ヒロインの青春レベルがカンストしてた件

咲乃

序章 告白

この現代社会は、いつだって理不尽で不平等だ。


平等、平等だと表向きでは言っているが実際そんな事は決してない。

ソースは僕だ。



そんな現実と向き合ってはダメだ。

社会を信じるな、全て敵だ。

自分一人が変わったところで社会は変わらない。


なら社会に適応しろ?


それもまた無駄だ。

既に見放されている僕のような場合、適応する事自体が不可能に近い。


一瞬適応した所で、また直ぐに弾き出されるだろう。



さて…………。


 そんな事を言っている僕自身だが、現在進行形で人生最大の窮地に立たされている訳で。



「式神君………、返事はどうなの?」


「いや、いきなり見知らぬ人から告白されても困るんだけど………」


何かの罰ゲームだろう。


「クラスメイトを見知らぬ人………とは、流石ね」


「ど、どうも………」


「褒めてない」


誰だこの人………。

こんな人、割と本気で見覚えないぞ。


「で?どうなの?私と付き合ってくれるの?」


ガヤガヤと野次馬が増えてくる。

この様子から考えるに、多分、いや絶対目の前のコイツは学内でも有名なんだと推測出来る。



………‥実に面倒だな。


「その……、名前から教えてくれるとありがたい」



「……………喧嘩売ってるの?」



「真面目です」



ため息をつくと、呆れた様子で。



「私は、魅由垣 美沙。貴方のクラスメイトにして、現在貴方に交際を申し込んでいる張本人よ」



魅由垣………。


どこかで聞いた事がある様な。

まぁ、これだけの有名人なら流石の僕でも名前くらいはどこかで聞いたのかもな。


まぁ、しかしどうして………。


思いながら、周りを見渡す。

どうやらこのクラスの奴ら以外にも、むしろ他学年まで紛れこんでいる様だ。


どんだけ人気者なんだよコイツ………。



「魅由垣、さん。僕は、貴方の事をよく知らないですし、関係が一切無い人に告白されても正直困ります。なので、すいま…………」



「ねぇ、貴方…………。今の人生、楽しい?」



唐突に発せられたその一言が、何故か僕の胸にチクりと刺さった。

多分、それは思う所があるからだと思う。



「貴方に、関係ないでしょ………」



そう、精一杯の足掻きをした。



「否定は、しないのね」



「………………」



返す言葉が、言いたい事が、喉から出てこなかった。



「私なら、貴方を楽しませてあげられる。幸せにしてあげる。だから、騙されたと思って私と付き合ってみない?」



「…………どうして、僕なんかに目を付けたんだ。もっと貴方に見合った男は探せばいるだろうに」


僕は吐き捨てる様に言った。



「私ってね………、男を見る目には自信があるのよ?」


嘘だろ。


「僕以上に腐ってるぞ、その眼球」



魅由垣は、苦笑いを返すと僕に手を差し伸ばしてきた。



「ね?私と貴方、案外良い相性だと思うの」



「…………、分かった。乗ろう。付き合うよ」



なんて適当で、いい加減な付き合い方なのだろうか。




でも、僕はどこかに期待をしていた。



コイツ……、魅由垣なら僕のこのクソったれな人生を少しは変えてくれるのではないかと。面白くしてくれるのでは、と。


















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ヒロインの青春レベルがカンストしてた件 咲乃 @2004masaki

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