第12話 ニューアムステルって?

シャワーを浴び終えて身なりを整えたキリュウは写真を撮り終えた。


どこか緊張した面持ちの顔になっていたが、ミレーヌの用意していカメラから出てきた写真にはどこかやる気に満ちた自分の顔が写っていた。


カメラがどういう仕組みになっているかは分からなかったが、どうやらインスタトカメラのようで撮った絵をすぐに出せるようになっているようだった。


ミレーヌがいうには最新のこういう身分証やらのように撮るためのカメラだそうだった。


あっという間に帝国籍の

『キリュウ・タチバナ』という人物が出来上がっていた。

身分証明書はパスポートみたいなものでスタンプを押す白紙のページや写真が貼られて名前と住所が書かれているページがあると言う感じだった。


キリュウはその身分証明書を持って船のデッキで朝日を眺めながらぼおっと水平線の先を眺めていた。


するとそこにメイド服ではなく、ブーツを履いて黒いカーゴパンツにタンクトップ姿のアンが現れた。

気がつかなかったが、彼女は引き締まった筋肉質の体型だったことにある意味で驚いた。


彼女はキリュウを見るなり、ニコッと笑みを浮かべて逆立ちを始めてそのまま腕立て伏せを始めた。


「身体を鍛えてるのは軍隊にいた頃からの日課なんですよ」


アンのその言葉を聞いてある意味であの強さや身体能力が納得できた。


「それにしても元兵士のメイドってキャラが...濃ゆい」


キリュウはそう思ったことを口にした。するとアンはキリュウが手に持っていた身分証明書をちらっと見てこう言った。


「帝国国籍が取れたんですね。よかったじゃないですか」


「え、まー」


ミレーヌを疑う気はなかったのだが、ついさっき出来上がった身分証明書が別の人から見れば本物であるって証拠だと感じどこかほっとできた。


ふと、

ミレーヌのことで色々と不思議なことや気になることがあったので、アンに聞いてみようと思いキリュウは話を振ってみた。


「アンさんって、ミレーヌさんとは昔からの知り合いなんですよね?

ミレーヌさんって何者なんですか?」


黙々と腕立て伏せを始めていたアンにそれを聞くと、アンはピタッと動作を止めて逆立ちをやめてこう言った。


「彼女は本当に謎。

初めて会った時は帝国軍の将校だったはずなんだけど....

次に会った時には女優だったり、ブルース様の秘書だったり本当謎なのよ」


「本当に謎....やっぱり掴めない」


キリュウがそういうと、アンは逆立ちをやめてこう言った。


「ミレーヌは仕事人としては尊敬できるけどね。私は帝国軍人にはいいイメージはないから、少しは警戒してるのよ。

それにーーー」


アンは何かをキリュウに言いかけたが首を振ってこう言った。


「ごめんなさい。

君には関係ないことだから気にしないで、ニューアムステルでの新生活楽しんでよ。


私やミレーヌにフィオやフィオの旦那のアキラだっけ...

支えになり人はいるからきっと助けにはなるはず」


アンはそう言って、ポンとキリュウの背中を叩いた。かっこよく去るのかなと思ったら...

顔を真っ赤にしてこう言ったーーー


「や、やばい...殿方の触れるなんてっ...」


そういうなりどこか小走りで船内に戻っていった。


「アンさんも読めないな...」


キリュウはそう呟くと、入れ替わる形でフィオが頭を抱えて外に出てきた。

見るからに調子悪そうでどんよりとした表情をしていた。


キリュウがいるのに気がつくとゆっくりと寄ってきて第一声に昨日の件であろうか謝ってきた。


「ごめんね....昨日久々に酔っ払っちゃって。

家じゃこんなことできなくて」


「いえいえ、それよりも大丈夫なんですか...すごく気分悪そうだけど」


謝られたことよりも普段のハイテイションではないフィオを見て心配になりキリュウはそう聞いた。


「ただに二日酔いよ。それよりも、それ身分証明書作ったんだ。とりあえずこれで生活は困らないでしょうね」


「はい。ミレーヌさんが作ってくれまして...やっぱり身分証がないと生活に支障が出るんですか?」


ミレーヌはそれを聞いて、深呼吸をしからこう答えた。


「普通の仕事するのにはいるのよ、特に雇われる仕事なんかわね。

ダンナが警察官してるからよく聞くけど、家に住んだり、仕事するには絶対いるみたいよ。


ニューアムステルは世界各地から色んな人がチャンスを求めてやってくるから、変なのは入れたくないってのがあるんだって」


フィオはそういうとまた大きく深呼吸をしてこう言った。


「私も楽しみなのよ。ポートタウンで自分のダイナーを開けるの楽しみだったんだけど、政府の政策で取り壊されちゃったから。

今度はニューアムステルでダイナーをやりたいなって思ってるの


きっと子供達にもいい生活させてあげられるって思うとワクワクしてるの」


どこか未来を見つめるように海を眺めているフィオを見てキリュウはニューアムステルで始まる新しい生活にワクワクしていた。


一体何があるかはわからなかったが、期待感というのがあった。


「アキラがこの異世界に来て夢を叶えられたって喜んでるの見てるとね。私もねなんかやってみようって思ってるのもあるのよ....」


フィオはそう言ってから大きくため息をついてまた大きく深呼吸をした。


「フィオの話を聞いてると、アキラさんにあってみたいと思います」


前の世界で塞ぎ込んで落ち込んでたのに明るい彼女を見ているのとその彼女に影響を受けたという同郷の人にかなり興味を感じるようになったからこそ出た言葉だった。


フィオはニコッとしてこう言った。


「色々と教えてもらうといいわよ」


「はい」


「じゃあ、私は戻るから。

あ、そうだミレーヌから聞いたんだけど、そろそろ着くらしいから色々準備しておいてねって言ってたわ」


フィオはそういうとキリュウは頷いて答えた。先にフィオが船内に戻っていくのを確認したのち、水平線の先に見えてきた陸地と聳え立つ摩天楼が目に入ってきた。


どんな世界なのはまだわからないし、あの世界が急に静かになってゆっくりになる現象も...

あの青髪の少女のこともわからない。


きっとどこかで知るべき時や出会う時があると思えば...

キリュウ自身がワクワクしていることを強く感じられた。


そんなことを思い、キリュウは大きく深呼吸をした。

すっと鼻の奥に磯の香りと共にどこか新しい世界での新生活への期待感が体を入り込んできた。


船室に戻ると、

ミレーヌとフィオとアンが廊下の前で待っていてキリュウに気がついたミレーヌはウィンクをしてこう言った。


「朝食の時間よ。今日はまた忙しいからきちんと食べておかないといけないわよ」


ミレーヌがそういうと、

フィオがニコニコした顔をしてこう言った。


「そうよ。私の家族の紹介しなきゃいけないから大忙しなのよ」


どこかその表情からはあの二日酔いでダウンしていた時のものとは大きく異なっていた。

次にアンが口を開いてこう言った。


「キリュウ君の住まいは....ブルース様のマンションの一室を用意しています」


それを聞いたミレーヌはニコッと笑こう言った。


「よかったじゃない、キリュウ君。私も一緒だから安心してね」


どうやら、ブライアント家の専属秘書になったミレーヌも同じマンションに住むらしくどこかその点に関しては知ってる人が近くにいることは安心できた。


しかし、初対面の時に監視してると言われていたのでどこか保護も兼ねているにかなと感じていた。


一体何を彼女は見ているのかそれはあまり想像が膨らまなかった。

もしかするとあの急に静かになって周りが遅くなるのが能力で、彼女はそれを監視しているにかなとも感じたが、


まだ、謎だらけ異世界。

一つ一つ探って、せっかくだから楽しく行こうとキリュウは楽観的に思うことにした。


そう....

あの塞ぎ込んでた時よりは、すごく今から起こることに前向きにいれる自分がいたからだーーー


「早く、会えたらな...一体どんな人なんだろう」


そうあの青髪の少女のことをふと思い出しそう呟いた。

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