第5話 空腹の代償

私が子供の頃。

同級生と駄菓子屋に行った。

菓子を選ぶ私の横で同級生は、

箱ごとを抱え走って逃げてしまった。


唖然とした私に

駄菓子屋のおばちゃんが言った。


「空腹が犯罪を生む

だから腹減らしたらダメなんよ。」


当時の私にはよく分からなかった。


だけど、数年して

親から育児放棄を受けた時その言葉の意味を知った。


テーブルに3000円置いて

親は2週間帰らなかった。


私は好きなお菓子を買って

友達を家に招きどんちゃん騒ぎをした。


3日でお金は尽きて

友達は、お母さんがご飯作って待ってるからと

家にも来なくなった。


寂しさと空腹を満たすために私は深夜まで街を徘徊した。


高校生のふりをして

声を掛けてきた人とファミレスやハンバーガー屋にいき、その日を生き延びた。


悪い事をするのに最初は抵抗があったが

やがて「慣れて」しまった。


大人ぶっても壊れていく

ただの子供だった。


あの時

子ども食堂があれば

居場所があればと今もたまに考える。



こんな思いをさせないために

子ども食堂を始めたのかもしれない。


誰でも笑える

暖かいご飯を食べられる場所。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る