第33話 封印のダンジョン

「なぁ、レイリック。このテイムはいつまで続けるんだ?」


 なし崩し的に二人でダンジョン攻略をすすめることになった道すがら、レイリックに尋ねる。

 いまはこれのおかげで攻略が早くなってるから解く気はないが、いつまでもエルフの王をテイムしているというのもどうかと思う。


「ふむ……。別に不都合もあるまいし、むしろ私はこのままの方が都合がいいが」

「このままだと俺はおそらくエルフの王を洗脳した稀代の悪魔として歴史に名を刻むぞ」

「たしかにそうか。だがこの力を手放すのは惜しい……」


 逆に悪魔に魅入られた人間のようなことを言い出すレイリック。

 そんな話をしながらもダンジョンと化していた世界樹の地下へどんどん進んでいく。


「重ね重ねすごい力だな、ユキアの【テイム】は」

「誰がやっても同じだと思うけど」

「馬鹿を言うな。ハイエルフの私を【テイム】できる術者がそうそういてたまるか」


 そういう考えもあるか……。俺が身近で知っているのはミリア様とシャナル、そして母さん……この三人では確かに厳しかったかもしれない。父さんならどうだろうか? わからないな。うちの家系はみんな歴代の使い魔たちを引き継ぐのに忙しかっただろうし。


「にしてもさくさく進むな」


 今の俺たちにはもう、ダンジョンに出てくる小物は足を止める必要もない相手になっていた。


「それこそ【テイム】の恩恵だ。私が以前ここに来たときは精鋭とパーティーを組んでおきながら大苦戦した」

「全くそんな気配を感じないな……」


 俺自身もまったく苦戦することがないだけになおさらだ。

 これがハイエルフ……幻の存在とまで言われた超越した力の持ち主をテイムした恩恵か……。

 そう考えるとこれから向かう霊亀が無事テイムできたらまた同じような力を得るのか? やりすぎな気がするな。


「ところで、あんな形で出て来て大丈夫だったのか?」


 明らかにあとあと面倒なことになる抜け出し方だったけど……。


「ではあのまま手続きを待つなり、時間の経過に対する意識の違うあの者らと共に動いたか?」


 レイリックは不敵に笑う。

 この顔を見るに、あのムルトという執事の苦労が窺えるというものだった。


「まあそこは助かったけど」

「気にするな。結果的に霊亀を従えて帰れば長老会も文句は言わん。霊亀を見て手に負えぬと判断して引き返したとて、私が多少咎められる程度でユキアには手出しさせぬと誓おう」

「いや、レイリックの発言権が下がると同盟国としては困るんだけどな」

「ならば、霊亀を従えれば良いだけだ」


 簡単そうに言って笑うレイリック。

 ちょうど今日はそこまでで休憩になった。

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