第19話 無茶振り

キリュウが運転席に座り、ブルースが助手席に座った。


車はツーシートでどこかスポーツカーのような内装をしていたが、

車には色々なボタンや装置があって助手席と運転席の間には小さなブラウン管のモニターのようなものが取り付けられていた。


そのモニターには街の地図が出されており、

赤い点で目的地を示しているようだった。

モニターがまた画面が変わって、さっき放送機を通じて喋っていた男性の咳払いと共にモニターに銀髪の大学生ぐらいの若いどこかオタクチックな男性が映し出された。


「キリュウ君。さっそくだけどモニターに映る場所にブルースを連れて行って欲しいいんだ。よろしくね。


色々この車には仕掛けを用意してるけど、その都度ここから遠隔で教えるから。

車の運転は大丈夫だよね?」


「え、ええ。はい...」


キリュウはそう答えると、エンジンが始動しているのを確認した後、無意識で車を走らせた。

地下通路のような一本道を車は走り抜けああと真夜中の森に飛び出してきて舗装された道路に出たことに気がついた。


横に乗っているブルースがこう言った。


「ロビンより運転はうまいみたいだな。ミレーヌは悲惨だったが、これはいいドライバーがうちに来てくれたようだ。流石だ」


ブルースはそう言って、キリュウの頭を撫でた。

キリュウは褒められた事は嬉しいが、それよりも運転することに集中していた。


車のスピードは予想以上に速く身体には急に加速したことでGを感じていた。

キリュウは驚いていたが、

何事でもないような雰囲気をブルースは出していた。


そしてブルースはこうキリュウに言った。


「目的地はパークアベニューの77番街にあるビルだ。このまま道なりに行ってくれ。


俺は横でロビンと話してるが、運転に集中していてくれくれ」


「わ、分かりました」


キリュウはそう答えると、運転に集中することにした。

外はすっかりと真夜中何か真っ暗でそのこともあって道も車一台も通ってなくすいすいと市街地まで抜けて行くことができた。


野暮なことだろうが、制限速度にことを若干は気にはしていたが....

雰囲気的にいうのも少し変な気がしたので気にせずキリュウは運転をした。


「さっきから信号機がいっぱいあるのにどうして引っかからないいんだろう...」


そう単純な疑問を呟くと、どこか誇らしげな声でロビンがこう言った。


「そりゃ、ブルースのコネクションを使えばどうにでもなるのさ」


それを聞いたブルースはこう付け足した。


「まー気にするな、キリュウ。これも俺の特殊能力みたいなやつだ」


そして、モニターを操作してキリュウにこう言った。


「次を右に曲がってくれ、曲がったところの路肩に停めてくれ。停めた後は降りて着いてきてくれ」


「あ、はい!曲がります!」


キリュウは咄嗟にハンドルを切り、揺れないように優しくではあるが急ブレーキをかけた。


あまり大きく揺れることなく車は減速して、ピタッと止まったのを見てブルースは驚いた顔をしてこう言った。



「キリュウは運転が上手いな。申し分ない、十分すぎるぐらいだな...これは、普段でも期待できそうだな」


ブルースはそういうとキリュウの頭を撫でてた。

褒められた上にマスク越しだが嬉しそうな顔をしているブルースを見てキリュウはふと嬉しという感情がうっすらと浮かんできたことに気がついた。


「あ、ありがとうございます...もっと頑張ります」


「向上心は大切だな。うん、では、行くとしよう...キリュウは着いてきて彼女を回収してほしい。邪魔者は俺が片付ける」


はいとキリュウが答える合間もなく、ブルースは扉を開けて車から降りた。

キリュウもそれに続いて車を降りて周りを確認した。


どうやら人気の少ない地区のようで閑散としていた、ただちょっと汚くゴミゴミしたような都会感を感じられる場所ではあるなと感じられた。


キリュウが車から降りると車は自動で鍵が閉まった男が聞こえた。

この世界に来て自分の世界と同じように自動で車の鍵が閉まることに驚いたが....


まだまだ、未知数なこの世界のことだし。細かいことまでは気にしないことにキリュウは決めることにした。


まだ、今目の前にいるブルースのこともよく分かっていないことだし。


ただ、

今はあの青髪の少女が危ないということで彼に協力をしたいと自分から思ってここにいることを思い出しキリュウは深呼吸をした。


「行くぞキリュウ!」


ブルースはそう言ってマントを翻して走り始め、キリュウもそれに続いて行った。


ブルースとキリュウはある建物の中に入っていった建物に中は廃墟のようで今は誰も使っていないような感じになっていたがある部屋に入り階段を降りた瞬間に一気に世界が変わったことにキリュウは驚いた。


機械仕掛けで、どこかあの転生してきて初めて見たあの研究所と同じような雰囲気だったからだ。


「ここは、旧連合王国の極秘基地で今は俺たちが借りてるんだが....


どうやら、お客様はお見えのようだったな」


ブルースはそう言って足を止めると、

目の前にあの研究所で見たサイボーグ男と白衣を羽織り中には黒い軍服に身を包む小柄な若い男性がにっこりと笑みを浮かべて立ち塞がっていた。


「はぁ...やっぱり帝国の犬どもの仕業だったのかーーー

アルフレッド・フォン・シュナイダー中佐」


白衣の男性はそれを聞いて首を振ってこう言った。


「違う違う違う違う違う違う違う違ぁーーーう。

私をあんな脳筋の軍人どもとも同じ扱いをするな!!


制服こそ帝国親衛隊のを着てるが!

私は、アルフレッド・フォン・シュナイダー博士だ。ハ・カ・セだ!!


思った以上に早くにきやがって...ダークナイトと...」


シュナイダー博士は目を大きく見開いてキリュウを指差してきたのでキリュウは驚き自分のことを指差してこう言った。


「え、俺!?」


「あ!お前...ロレーヌ川で発見された少年だ!えーと被験番号は...」


「被験体ロレーヌ21番だろ」


ブルースがそう得意気に答えると、半狂乱のようになってシュナイダー博士言葉にならない声をあげて叫び出した。


それと同時にポンとキリュウのケツを叩いてこう小声で言った。


「あいつはこれで混乱するんだ、思考を邪魔されると考え出すから隙が生まれる...


俺が引きつけている間に廊下の奥にある部屋に入って彼女を回収しろ」


「え、でもどうやってって?」


「特技があるだろう、キリュウにしかない、あの高速移動のようなあれを...

ショックブーメランを使うからその隙を狙ってあいつを抜いていけ」


「え、ででも...どうやったらいいか」


キリュウはブルースがあの能力を自由自在にでも使えるように勘違いしているようだった。

自分自身にもまだ得体の知れない能力で発動させる方法も分かっていないのにそんな無茶振り....


「彼女を救うんだろ?キリュウ。やってみるんだ」


ブルースのその言葉を聞いてふと彼女の声が聞こえてきたのだった。


『助けて....助けて....』


キリュウはそれを聞いて、迷いが少しばかり冷めた。その表情を見たブルースはこう言った。


「失敗しても、俺がどうにかしてやる。

何度か成功させたんだろ。できないと思ってたらいつまで経ってもできはしない。


だから、とにかくやってみるんだ。キリュウ!!」


ブルースはそういうとベルトから手裏剣のようなもの取り出してサイボーグとシュナイダー博士に向かって投げつけた。


「な、なんだ、なんだ!これ!」


それをキャッチしたシュナイダー博士は驚いた表情を見てブルースが投げた手裏剣を見た。


「よく見たら魔道具だな〜よくできてるな...」


感心した様子を見せるシュナイダー博士にブルースはこう言った。


「俺からのニューアムステルのお土産だ!受け取りな!」


ブルースがそういうと手裏剣は青白い光に包まれて電撃が発生してシュナイダー博士とサイボーグ男を痺れさせた。


キリュウはその隙をついて走り出して二人を抜こうとした瞬間だった。

痺れながらも、サイボーグ男がキリュウに気がつき拳を振り下ろしてきた。


「敵...排除...セヨ!!!」


キリュウの目の前に拳が飛んでくるのが目に入ったーーー


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