には裏がある。日本の暴力団や他にも関わっている人間がいる筈だ。詳細は警察庁から正式な依頼書が届くはずだが、それより早く耳に入れたほうがいいと思ってな。あと俺が個人的にも動くから情報を回して欲しい」

「警視庁を辞めて今現在、一般人であるお前にか?」

「ああ、そうだ」

 彼は少し考えた後、

「判った。いつこっちへ来る? お前の連絡先を教えてくれ。こちらに着くまでにそれなりの情報を収集して伝えられるようにしておく」

「有難い。そっちへ着いたらまた連絡する。その時は高級ワインとチーズをご馳走するよ」

 そう言って自分の連絡先を伝えた後電話を切り、女性事務員にフランス行きのチケット手配とリヨンとエズの二カ所のホテルを抑えてもらうよう、宿の手配も依頼した。

 

 

 涼介の助手でIT会社の社長もしている香川謙太郎かがわけんたろうは、自分の会社の男性従業員五人を使って生命保険会社の女性社員と合コンをさせた。その生命保険会社は菅沼ひとみの勤めている会社と同じだ。ひとみとは全く面識のない別の部署にいる女性社員達もいる。

 合コン会場近くにあるコインパーキングに止めた車の中で、謙太郎は従業員が持っている隠しマイクから聞こえる音声と、隠しカメラから流れる映像を確認していた。

 その合コンの席で、男がパソコンのUSBにつなぐグッズを女性達に見せた。それは小さなクマの人形がついていて、パソコンに繋ぐとクマがあくびをしたり、目をパチパチしたり、足をバタバタさせたり、とかわいいしぐさをするものだ。

「キャー!かわいい〜!」

 と女性達には大好評だった。

「これ、俺の会社で作っている試作品なんだけど、欲しい?」

「欲しい、欲しい!」

 女性達は競って、そのUSBグッズを我先にと取りあった。

「これを会社のパソコンにつないで置くと、愛らしいしぐさで仕事中の君たちを癒してくれるから」

 男がそう説明すると、女性達は

「早速明日から、会社のノートパソコンにつけよう!」

「私も! 他の子たちに自慢しよう!」

と盛り上がっていた。

 このUSBは盗聴器の役目をしてくれるものだ。パソコンの電源で動くため、電源が入っている間は半永久的に動いてくれる。それだけではない。パソコンの中のデータを外部から操作して取り出すこともできる優れ物だ。

 謙太郎達は、合コンの翌日からそれぞれの女性達の勤めるオフィスの近くに張り付いた。ある社員は車の中で、ある社員は近くの喫茶店で、彼女たちのパソコンにつないだUSBから拾える電波で社内の会話を録音し、またパソコンの中のデータを取り込み、彼女達の設定するパスワードなども読み込んだ。

 それらのパスワードを使い、彼女達の所属する生命保険会社の契約データを外部から操作し、菅沼ひとみの扱う契約やひとみの支部が扱う契約を調べ、大量のデータを紙にアウトプットした。

 そして生命保険の内容に関してはプロである保険代理店の事務所に持ち込み、そこの従業員達に手分けして見てもらい、不正や架空契約とみられる怪しいものを見分けてもらった。

 そうして怪しいと思われるものをピックアップし、契約が実在しているか、または不正契約かどうかをまた盗聴などや別のデータを調べるなどをして確実に裏を取っていったのだ。その努力の結果、謙太郎は菅沼ひとみが不正した契約をいくつか確定させることができたのである。

 

 

 雄一は考えていた。譲二さんに相談した、もう一つの悩みのことを。

 圭と雄一の店は食品偽造騒ぎによって保健所の立ち入り調査も行われ、そして非難を浴び客足が途絶えたことにより店を閉めた。だが厳密にいえば自主廃業である。倒産ではなかった。圭の店はもともと父親からの潤沢な資金援助によって開店し、すぐに店は軌道に乗ったため収益はしっかり確保できていた。

 雄一の二号店開店も五年をかけてじっくりと資金を貯めた後のことだったため、店を整理した後借金は全く無かった。設備投資などのため銀行から融資も受けたが、取引上のため一時的に利用しただけにすぎず、店の自主閉鎖を決めた後返済もすぐに行い従業員への補償なども十分できた。

 その手続きなどは圭が姿を消していたため彼の父親が弁護士を雇い、さまざまな手続きを代理で行ってくれた。雄一もその後処理を手伝った。自分の店に関しては被害が大きくなる前にすぐ手を打ったため、特に大きな問題はなくすぐに片付けることができた。そのため、後処理の大半は本店に関することが多かった。

 その為帳簿などの書類の整理、処分や圭自身の私有物の片付けなどを手伝ったのである。対外的な手続きは弁護士が中心に行った分、店内についてのこまごまとしたことは雄一に任されていたのだ。

 一度だけ、雄一の同級生である圭の弟が、姿を消した彼の荷物などを取りに店へやってきた。雄一が事前に整理しておいたが、何かを確認したり、あれやこれやとしばらく店内をうろちょろしたりしていたが、雄一とはほとんど口をきかず二時間ほどして圭の荷物を持って彼は帰った。

 圭とは料理を通じて深いつながりを持ち、彼の父親とも店の経営などに携わるため出資者と現場経営者という立場で少なからずつながりはあったが、同級生である彼とは中学の頃からほとんど話もすることなく、不思議なことにその後も親しくすることはなかった。彼とはなんとなく合わない感じがして、距離を置いていたためでもある。

 その彼が来る前に店の整理をしている中で、気になるものを見つけていた。店にある食材や調味料などはほとんど処分されていたはずだったが、事務所の棚の中の奥から出てきた小さな瓶に入ったわずかな調味料らしきもの、そして奇妙なメモがでてきたのだ。

 そこにはフランス語で「調味料」「配合」「調達」そして仕入れの日付らしき数字と「K・Kが取り寄せた」という走り書きがあった。

 雄一はパソコンに残っていた圭の店における仕入れの内訳や、紙で残っている伝票もチェックした。食品偽装騒ぎの元となった食材に関しては、やはり雄一の知っている圭ならば、通常では仕入れない下級品の肉や魚が混じっていた。

「これか。圭がこんな食材を仕入れて産地を偽って出していたなんて信じられない」

 雄一はどうしても納得できない。こんな食材で仕入れ値を下げて高い料金で料理を出し、その差額を累計していけばその金額は決して小さな額ではない。

 だが店の経営は順調で、彼がお金に困っていたわけではない。また彼自身もそんなお金を私的に流用するような貧しい生活はしていなかった。逆に特別贅沢な暮しをしていたわけでもない。しっかりとした給与も得ており、またそれまでにフランスで稼いだ貯金も相当な額になっていたはずだ。なによりも彼はお金に執着するような人間ではなかった。雄一以上に美味しい料理を、感動を、喜びを感じられるものをお客様に提供すること、そのためだけに彼は料理を作り続けてきたといっていい。

 そんな彼がなぜ偽装をしたのか。疑問はそれだけでない。仕入れの中に雄一の知らない調味料らしきものを何度か仕入れている。これはなんだ?

 本店にいた頃はこんなものは使っていない。雄一の店でも使ったことのないものだ。圭は独自に新しい調味料を試していたのか? 雄一に内緒で? 事務所から出てきた小さな瓶の調味料らしき粉末がそれなのか? そこで瓶についているわずかな粒だけを小指でこすりとって舐めてみた。味わったことないものだ。うま味調味料の一種か? 味は悪くない。なんとなく癖になりそうな、そんな感覚を覚えた。

 さらに意味不明だが、何故か気になったのがメモだ。「K・Kが取り寄せた」というのは圭のことだろう。河原圭、イニシャルはK・Kだ。あの不思議な調味料を仕入れたのが圭で、その仕入れの日や調味料の料理との配分、配合を記した単なる走り書きなのか。

 雄一はこれらの気になる事柄を全て譲二に打ち明けた。すると彼は専門家に調査を依頼したいからというので、メモや小さな瓶、さらに店のデータや帳簿などをすべて持っていった。譲二のことは信頼している。全て任せたのだ。雄一はそう思い直した。

 

 「城ケ咲ビル」一階にあるフランス料理レストラン「レ・ジュ・ドゥ・ラーンジュ」からは、香ばしく甘酸っぱい、食欲をそそるような香りが漂ってきた。

 雲一つ無い青空が広がり、じんわりと汗ばむ陽気な昼下がりに、譲二の店は定休日で閉められている。しかし店の中からは匂いだけでなく、数人の小さな話し声が聞こえた。

「お待ちどうさま」

 先ほどから匂ってくる良い香りの元、ブルーベリーと赤すぐりのタルトを持って譲二が厨房から出てきた。

「わあっ、美味しそう!」スイーツには目がない恵子の頬はゆるんでいた。

「何度も言っているだろ。美味しそう、じゃない。美味しいんだって」

 笑いながら譲二はタルトを切り分け始めた。

「ありがとうございます、譲二さん」

 榎木智子えのきともこ阿川英吾あがわえいごが同時に礼を言った。智子は弁護士で、このビルの三階にある「榎木弁護士事務所」の所長である。

 年齢は三十二歳。最高裁判事の父を持ち、この若さで五人の弁護士を抱える事務所を設立しており、顧客には上場企業もあるかなりのやり手だ。恵子とは違ったタイプで、背が高く胸も大きく脚も長い。ロングヘアで色っぽく、しかし眼鏡をかけていて知的でいかにもキャリアウーマン、といった美人タイプだ。

 かつての彼女は引き締まった体でモデルのような体形をしていたが、今は妊娠七ヶ月でお腹が大きく、残念ながらそのスタイルはやや崩れてしまっている。

 阿川英吾は同じビルの二階にある「ACO(AGAWA CONSULTING OFFICE 阿川保険事務所、の略)」という保険代理店事務所の社長だ。恵子と同い年の三十六歳。

 こちらも背が高く、細身だが捲りあげた長袖のシャツから覗く腕は、がっしりとしていてスポーツなどでしっかりと鍛え上げた体をしている。智子と並ぶとお似合いの美男美女といったタイプだ。

「譲二自ら作ったタルトが食べられる、ってのがいいよな。この集まりで一番の楽しみだよ」

 涼介も甘いものには目がないようだ。ぽっちゃりとした体形がそれを物語っているのか、恵子同様子供のように目を輝かせてとり分けられたタルトを見つめている。

 譲二の店の定休日に合わせて、ビルの入居者である涼介、恵子、智子、英吾と譲二合わせて五人が一堂に集まる機会がある。今日はその集まりで、その時はいつも譲二が作った季節のスイーツを食べる、という慣例ができていた。

 この店も含めた四店舗のオーナーで経営者としても忙しい身であるからなかなか厨房に立つ機会は多くない。その譲二が作るスイーツだ。格別美味しいに決まっている。この料理の腕が四つの店を成功させ、フランス料理界で名を広めた証明なのだ。

「この時期はブルーベリーが旬だし目にも良いから。うん、旨く出来てる」

 譲二も席について自分の分を一口頬張り、納得するタルトの出来に満足した。

「そうだ、譲二さん。契約のご紹介ありがとうございました。医者の検診も問題なかったので成約になりましたよ」

 英吾は先日、譲二の店で働くことになった雄一を紹介され、生命保険手続きが無事終わったことを報告した。生命保険は健康状態が悪いと加入する意思があっても加入できない場合があるため、保険契約の成立確認まで少し時間がかかるのだ。

「ああ、それはよかった。うちの従業員には福利厚生のこともあって全員加入することになっているからな」

 そう言うと、智子が笑った。

「ここに集まっているところはみんなそうじゃない。だから英吾さんにとってここにいる人は大切なお得意様でしょ」

「そうですとも。そうですとも。皆様ありがとうございます」

 わざとらしく、笑いながら彼は頭を下げた。

「これ、口の中で豊潤な香りが広がって、たまらないなあ。甘酸っぱくてホント、美味しいよ!」

 涼介が口いっぱいにタルトを頬張ってはしゃいでいる。ここにいる五人の中で一番年上の彼が最も若く、というか幼く見える。このとっちゃん坊やが、と渋い顔で恵子がツッコむ。

「あんた、タルト食べて喜んでないで、ちゃんと報告しなさいよ。何のためにみんなが集まっていると思ってんのよ!」

「まあまあ、落ち着けよ、恵子。しかし相変わらず涼介さんにはタメ口だよな」

 英吾が少したしなめるように言うと、

「慌てるなよ。今から報告するから」

 恵子の言った事など全く気にする素振りもなく、涼介はすでにぺろりとタルトを平らげ、コーヒーを一口飲みながらノートパソコンを開き、調査内容を話し始めた。

「まず恵子の患者、菅沼ひとみの方から話をすると」

 涼介は恵子を見て、次に英吾をちらっと見て話を続けた。

「ひとみが一千万円の詐欺にあったというのは嘘だ。そして恵子のクリニックの評判がいいからと言って病院を替わったというのも嘘だ。恵子のクリニックに近付いたひとみの目的は、英吾、お前だ」

「えっ? 俺?」

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