第3話 破れた安全靴
みんなが帰ったあと
皿の片付けを毎回手伝ってくれる
アイコ。
皿に残った綺麗なプチトマトを集めて
タッパーに入れる。
ウィンナーが残った時は、ヤッターと叫ぶ。
感染症が流行ってるこのご時世。
複雑な気持ち。
「お父さんのお弁当にしたいの」
と、彼女は残飯からおかずをかき集める。
私は、そっと残った食材で野菜炒めを作りアイコに渡した。
アイコはありがとうと満面の笑みで帰っていく。
アイコのお母さんは、去年亡くなった。
交通事故だった。
お父さんは、働きながらアイコの育児をしている。
まだ30歳の若いお父さんだ。
ある日、アイコの様子がおかしかった。
みんなでデザートのプリンを食べている時
アイコは、嘔吐した。
38℃あった。
私はお父さんの携帯へ連絡した。
すぐ迎えに行きます!
と、2時間後泥だらけのお父さんが
やってきた。
昔会ったときより
随分痩せていた。
日雇いの現場仕事をしているという。
穴の空いたTシャツを重ね着して
安全靴にも穴があいていた。
「良かったら、ご飯たべていきませんか。」
お父さんは、目を合わさず会釈して小さくいただきます。と言った。
不思議なもので、アイコの熱は下がっていた。
お父さんの膝枕で眠っている。
「日雇いもコロナのあれで、仕事がほとんどないんです。日当もなくて。子ども食堂ほんと助かってます」
お父さんが、おにぎりを片手に頭を下げた。
「情けないです、こんなおにぎり一つアイコに毎日食わしてやる保証もないんです。アパートのガスは止まってて水をカセットコンロで温めてタオル濡らして体拭くんですよ。」
お父さんは、穴があいたシャツで顔をクシャクシャと拭いた。
「お味噌汁、あったかいなぁ。。」
お父さんは凄くゆっくり味噌汁を飲んだ。味わって味わって味噌汁を飲んだ。
膝枕されたアイコをチラッと見ると
泣いていた。
お父さんにおんぶされて
帰っていくアイコ。
2人で歌いながら帰っていく姿に
貧しい中で2人で支えあう父子をみた。
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